会談
「なんだ…これ」と言って、ペタンと座り込む。驚きの余り力が抜けてコーラが手から落ちる。
開け放れたドアの中は眩いばかりの光が膜を作り、神々しく輝く。
ショートしていた思考が動き始め、これについて考える。考えてもどうして良いかわからないので大丈夫か?と思いながらも触れてみる。
触ると、そこから波紋が広がる。触れたところは暖かく、何故か優しい感じがした。
少しずつ手を入れて行くと、突然引っ張られた。
「へ?うおぉぉー」
凄まじい力に引っ張られて、堺斗は抵抗する間もなく光の中へと引きずり込まれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
気が付くと、真っ白い場所にいて堺斗は首を傾げる。そして、実況整理の為にぶつぶつと独り言を言い始める。
「えーっと、まず俺の部屋のドアを開けたら光の膜が張ってあって。それに手を突っ込んだら、気付いたらここにいたと」
「なんじゃそりゃ」とぼやくが何も変わらない。辺りを見間渡すと遠近感が狂う程の白さが視界を埋め尽くすばかりで嫌気が差して来る。
「帰れるよな、ここから?」
「必要な事を話したら帰すとも」
不思議な声が聞こえて来た。声は、何処からか聞こえて来たと言うよりは頭の中に響く感じだ。それのせいで何処かに拉致られたと言う考えは堺斗の頭からは何処へ消え去った。
さらに困惑と恐怖は増したが、それを欠片も感じさせない声音で堺斗は質問した。
「おい!お前は何者で、ここは何処で、何の為にここに連れて来た」
声の主は、穏和なそれでいて不思議な声音で当然のように返してきた。
「此処はお主に会うために作った世界じゃよ」
「ハハッ。何言ってんだよ。このあとは、私は『神』だとか抜かすんじゃあねーだろうな」
「ご名答。そのとうりじゃよ。私は『神』じゃ」
堺斗は嘘だと思う反面、それが本当にそんな不思議なものでしか説明できないと理解していた。だから、ただただ乾いた笑いしか出てこなかった。
そこへ神が唐突に質問してきた。
「お主は異世界に行ってみたくはないかね」
それを聞いて堺斗は目の色を変える。大きく見開かれた目は好奇心で輝いてすらいた。
「最初から言ってくれよ神様。そんな面白そうな話があるなら素直に来たのに」
「それを聞いて安心した。では授けよう」
神がそう言うとどこからか光の珠が一つ、悠々と降ってきた。光の珠は堺斗の胸の高さで一旦止まると、そこから真っ直ぐに堺斗の胸の中に入って行った。
暖かい何かが入って来ると、波紋が広がる様に堺斗の体の中に力が溢れていく。
「これで異世界に渡れるぞ。せいぜい楽しませてくれよ」
「ああ。高みの見物でもしていてくれ」
そう言うと堺斗はニヤリと笑った。
早めに投稿出来ました。