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サンタさん日本上陸

 この物語に登場するサンタさんは私の想像による産物です。


 実在のサンタさんとは違うので、心清らかな読者のみなさんはそれぞれのサンタさんを信じてください。


 単純にクリスマスだから書きたくなって書いただけの勢い小説です。

 メリークリスマース!


 鈴の音をうるさく騒がしく響かせながら夜の闇を無駄に派手に光りながら走り回るソリ。


 それを引っ張るのは筋骨隆々の二頭のトナカイ。


 筋肉がたまらなく隆起しており、その躍動感は筋肉フェチの心を揺れ動かすものであった。


 名をガドノンとガドルフと言う。



「さぁ、子ども達のためにも全力を出しな!」



「「了解でさぁ!」」



 その二頭に鞭を振るうのは扇情的なサンタ装束に身を包んだ年若い美少女。


 名をヨヨと言う。



「本当ならお爺ちゃんが騎手なんだけど、あたしなんかで悪いね二頭とも」



「いえいえ、我々は先代よりもお嬢の方が嬉しい位でさぁ」



「お嬢の鞭にはどうにも快感が伴うってぇんですかね?

 それが仕事へのやりがいに繋がってんでさぁ」



「そうかい、じゃあ遠慮はいらないね?

 ならばもっと気張りなあんた達!

 たった一人のサンタが世界中の子ども達にプレゼントを配るだなんて普通は不可能なんだからね!」



 激励としてヨヨは鞭を振るう手により一層の力を入れる。


 ぶたれるガドノンとガドルフはさらに燃え上がる。


 そう、鞭で叩く快感と叩かれる快感から賢明なる読者諸氏はすでに承知しているだろうが、彼女たちは伝説の『サンタ』と『トナカイ』なのだ。


 寒い冬に空高くから音速を超えて世界中を飛び回れるタフネスは種族的優位性から発揮されるのだから。



 ◆ ◆ ◆



 ここらでサンタとトナカイという種族について説明をしておこう。


 サンタとは、日本で言うところの「鬼」がもっともイメージとしては近いのではないだろうか。


 もちろん、サンタ達は人を食ったり殺したりはしないので悪ではないのだが、理不尽なまでに強いのは事実である為、口で否定したところで受け入れてはもらえない。


 なので暴力で「サンタは悪」と言う輩を黙らせるしか出来ない。


 それがさらに「サンタは悪」と信じる輩を増長させる結果となっているのだ。


 西洋では似た名前で、サタンという悪魔が地獄を支配していたりするが、そんなものサンタの力強さを少しでも拝借出来れば、という軟弱な気持ちでつけられた雑魚でしかない。


 悪魔すら憧れた、鬼にして魔王にして神のサンタは、その圧倒的なまでの強さによって孤立し、さらに繁殖の必要すらなかったために段々と数を減らしていた。


 そこであるサンタが思い立ったのだ。


「もっと親しまれるための積極的活動が必要である」と!


 サンタは動いた。ある者は立場を偽って有名飲料メーカーに就職し、サンタをマスコットにして冬を一緒に盛り上げないかと言った。


 またある者は絵本作家やゲームクリエーターなどに就き、サンタが良い存在であると本やゲームなどの娯楽の分野で民衆に広めていった。


 そうした草の根活動のおかげで、今日の「サンタは良い子にプレゼントを配る良い爺さん」というイメージが定着した。


 ……のだが、



「ったく、あのジジイめ! 孫のあたしに仕事教える前に、死にやがって!」



 人気は出たものの、サンタは繁殖力が低いため、その数はヨヨと、先代サンタだった彼女の祖父だけだった。


 その祖父にしても、クリスマス前に早めの御雑煮でモチをのどに詰まらせてポックリ天に召されてしまったため、見習ですらなかった新米サンタのヨヨがトナカイに鞭を打っているのだ。



