表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

エピローグ「晴雅、平穏という名の修羅場」

渋谷を襲った“破軍星事件”から三週間。

誰もがあの異変を“都市伝説”と片づける中、霧島晴雅の日常は、むしろ平穏から遠のいていた。


「はるまさ、今日こそ、勝負です!」


昼休み、剣ヶ峰 桜が弁当を両手で抱えながら、晴雅の机に一直線。


「“主君”と一緒にご飯を食べるのは忠義! そして恋の戦いでもあると拙者、心得ておりますゆえ!」


「いや、もう普通に付き合えばいいじゃん、お前……」


「つ、付き合う!? そ、それはあまりに……しゅ、主従の一線を越えてしまう……!」


顔を真っ赤にして硬直する桜。

だが、そこに割り込むように現れる黒い影。


「ふーん。じゃあ私は“前世からの因縁”枠ってことで、優先権あるよね?」


九条 紗夜。現代でも制服をカスタムしたような黒のロングスカートでキメている。

毒舌気味だが、晴雅に対しては何かと構ってくる。


「こないだの戦いのとき、私の式を盾にしてたよね? あれ、命令でやったってことで責任とってもらうから」


「お、おい待て。勝手に因縁を恋愛交渉に使うな」


「ん~、じゃあ“好きになったほうが負け”でしょ? 私はまだ負けてないもん」


(……それもう、負けてる自覚あるやつのセリフだろ)


 


そんなふたりのやり取りを、ため息交じりに見つめるのが御門 薫子。


「はぁ……。これだから“戦国脳”は……」

制服の襟を正しつつ、晴雅の隣に着席。ごく自然に距離が近い。


「今日、空いてるでしょ? 一緒に帰るの。陰陽寮の報告もあるし、街を一緒に“視察”するのよ」


「“視察”って、デートの言い換えだよね?」


「……言わせないでよ。こっちが照れる」


(え、照れるんだこの人!?)


 


桜「し、主君とふたりきりは許しませぬっ!」

紗夜「このタイミングで告白とかしたら、爆ぜるからね」

薫子「……じゃあ、いっそ、全員で回る? 渋谷のカフェ街」


 


その日、晴雅は“異世界級の修羅場”に巻き込まれることになった。

だが、不思議と嫌じゃなかった。


誰かと未来を語り、何かを選んでいける。

戦いのない日々の中にも、まだ“戦い”はあって――

それはもう、命を削るものじゃなく、心を通わせるための“恋の術式”だった。


 


彼は小さく笑いながら、こう思った。


(……ま、これはこれで悪くないか)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