18.寝坊魔は最弱
「……おい起きろよ。いつまで寝てんだよ」
いつ聞いても腹立つ声だ。こいつはいつでも兄貴ずらしてくる。
「トライ!起きろ!!アロナさんのとこに行くんだろ。あのババアに今日こそ秘密吐かせてやるんだろ!!」
「あ!そうだった!!」
俺は急いで起き上がった。
俺はトライ。トライ・パーダス。王家の名字を持つものだ。そして俺にさっきから腹立つ声で兄貴ずらしてくるクソガキはフリート。俺の少ない同級生の一人だ。
先日とうとう俺らにも能力が現れた。そのことで街は戦闘系だ、補助系だお祭り騒ぎ。
そして僕らは大人たちに秘密にされていることがあった。それは能力が現れるまでは教えないという約束であった。
その秘密をとうとうアロナおばさんが教えてくれると約束した日が来たのだ。
なんの変化もない退屈な世界。僕らはみんな退屈していた。毎日同じ顔、景色。村の外に出ることは決して許されなかった。外に何があるかは多少の見当がついている。それを理解してからは外に行きたいとも思わなかった。
たくさんの大人たちが少ない僕たちを大切に守ってくれていた。だからみんな文句を言いながらも、約束の日をお利口に待っていたのだ。
俺とフリートは急いで準備をして、アロナおばさんの家に向かった。
「遅いわ!!トライ、フリート。待ちくたびれたわよ!!」
「ごめんよ。だってトライが全然起きないんだもん」
フリートが不屈そうに言い訳をする。こいつすぐに俺のことを売りやがって。けしからん。
遅いと俺らに文句をいってきたのはアスナ。
アロナおばさんのとこの子だ。
だんだんアロナおばさんに似てきて俺らは最近うんざりしている。
トライ!フリートが言ったことはほんとなの?あんた寝坊したわけ?
アスナが怖い顔で俺を問い詰める。
「人聞きが悪いな。俺が寝坊をしたわけではない。俺が正しい時間でお前らがこの時の波に流されて早く起きすぎただけだよ。アスナくん」
こういう時は小難しい説明言っておけば問題ない。アホだから騙されるだろう。
「んん?そうなのかなあ…」
ほらみろ。これだからあほアスナはすぐ騙される。アロナおばさんに近づいてきたって言ってもまだまだ余裕で騙せるな。あのおばさんを騙すのはいつでも大変だ。
「アスナ。君騙されているよ。いい加減気づきな」
奥から声がした。
うげっ。あいつはラーミック。俺ら同級生の中で一番賢く、しかも喧嘩も一番強い。いつか一発殴ってやりたい。
「ラーミックが言うなら正しいわね。今日という今日は許さないんだから!トライ!!」
そういうとアスナは構えた。こいつ能力を使うつもりだ。まずいまずいなんとかしないと!
「食らえ!サクラノハ!」
アスナの頭上に桜の花がたくさん現れる。
アスナの能力はエネルギーをどこかに沢山咲いていると言われる"ハナ"というものを何種類かの中から選んで具現化する能力。戦闘系である。
こいつが戦闘系なんて生意気だ。クソ。
「わああ!!謝りなよトライ早く!あれ飛んでくるとすごい痛いんだよ?」
フリートが俺にいう。フリートには悪いが絶対に俺は謝らない!こんなやつに謝るなら死んだ方がマシだね。まあそんな心配しなくてもアスナは臆病だから技は打ってこないだろう。
煽ちゃお。
「おい。打てるもんならうってみろよ。意気地なし」
するとアスナは顔を真っ赤にして怒った。
流石に真顔で言うのは煽りレベルが高かったかな?
「死んでも知らないから!!!」
アスナはそういうと本当に打ってきた。
これは…うん。大誤算。ただの怪我じゃ済まないね。大怪我だ。
「うわわわわわ!!シールド!!」
そういうとフリートはシールドを張った。
これがフリートの能力。ザ・補助系って感じの能力。だが、まだ一人分のシールドしか張れない。アロナおばさんがいうには練習次第で他人にも張れるって言ってたけど、どうなんだろ。正直できるようになって欲しくないなー。
あ、彼はもちろん自分を守った。こういう時は兄貴ずらしてくれない。
「やめろ!アスナ!!いけ八重の手!」
ラーミックが桜の花を全て払ってくれた。助かったあ。彼の能力は背後から蜘蛛をだす、戦闘系だ。部位を指定してその部位だけ出すことも可能。今回は手だけ8本だして花びらを払ってくれた。
こいつ毎回鼻につくんだよなあー
能力強くて頭もいい。
何がヤエノテ!!だ。80もないだろ。かっこいい名前つけやがって。
「あんた達!揉め事は他所でしなさい!!」
顔を破裂させる能力か疑うくらいプンプンにキレたアロナおばさんが現れる。
あーあ。結局アロナおばさんにキレられた。俺ら4人は家の前に追い出された。
反省するまで話はしてくれないのだと。
頑固なババアでほんと困る。更年期ってやつか?
4人になったとき俺は本音が漏れてしまった。
「いいなあ!お前ら全員かっこいい能力で。フリートはシールド、アスナは花、ラーミックは蜘蛛。くそう!!!」
みんな気まずそうな顔をした。無理もない。
「トライも十分いい能力でしょ。ほら!暗いとことか大活躍間違いなしでしょ!」
フリートがフォローに回ったのが逆に心に来た。いい友達ってたまに自分が辛辣になっていることに気づいてないことあるよな。
つい俺は声を荒げて返してしまった。
「そんなんじゃ俺の光の粒をだす"だけ"の能力のフォローになってねえよ!!!!!!」




