交い
トルテ達は一番左の部屋で暇つぶしをしていた
暇すぎるあまりヒメアがライブをしていた
「既に疲れたこの喉 そして応援し疲れたフェアリーズ達! みんなみんな、ありがとーう! そして、次は最後の曲『White』 お聞き下さい」
ヒメアが歌おうとした時
部屋の扉が強く開いた
「えっ?」
困惑するヒメア
扉の向こうにはボサボサの髪をした少女がいた
「あ? なんでこんな糞ボロ館で女子会が開かれてんねん」
と言い少女は扉をバタンと閉じた
そして扉越しに聞こえる愚痴
「ったく……招待されて遥々来てやったのに、ざけてんのか雑魚が。とりあえず主催者どこだボケ」
ヒメアは聞いた
「あれってゲーションかな?」
「なんて失礼なことを?!」
トルテはそうツッコミつつも何かを考えていた
─トルテ─
さっきの声……絶対聞いたことある
ある……ある……ある……あるよね!?
トルテは扉を開け部屋を飛び出す
「ストップ!!」
そう呼び止めた
「あ? なんや……ってお前」
「そう! 私トルテです」
「そか、トルテか……リア顔めちゃくちゃ可愛いな! 惚れた」
「そういうあなたはイチドクちゃん」
「にしても数年ぶりに聞いたわ。トルテもまさか招待されてたとはな! それとも招待してくれたんか?」
トルテは下手な照れ笑顔をした
「な、なわけ〜」
「んで、さっきの女子会は何だったんだ?」
「あれは……その……暇だから、さ」
─イチドク─
なるほど……主催者が来るのを待ってるのか
「にしても大丈夫だったか? 私なんて来る途中ゾンビみたいなやつに襲われてな……」
「ゲーションに!?」
「ゲーセン!? あるのか!?」
聞き間違える挙げ句喜ぶイチドク
しかしそんなもの少なくともトルテは知らない
「ない、ないです。ゲーションというゾンビみたいな生物らしくて……です」
「そか……。よし、帰るか」
トルテは例のことも言った
「船が逃げるように日本本島へ帰っていったんですよ。つまり、閉じ込められました」
「んな馬鹿な!!」
目玉を飛び出し驚くイチドク
「バカもカバもないですよ……私達はここで死を待つ運命だと思います」
「てかお前、少し言ってることが痛いというか滑ってるというか……アホになったか?」
ガーンっ……という感じになり、トルテは泣き出した
「コミュ障克服しようと面白いこと言って、少しでも陽キャに……話題の中心に……」
「はいはい。お前がトルテなら話は早い。さっきの女子会メンバーは誰だ? AAKの誰かならありがたいんだが」
「AAKじゃ……ないです……。あの、さっきできた友達といいますか……。つまり私達と同じ招待された人です」
「りょ つまり、人がいるなら島から脱出も容易ってことだ」
「な、なんで?」
「動く人間がいないなら高い知能も宝の持ち腐れだろ? お前にならこれで意味が伝わるはずだ」
─トルテ─
イチドクちゃんは天才司令塔
なるほど……つまりイチドクちゃんの指示さえあれば
「はい! もちろんです。伝わりました!」
「よかった。そんでだが、あの黄色い扉って入ったか? あそこから変な音がするんだが」
「で、ですが……入らないほうがいいとサカツキさんから」
イチドクは首を傾げる
「サカツキ? 誰だそいつ? まあ誰だろうと、入らないほうがいいってのは駄目と言っているわけではない。あくまでも忠告の段階だ。そうだろ?」
「それはそうですけど……いや、でも」
「嫌なら来なきゃいい」
そしてイチドクは黄色い扉の方へと向かった
トルテは恐怖でそれを見ることしかできなかった
トルテがいるのは黄色い扉から二つ左に離れた扉の近く
イチドクは黄色い扉へと恐れることもせず入った
「えっ……!?」
引きずり込まれるように部屋へと入っていくイチドクを見てトルテは驚いた
「イチドクちゃん!?」
トルテは急いで黄色い扉へと向かう
