魔王城のクソ係 〜R18要素抜き AI仮組み
まだ足りない
魔王城の共用便所は、いつも湿っている。
掃除係の男は、膝をつき、黙々と床を擦っていた。
名はない。呼ばれることもない。
糞尿の匂いの中で生きるだけの存在だった。
その日、汚物の中に金属の光があった。
指輪。
見覚えがある。
魔王が常に身につけている、知恵の指輪。
なぜここにある。
男は笑った。
狂ったように笑いながら、
糞のついたそれを洗いもせずにはめた。
――流れ込む。
呪文式。魔力回路。城郭構造。
地脈の配置図。魔物進化系統。
世界が立体で見えた。
「ああ……」
笑いが止まらない。
同時に理解する。
これは力ではない。設計図だ。
男は便所を出た。
その日から、彼はダンジョンを作り始めた。
⸻
敵はすぐに来た。
魔王の追手。討伐隊。密偵。
彼は迎え撃つ。
ときに自ら外へ出て、殺しに行く。
感情は激しく燃える。
だが盤面は常に冷えている。
怒鳴り、笑い、処刑を命じる。
すべて計算の上。
恐怖は広がり、城は拡張する。
⸻
夜。
寝室。
指輪は机の上に置かれている。
静かだ。
酒を注ぐ。
女にも杯を渡す。
暴君の顔はない。
ただ呼吸を整える男がいる。
触れるのは欲望ではない。
明日また暴れるための休息。
彼は理解している。
指輪を使うたび、
時間が削れていることを。
残りが減っていく。
それでも止めない。
⸻
敵は尽きない。
支配は広がる。
血は増える。
星を見上げる。
「あの向こうにも、いるのか」
知恵は示す。
世界は一つではない。
だが寿命は有限。
だから彼は求める。
不死を。
方法はまだない。
答えもない。
ただ、足りない。
城も。
恐怖も。
時間も。
すべてが足りない。
彼は今日も殺しに行く。
帰れば酒を飲む。
指輪は光る。
そして呟く。
まだ足りない。
知恵の指輪か、狂気の指輪か。どちらでしょうか?
クソ係に名前を作るならフシです




