逃へ
「殺すって……悪いと思ってるからさ」
「そうですね……では、エスタお姉ちゃん大好きと言ったら許します」
「そんなこと言えるわけ」
「拒否権は与えてませんよ?」
イチドクはエスタを少し睨む
「エスタお姉ちゃん……大……好き」
─エスタ─
幸せです
そして外へと出たエスタとイチドク
イチドクは元着ていた服を着ている
ヒサナキツルギの城は氷で固まっていた
そしてシラユキとルシファーが戦っている
「ダムエアー」
ルシファーの能力だ
空気で無数の槍を作り、全方向から放つ
空気である為、この能力を目視することは不可能だ
シラユキは全ての槍を氷で防ぐ
「ルシファーくんも成長したね。でもその能力は私と相性が悪い」
「なるほど。耳が良いってのも厄介だね」
ルシファーは更に槍の数を増やし、放つ
シラユキは全てを軽く受け止める
シラユキは風の音が聞こえる故に、防ぐことが可能だ
「さて、次のは理論上回避不可能な技だ」
ルシファーはシラユキの体から全ての空気を抜き取った
─ルシファー─
人間は体内から空気が無くなると、数秒で死ぬ
サカツキ程ではないが、初見殺しだ
シラユキは表情の一つと変えずに、無数の氷の刃を続けて放つ
ルシファーは全てを風で受け止める
─シラユキ─
厄介な能力だ
距離を取る……いいや、範囲は広そうだ
シラユキは体内の細かい部位まで全てを氷で固め、体内の崩壊を送らせている
「アイスウォール」
巨大な氷の壁を作り、ルシファーの方へと倒す
ルシファーは風で受け止めている
「いずれにしても死ぬのは君の方だよ。シラユキ」
シラユキは声を出すことすらもできなかった
「今だ!」と声がした
シラユキの後ろからライスが出てきた
そして、エアガンのアサルトライフルを撃つ
しかし空中で消えてしまった
「僕は空気を使えるんだ。空気の弾で勝算はないよ」
「ならこれならどうや!」
次はハクリエが爪楊枝を数本投げた
しかし爪楊枝は途中で地に落ちた
「分かるだろ? 何を投げても逆風には勝てない」
そしてルシファーの横からはシフェアルが来ていた
─ルシファー─
短剣二本持ち……
まあ唯一勝算があるならこれか?
いいや、僕には勝てない
ルシファーは風を足元に、シフェアルを転ばせようとした
しかしシフェアルは飛んで躱し、ルシファーに近づく
─ルシファー─
無能力者でこれか?
かなり骨のある相手だ
ルシファーは無数の風の槍をシフェアルへ投げた
シフェアルは全てを躱した
「ふふふふ」ルシファーはそう静かに笑う
「面白い。もう少し楽しみたい……んだが、申し訳ないな」
シフェアルは体内から破裂した
「ぐがっ……」
─シラユキ─
つまり目とか皮膚から空気を無理矢理出して、内側から破裂させる……
とんでもない能力だ……やばい、意識が───
シラユキとシフェアルは倒れた
そしてルシファーは言った
「二人の強さは本物だ。しかし、相手が悪かった」
ライスは心底激怒した
「っ……なんの冗談だ? この二人がこうもあっさり……」
ライスは銃を捨てた
そしてルシファーの方へと本気で走った
─ライス─
あいつだけは許せない
「ライスちゃん!」
止めようとするハクリエ
ハクリエは勝てないと判断し怒りを堪えたのだろう
「ルシファー!!!」
ライスはルシファーに飛び蹴りをしようとした
しかし空気で守られ触れることすらできなかった
ライスは少し涙を溢した
イチドクは動くことすらできなかった
エスタの能力により、声すらも出せなかった
ライスは絶望からか、ルシファーの前で崩れるように膝を付く
─イチドク─
何もできなかった……
みんなが戦ってる中で……
イチドクもまた絶望していた
ハクリエは全身の力が抜け、後ろへ尻もちを着く
「じゃあ次は誰を消すか」
ルシファーはそう辺りを見渡す
「ルシファー そこまでだ」
そう言い城から出てきたのはエングランだ
「エングラン……なぜ止める?」
「相手の主力は殺した。そこで終わりだ」
ルシファーは城へと戻っていく
そしてエングランとすれ違う瞬間
「エングラン……君は甘すぎるよ。いつか後悔する」
「その時はその時だ。お前はいつからそんなに余裕のない人間になった?」
「っ……黙れ」
ルシファーは城へと再び歩き出す
そして城へと入っていった
すれ違いに記憶を失ったトルテが城から出てきた
「えっと……」
「トルテ……」ライスは小さく名前を言う
「は、はい……トルテです」
「起きたか……」
トルテは首を傾げた
「は、はい……」
シフェアルとシラユキの死体がトルテの視界に入った
「えっ……シラユキ……さんですよね……? それにもう一人……人が……」
「トルテ? 人って……シフェアルだ」
「シフェアル? なんですか……この人の名前ですか?」
─ライス─
記憶がない?
っ……もしかしてヒサナキツルギの能力か?!
くそ、どこまでも舐めやがって
「トルテの記憶を返してもらおうか」
エングランは答えた
「うちに記憶を操作できるやつはいない。もし記憶を奪われたと言うなら、クローズあたりじゃないか?」
ライスは歯を食いしばり、地を両手で殴った
「くそっ!!」
その日はトルテ、ハクリエ、イチドク、ライスでホテルへと泊まった
シラユキの死を知る者は少ない
翌日
ライスは眠れず、ずっと起きていた
部屋に四つのベッド
一人一つ使っている
「みんな……おはよう」
ハクリエは暗い顔をして起床
「おはよう」
「……ライスちゃんだけか……起きとるの」
「ハクリエ。唐突で悪いが、一晩中考えたんだ」
ハクリエは息を吐く
自分だけは冷静にと諭し
「なんや?」
「私はここから別行動をしようと思う」
「考え……あるんやろ?」
「えっ……?」
ハクリエは笑って答えた
「考えあるんやったら、うちに止める権利はない」
「そうか……。助かる。色々と……ありがとな」
ライスはそう言い部屋を出た
ハクリエは堪えていた涙が沢山出てきた
─ハクリエ─
シフェアルちゃん……
そしてしばらく
イチドクが目を覚ます
「よく寝た。ハクリエ おはよ。ライスは?」
「ライスちゃんは別行動する言うて出てったよ」
「そか」
ハクリエは聞いた
「あの後イチドクちゃんと別れたやん。何があったか聞かせてくれんかな? 超人間 能力者になれたのか……とか」
「あの後……そうだな」
イチドクは話し始める
「あの後、私は電車に乗って東京へ向かった。だが、気づいたら真っ暗な空間で動けず、次に動けるようになったのはヒサナキツルギの城」
ハクリエは顎に人差し指を置き
「話が見えんなあ……」
「だろ? 真っ暗な空間……あれこそサカツキの能力じゃないのか? 私はそう思った」
「サカツキの……具体的にどういう能力とかは説明できる?」
「ああ。おそらく、対象の物、生物を別空間に送ることができる。そして、好きな場所で好きなものを空間から取り出せて、好きな時に入れれる」
ハクリエは納得したような顔だった
「それなら急に消えた電車の説明がつく。絶対にそれしかありえへんわ! イチドクちゃんやっぱ天才やわ」
「ルシファーは空気を操る能力 エスタは近くの生物を動けなくする能力……エングランだけが謎多き男」
「あの人なら聞けば教えてくれそうやけどなあ……なんか個性あるメンツの中で、唯一普通というか……エングランってそんな人やん」
「忘れるな。立ち位置は敵同士。なぜ自ら負けるリスクを増さないかん? 相手にメリットが無さすぎる」
「それもそうやなあ……」とハクリエは再び考える
「せや、ほなら、お色気作戦ってのは?」
「ハクリエってそういうのやったことあったか?」
イチドクは熱いコーヒーをマグカップ注ぐ
そして飲み始める
「いや、イチドクちゃんのバニースーツならイチコロやろ!」
イチドクはコーヒーを吹く
「冗談じゃねえ……。てかエスタが釣れるわ」
「それもそうやなあ……」
イチドクは聞いた
「普通に仲間に成りすますのが良くね?」
「変装技術なんてうちらにないで……?」
「私ならルシファーに変装できる。髪色も同じだし、長いし、たぶん背丈も変わらんだろ」
「よし、決まりや!」
そしてエングランの能力を聞き出す計画
計画名 日高が始動した