そして閉じた扉を開けようとしたが、鍵が掛かっていた
「お前、くそ、辞めっ……ちょっ」
イチドクは少し高めの声で悶えていた
「イチドクちゃん! 大丈夫!?」
─トルテ─
イチドクちゃん……こうなったら無理やりにでも扉を
でも私程度の力じゃ
どうすることもできない
トルテはイチドクの名を叫びながら扉を何度も叩き、開くときを待った
イチドクの声も止まずに続き
数分が経った
イチドクの声は消えた
「イチドクちゃん……」
そしてカチャッと音が聞こえた
おそらく鍵の空いた音だ
「逃げろトルテ!! ここは───ぐはっ……」
「イチドクちゃぁーん!!!」
トルテは逃げる
シラユキとヒメアに助けを求める為だ
─トルテ─
私がもっと強く止めてれば……
ちゃんと止めれていれば……
そしてトルテは思い切りドアを開け
「た、助けて!!」
トルテは焦りと相まり息を切らしていた
「ど、どうしたのトルテちゃん!? 部屋を急に飛び出たと思ったら次は……」
「私の友達が黄色い扉の部屋に入っちゃって……どうなったか分からないけど、たぶん殺されてるかも……」
シラユキは言った
「ヒメアが助けてあげて。一刻を争う時に車椅子の私は足手まといにしかならないしね」
「お姉ちゃん……分かった」
そしてヒメアはトルテの手を取り
「行くよ!」
「はい!」
そして黄色い扉の前へと到着した
「よし、鍵は開いてるもんね?」
「さっき来た時には開いてたよ」
ヒメアは壁に体を隠しつつ、ゆっくりと扉を開ける
体を隠すヒメアの横にはトルテがいる
「あれは……」とヒメアは唖然とした
「ヒメアちゃん、見えない」
トルテも固まるヒメアを少し押し、部屋を見た
そこにはバニースーツを着させられ、首輪とリードに繋がれたイチドクがいた
イチドクは四つん這いにさせられており、上に銀髪の少女が座っていた
「イチドクちゃぁーん!!!!」
イチドクは泣きながら
「み……見るな……うっ……」
「イチドクちゃん」
「落ち着いてトルテちゃん あいつを倒すよ。トルテちゃんって戦えるんだったよね?」
「はい!多少は」
とトルテは首を縦にふる
「よし、行くよ!」
ヒメアは人差し指と親指を縦に素早く弾く
さすると指から炎が出てきた
「凄い……そんなことが」
「弾く勢いを利用して着火させた。そしてこの炎を上手く使う」
ヒメアは着火していない右手をピンと開け、思い切り後ろに
思い切り前にやり、その突っ張りのような技で起こした強風と炎を混ぜ、熱風を起こした
部屋は燃え始める
「凄いよヒメアちゃん! よし、私も負けてられない」
トルテはショットガンのエアガンを取り出す
そしてそれを連続で発砲
エスタは体を少しだけ動かし、本来全て命中しているであろう弾を全て避けた
「なに?!躱された……」
「任せて」
ヒメアは強くなった炎にまたもや大袈裟な突っ張りで風を起こす
─ヒメア─
風を浴びると火は強くなる
これこそが私の最強コンボ技
"フレア"と"インパクト"の二技を合わせた熱風
名付けて"フェニックス"
「フェニックス!」
ヒメアはずっと風を起こし続ける
エスタはそれを見ているだけだ
そしてエスタは立ち上がる
「そろそろ部屋から出ましょうか」
その時
「マジか……」
焦った様子もなく歩いてくるサカツキ
「おーい、燃えてるぞ エスタ」
「サカツキですか。燃えたのなら新しく寝床を探す必要がありますね」
「とりあえず火を消せ。ワヨはもう眠いん」
エスタはイチドクを抱え部屋から出た
「そうですね。んで、どうやって消します?」
「インパクト使えドアホ?」
インパクトとはヒメアも使った風を起こす技だ
「分かりました」
エスタは手を団扇のように一回縦に仰ぎ
インパクト同様強風を起こした
強風は炎の力をも上回り、火は消え物は飛び部屋はめちゃくちゃだ
「消火終わりです」
─トルテ─
指の風で火を消した!?
……人間なのか?