「うっ、流石はお嬢だ。我らのツボを熟知している」



「先代は力任せに叩くだけで、ちっとも気持ちよくしてくれなかったからな」



 ヨヨの的確な鞭さばきに喜ぶトナカイたち。



「無駄口たたく余裕があるんならもう少しスピードを上げな。

 目的地まで、まだ距離があるんだからね」



「ところでお嬢。我々は何処に向かっているんですか?」



「そういや聞いてなかったっすね。

 あっしらも年々ガタが来てるんで、この筋肉は持久力はないっすよ?」



 近接戦闘ではサンタと同じく無類の強さを発揮するが、トナカイたちの筋肉は元々持久力には乏しいのだ。


 この辺りが、全てにおいて最強と言われるサンタとトナカイの違いである。


 サンタの先祖は、かつて阿修羅と帝釈天の戦いをワンパンで制した猛者だったりもするが、

 トナカイの先祖は、ソロモン72柱の悪魔を一頭で半分しか倒せない程度なのだから。


 まぁ、その時に残りの悪魔からサンタが助けだしたことがキッカケで、両種族の間に友情が生まれたのだが。



「そいじゃ、ここらであたしの目的を話しておこうか。

 耳の穴かっぽじってよく聞きな!」



 サンタのヨヨは語る。


 サンタとしての身体能力はともかく、「サンタクロース」としての知識や技術を何一つ教えてもらう前に先代を失くしたヨヨにはプレゼント配達の知識なんてありゃしない。


 そこでヨヨは本職の郵便屋さんを頼ることにしたのだ。



「いま日本の郵便屋では、自爆営業と呼ばれる悪逆非道な行為を強いている。

 そんな馬鹿なことをする奴にはお仕置きが必要だ。

 それでこそサンタ! 勧善懲悪! 必殺仕事人! インガオホー!」



「なるほど、お嬢はその郵便屋の上層部に殴り込みを掛けるんですね?」



「暴れるっすか? あっしらの筋肉は見かけ倒しじゃありやせんぜ?」



 ここでヨヨは我が意を得たりとニヤリと笑う。


 おぉ、まさに悪魔すら恐れをなして裸足で逃げ惑う笑みだ。


 ヨヨの内面を察するは永遠のパートナーとなるトナカイたち。


 トナカイたちは主のために速度を上げ、あっという間に日本の郵便屋を乗っ取ることに成功した。


 これにてハガキなどの配達は「サンタ屋」というヨヨをトップにした新組織が行うこととなり、日本国民は感涙にむせび泣くこととなった。



「日本の郵便屋はネンガ・ハガキなどと、古臭い廃れゆくものに固執せねばやっていけないんだろうが、あたしは違う!

 今の時代、携帯からのメールで10万件ポンっと出せる時代だ。

 ならば携帯会社と提携して稼げばいいではないか!」



 時代は移り変わるもの。古い人間は変わることを拒むが、古くとも良い物ならば必ず残る。


 ならば新サンタのヨヨのように、これまでなかった新しいアイデアがこれからの世界を動かしていくのではないだろうか?



「よし、手始めにあたしは総理大臣とやらに立候補してみるか。

 お前たち、バックアップを頼んだよ!」



「いや、お嬢ってそんな年じゃなくね? 若すぎるけど立候補とか出来るっけ?」



「おいおいガドノン。

 お嬢が総理になりたいって言ってるんだから、我らはその手伝いをするもんだろ?

 お嬢が手始めに立候補するなら、我らは手始めに日本の選挙制度なんかを変えていこうや♪」



 そうしてサンタ魂に火を付けた新サンタのヨヨは、誰からも愛される(愛さない奴は殺す)総理大臣として世界中でなんやかんやをやったのでした。


 めでたし、めでたし♪

 いやぁ~、テレビで観ましたけど郵便屋さんは大変そうですね。


 一人8000枚も年賀はがきを売れとか、不可能でしょうに。


 今の時代は携帯電話や浅い人間関係から、年賀はがきをわざわざ買う人も少ないでしょうし。


 読者の皆さん、良いクリスマスを♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] 取り敢えず世の中の純真無垢な子供達に謝れ(笑) [気になる点] ×ヨネ→○ヨヨ 名前がお婆さんに? [一言] ミニスカなサンタな店員さんが居るお店に同僚と行って散財してきました。 男性…
2012/12/30 04:52 退会済み
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