第8話 勇者の初戦果
夜明け前、城の大広間に怒号が響いた。
伝令が膝をつき、息を荒げて報告している。
「南方の砦……陥落! 勇者を名乗る者が、人間の軍を率いて突撃し……魔族の守備隊は壊滅!」
広間にいた兵たちがどよめいた。
「また砦が……」「勇者の噂は本当だったか」
重苦しい空気が充満し、誰もが不安を隠せない。
アズは玉座に座り、静かに問いかけた。
「詳細を報せよ」
「はっ……勇者は黄金の光を纏い、ただ一振りで城門を粉砕したと。人間兵は士気を高め、魔族は恐怖で退いたとのこと……」
伝令の声は震えていた。
俺の背筋に冷たいものが走る。
光を纏う剣。
神の加護を受けた存在。
――それはただの勇者ではない。
(やはり……あいつは“俺と同じ”なのか)
胸の奥で、言葉にならないざわめきが広がっていく。
「勇者がただの虚名でないことは分かった」
アズが立ち上がる。紫の瞳が鋭く光り、広間を見渡した。
「ならば我らも備えるだけだ。恐怖するな。勇者もまた一人の敵にすぎぬ」
強い声が響くが、兵たちの表情は晴れない。
“神に選ばれし者”という存在が、心に深い影を落としているのだ。
夜。
訓練場で一人剣を振るう俺の頭から、勇者の姿が離れなかった。
光の剣。
圧倒的な力。
そして……転生者としての直感。
「会うことになる」
呟いた声が闇に吸い込まれる。
「必ず、あいつと……」
剣を握る手に力がこもる。
恐怖でも羨望でもない。
ただ、避けられぬ運命の匂いを感じていた。