いいや、人間じゃない
ちなみにヒメアちゃんも人間じゃない
じゃあなんだろ……
トルテは人間離れした二人が何者なのかと考えていた
「んで、だエスタ。その抱えてるやつだが、エングランがもう時期着く。気をつけろよ〜」
サカツキはそう言い黄色い扉の一つ右隣の部屋に入っていった
トルテはエスタにショットガンを構える
「なんのつもりですか?」
「友達を返してもらう。無理なら殺す」
─エスタ─
さっきも見たがこれは空気の弾しか入っていない
これで人を殺せるわけがない
「では殺してみて下さいよ?」
トルテはエスタの顔に銃を撃った
空気の影響でエスタが一瞬目を閉じた瞬間
トルテはエスタの顔を二連回し蹴りした
右足で蹴り、体を一回転させ左足で蹴る
─エスタ─
なるほど……銃は見せかけですか
エスタは吹っ飛び二階廊下で倒れる
そして吹っ飛んだ影響で手放したイチドクをトルテは空中で受け止める
「大丈夫? イチドクちゃん」
「もう……生きてけない。なんという屈辱」
「イチドクちゃん! しっかり」
ヒメアは言った
「エスタは私に任せて!」
そしてエスタの後ろからシラユキが車椅子でゆっくりと駆けつけていた
「私の妹の友達の友達に手を出されちゃ困るな ヒサナキツルギ」
シラユキは意味不明な言葉を口にする
「ヒサナキツルギ?」
ヒメアは聞き返す
「ああ、気にしないでくれ」
「なぜあなたがそれを……」
エスタは少し動揺していた
エスタは何かを思いついたのか動揺しつつ少し笑う
「ハクセツ……まさかあなた……ここにいるとは……。姿が全く違って気づきませんでしたよ」
「ハクユキ? 話が見えないんだけど……ねえ、お姉ちゃん」
ヒメアは少しあだふやした
「ふふふ……ハクセツとは懐しい名前 あの頃は君もまだ小さかったからね……エスタ」
─エスタ─
五年前伝説の冒険者が魔王を名乗る化け物を倒した
私達の主である破壊のレクイエム
瞬殺のハクセツ 永遠のトワラント 終焉のラスイングの四人
その後魔王を名乗る化け物から『超人間手術』のデータを見つけた四人は信頼できる人間を次々と超人間へと変えていった
しかし最後はとある事件で解散へとなった
その後四人がどこで何をしているかは不明
その内の一人……ハクセツがなぜここに!?
「つまりこれはどちらの罠でしょうか?」
「私とレクイエムは除かれる。そして残りのどちらかが、私とレクイエム……いいや、私達に関係のある超人間を消そうとした」
「トワラントさんはそんなことする人じゃないですよ」
シラユキは息を吐く
「こんな大胆なことをするのはラスイングだけ……私もそう思った……だが、百そうであると思いこむのは辞めたほうがいい」
「それもそうですね」
扉越しで話を聞いていたサカツキ
─サカツキ─
どうして……ハクセツがここにいる……
レクイエム……どこ行ったんだよ……本当
サカツキは涙を堪えていた
ヒメアは思い出した
「もしかしてお姉ちゃんが昔旅をしてたっていう仲間の話?」
シラユキは微笑み答えた
「正解。しかし今はそいつが敵かもしれない……というね」
「んで、話に水を差すようで悪いが、私の服はどこやった?」
イチドクはエスタに聞く
「燃やしましたよ?」
「ふぁっ!?」イチドクは驚き声が出た
「でもバニースーツ似合って……るよ?」
トルテは励ました
しかしイチドクにとって励ましになるはずもなく、屈辱的に感じてしまうのは目に見えている
「黙れ!」と顔を赤らめ返すイチドク
「とりあえず今日は解散です。適当に部屋を選んで下さい。あと敵がいる可能性もありますので、鍵は忘れずに」
その後全員解散し
一番左の部屋にトルテ、イチドク、ヒメア、シラユキ
黄色い扉は空きとなり、その一つ右隣にサカツキ
更に一つ右隣にエスタが入っていった
そして森では
レイト、コウジ、ヒカリノの三人が館へと向かっていた
船から降ろされたのが通路方面でなかったのか、森の中を歩いている三人
「んで、あの大きな館は本当にパーティー会場なのか?」
レイトは呟く
「さあ? でも特に向かいたいって場所はあそこしか無いわけじゃん?」
とコウジは返した
「まあいいさ。何かの罠なら私が全て破壊してやる」
自信満々のヒカリノ
森で何かがカサカサと動いた
コウジは気づく気配もないが、レイトとヒカリノは即座に気づいた
「さて、もう夜か……トラでもいるのか?」
「トラって夜行性なのか?」
ヒカリノの質問にレイトは「さあ」と返す
「うう……」
森から腰が曲がり、手の垂れた女が現れた
一定の歩幅、リズムで近づいてくる
「おにゃのこ!?」
コウジはそう驚く
─レイト─
まるでゾンビみたいな歩き方……
そんなの存在するはずもないが……
とりあえず確かめてみるか
「おいお前、こんなとこで何をしている? 答えないなら容赦なく殺すぞ」
「ちょ、レイト……相手はたぶん森で迷子になった女の子だよ」
「の可能性あるが、念には念をな」
「念?」
女は返した
「うう……お腹すいた」
─レイト─
喋った……ゾンビとかの類では無さそうだな
五年前に魔王を名乗るやつがいた
そいつの下っ端にゾンビみたいな集団があったって噂もある
まあゾンビは顎の筋肉がないし、喋れない
「おい、大丈夫か? お前ら飯とか持ってないか?」
ヒカリノは首を横に
コウジも同じく振ろうとした
「待って、俺クッキー持ってきてたはず」
コウジは鞄から二つ入りのクッキーを取り出す
コウジは女に近づき「よ、よかったら」といい差し出す
「ありがとう……」と返し女はクッキーを食べる
そして女はクッキーを食べ終え
「んで、名前は?」
レイトは聞いた
「私はユイと言いまして……その、勝手にペットにされた挙げ句森へ捨てられました」
─レイト─
何だと!?
