23.アラノーク襲撃①
門番とアロナおばさんが血の気もよだつ大きな声で入ってきた。
振り向き、イマリの顔を見たが、先ほどまでのイマリの顔ではなく、頼もしいが少し冷たいイマリ王の顔になっていた。
「まずは子供達を守るのが最優先。戦闘系の天使を向かわせ、前線を守りなさい。私も戦闘に参戦する。子供達の護衛にはシャボーネをつけます。全員を守るつもりの戦闘を心掛けるのは当たり前ですが、取捨選択も忘れずに。今言ったことを全ての門番に伝えなさい」
「御意。アロナさん。メガホンですぐさま全員に伝達を。私は戦線に出向きます」
「分かったわ。伝達ーーー!!!」
アロナおばさんのでかい声に耳を塞ぐ。俺は初めての緊急事態を体験し、体が小刻みに震えていた。
俺が生まれた頃に国ができたと聞いていた。
それが真実なら初めての緊急事態のはず。なぜ全員ここまで動けるのか。凄すぎる。
「トライ。あなたはシャボーネと一緒にいなさい。そして自分勝手な行動は慎むこと。全ての行動をシャボーネさんに従って」
イマリがすごい早口で言う。とてつもない威圧感。こんなイマリ見たことない。
「分かった。悪魔なんて全部倒しちゃって!イマリ!」
「もちろんよ!あんたも絶対死なないで!」
死ぬ?死ぬって年老いた天使がなる、次の生を受けるために転生することだろ?なぜそんなことが起きるのだろう。
ーーー
アラノーク国襲撃時刻少し前 フリート
トライ、アスナ、ラーミックたちが城に行ってからもう結構長い時間が過ぎた。いつまで話しているんだろう。僕も混ざりたいな。
「今日は1人なの?フリート。珍しいね」
話しかけてきたのはマリッソ。僕らの少ない同級生の1人だ。マリッソも補助系だから城への招待はなかったのだろう。
「マリッソ!トライたちは今城にいるんだ。戦闘系の天使は全員集合らしい。僕も行きたかったよ」
「ああ。なんかそう聞いたかも。ていうか戦闘系はハズレ能力だよな!可哀想に」
マリッソは謎の自論を披露しだした。
「え?なんで?かっこいいじゃん」
「あの能力は昔、悪魔に対抗するための能力らしいぜ。この国が出来てから危険なことなんて一度も起きていない。つまり持っていたってどうしようもない能力ってことさ」
だから何なんだろう。マリッソは昔から人を見下す癖がある。ラーミックにも同じこと言って蜘蛛にボコボコにされないことを願おう。
「暇なら一緒に散歩しようぜ!暇で暇でしょーがなかったんだ!」
「いいよ!」
ということで僕とマリッソで散歩をしていた。その時は突然起きた。
バリーーン!!!
突然、空からガラス片のようなものが沢山飛んできた。そのガラスはドーム状になっており、この国を囲んでいたらしい。普段は透明なのか、全然こんなものがあるなんて知らなかった。
「うわーーー!建物に避難しろ!」
大人の声が周囲にこだまする。
「マリッソ!急ごう!」
「わああああ!うん!」
僕らは近くの家に入ろうとしたが、マリッソがこけてしまった。
そして空から飛んでくるガラスを見てパニックになる。
「うわああああああ!!!!!」
まずい!僕はマリッソに抱きつき、シールドを使用した。初めて実践的なことで使った気がする。前までは一人しか入らなかったシールド内に今回はマリッソも入れることができた。
「フリート、お前こんな能力だったのか。助かったよ」
マリッソが情けない声で言ったが僕にはその声は届かなかった。
衝撃的な光景が僕の頭を占領したためだ。
街が完全に崩壊していた。そして、その街の破片の下敷きになって大人たちが血まみれになって倒れている。僕は血をこけた時しか見たことがなかった。こんな量の血が僕たちの体を流れていることを知り衝撃を覚えた。
「え?みんな倒れてる。大丈夫かな?すごい痛そう」
割とマリッソはこの現実をすぐに受け止めてケロッとしていた。マリッソが倒れてる大人に近づく。
「おい。フリート。この人動かないよ。どうしちゃったんだろ。死んだみたいになってる」
僕はこの時気づいた。
歳をとると、体がボロボロになり、次の体に入るために動かなくなる。それを死と呼ぶと僕たちは大人たちから聞いたことがある。
なので僕らは動かなくなった天使を見て、あまり悲しいと思ったことがなかった。
その理論でいくと今目の前に倒れている大人は体がボロボロになって死んだ‥
「違う。マリッソ。死んだみたいになってるんじゃない。死んでいるんだよ」
「は?な訳ないだろまだ年老いてないぜ?」
「きっと体が傷つきすぎると死ぬんだ。
今すぐここから逃げよう。またガラスが降ってくるかも」
その後のことを僕らは忘れることはできないであろう。
突然、化け物が現れ、口の中にその大人の天使を取り込んだ。
この化け物、一度トライと柵に登って外を見た時の化け物に酷似している。
マリッソは突然の出来事に腰を抜かした。
そして、悪魔はこっちを見て僕たちに迫った。
僕はパニックで視界が真っ白になった。




