第一話「転生陰陽師、ふたたび目覚める」
東京――高層ビルが林立するこの街で、人知れず“異変”は始まっていた。
ある者は「悪霊の仕業」と言い、またある者は「気のせいだ」と片づけたが、
それが本当の“災いの前触れ”であることを知る者は、まだ少なかった。
「……うわ、また電車遅延かよ」
高校二年生・**霧島 晴雅**は、改札前で立ち止まり、スマホを見ながらため息をついた。
電車が止まる、街灯が一斉に点滅する、犬が吠える。
最近、東京では奇妙な“共通現象”が頻発していた。
(……まさかな。こんな偶然が、偶然で済むわけが――)
脳裏をよぎる既視感。
そして、そのときだった。
「久しぶりね、安倍晴雅。いえ――“ご先祖様”って呼んだほうがいいかしら?」
後ろから声がした。
振り返ると、そこには制服姿の美少女が立っていた。長い黒髪、切れ長の瞳。背筋の伸びた凛とした姿。
「……誰だお前は」
「名乗るまでもないでしょ? 陰陽道の血筋なら、視えてるはずよ」
少女の背後に、ぼんやりと“式神”のような白い狐が浮かんでいた。
晴雅は、無意識に後ずさった。
「まさか、お前も……転生者か?」
「そうよ。“前世”であなたに討たれた者のひとり――九条 紗夜。
でも、今の私はただの高校二年生。……たぶん、ね」
そのとき、視界の端で空気が震えた。
ビルの影から、黒い影が這い出てくる。人型ではあるが、目は潰れ、腕は異様に長い。
「禍鬼……! ついに出たわね」
「――やっぱり、思った通りだ」
晴雅は息を吐き、制服のポケットから懐中時計のようなものを取り出す。
蓋を開けると、中に小さな陰陽図と五行の符が刻まれていた。
「封印術式・展開――」
「え、ちょっと、今ここで!? 周り人だらけなんだけど!」
だが、周囲の人々はすでに動きを止めていた。まるで時間が凍りついたように。
「結界内なら大丈夫。さて……」
「――式神召喚、《白蛇ノ尾》」
光が収束し、晴雅の背後に現れたのは、真っ白な長蛇の霊体。
その口から迸る光の槍が、闇の禍鬼を一瞬で貫く。
「……は、相変わらず容赦ないのね。前世のあなたと違って、ちょっと優しくなったかと思ったのに」
「勘違いするな。俺は誰にも容赦しない。敵にも……味方にも」
「ふぅん。そうやって全部背負うつもり? 昔と同じね、安倍晴雅さん」
「……呼ぶな、その名前は」
結界が解け、人々の動きが再開される。
まるで何もなかったかのように、現代は“正常”を装って回り続けていた。
だが、彼らには見えていた。
この世界が“異常”で満ちていること。
――そして、目覚め始めた転生者たちが、次々と動き出していることを。
「これから、もっと賑やかになるわよ。あの子も来るし……くノ一に、将軍の末裔も」
「やれやれ、転生者同窓会か……最悪だな」
晴雅は、空を見上げた。
その瞳には、過去の記憶と、現代に生きる決意の両方が宿っていた。