酷い話だ
「そんな……酷い! 捨てたやつは俺が許さないからね」
コウジは格好をつけたのか柄でもない発言をした
「ありがとうございます……でもいいんです」
「なぜ?」
コウジは首を傾げた
「それは……いいや、なんでも……。とりあえず私の為に無謀な戦いは辞めてください」
─レイト─
無謀な戦いということは、俺達に関わらせたくないほど強い相手なのか
─ヒカリノ─
ということはつまり……相手は強い……
ならやり甲斐がある
「案ずるな。俺に任せておけ」「案ずるな。私に任せておけ」
レイトとヒカリノは声が被った
流石兄弟と言ったところだろうか
「え、その……ですが……」
「お前は止めた。それでいい。ここからは俺たちの勝手だ」
レイトはそう言い再び歩き出す
「お前も着いてこい。館に行くんだろ?」
「は、はい……確かに行く場所はあそこしかないですが」
「なら来い」
そしてその頃港では
エングラン、ルシファー、マカロン、ライスを乗せた船が来ていた
たまたまタイミングが被った為、ライスも一緒に乗っている
船上で話しエングランとライスは仲良くなり、目的地が同じことも知ったので、目的地まで同行することにした
船は地上へと到着
「明らかにあの館だと思うんだが? パーティー会場」
「確かに、そうだな」
ライスの言葉にエングランは返す
「てかいい加減口聞いてくれよマカロン」
ライスの言葉にマカロンは何も返さない
─ライス─
マカロンは極度な人見知りなのか?
エングランの声には絶対に返事をするのにな
しかもルシファーの声にすら返事なし
こいつらって全員仲間なんだよな?
「なあマカロン? いい加減俺以外の話も聞けるようになってはくれないか?」
「嫌です」
─ライス─
しかしマカロンはエングランと格好がほぼ同じ
つまりマカロンはエングランが好きなのか?
なら話は早い
そして館へと歩く一同
「なあ、あいつは何やってるんだ?」
エングランは腰を曲げ一定のテンポで歩く男を見て聞いた
「さあ、誰だろ?」
「ゾンビの生き残りだったりして」
ルシファーはそう呟く
男は少しづつ近づいてくる
そしてエングラン達の前へと来た
「ヴヴヴ……グァ」
と男はエングランに噛みつこうとしてきた
「インパクト」
マカロンは人差し指を振り下ろし、風を起こした
風により男の首は取れる
「まるでゾンビだな」ライスは首の取れたゲーションを見ていた
そして時は経ち翌日
館に到着したエングラン達
「だーれかいるかぁ??」
館に入るや否や叫ぶライス
おまけ
「とりあえず今日は解散です。適当に部屋を選んで下さい。あと敵がいる可能性もありますので、鍵は忘れずに」
指示するエスタ
その後一同は解散した
そしてトルテ達の部屋にて
「にしてもイチドクちゃんが実在したなんて……」
「実在って……私は何だと思われてたんだ?」
ヒメアは言った
「でもイチドクちゃんバニースーツ似合い過ぎだよ! あー、嫁に欲しい」
─イチドク─
くそ、早く何かに着替えないと、この話題は終わらない
「ちなみに予備の服持ってるやつとか……いたりするか?」
黙り込む一同
─シラユキ─
まあ一着持ってるけど……今晩は黙っておこう
というかサイズ合わないと思うけど
「イチドクちゃんなんかセリフ言ってよお」
初対面でもすぐ馴染めるのはヒメアの才能だ
「おい、あまり調子に……あのな、まず私に可愛い要素なんてあるか?」
「あるよ!」
「うんうん」と頷くトルテ
「あのエスタとか言うガキ……次あったら覚えとけよ」
「きゃー! 怒るイチドクちゃんも可愛い」
からかうヒメア
「よし、お前は少し裏に来い」
「ご、ごめんって……ほら、冗談だよ」
「そうか、よし、服交換だ」
イチドクはヒメアの服を脱がせようと飛びかかる
ヒメアはイチドクの手を必死に抑える
─トルテ─
これは絵になる