力へ
「信じられないのは分かるが、とりあえず鵜呑みにしてくれ」
「は、はい」
トルテはユキミの存在を鵜呑みにすることにした
そして待つこと二十分
(お兄ちゃん! 見つかったよ)
「そうか。案内してくれ」
─トルテ─
やっぱ独り言にしか聞こえない
そしてユキミの案内によりユキミに着いてくレイト
そのレイトに着いてくトルテ
走りながら話をしていた
「しかしこれで行く先にシラユキさんがいたら、ユキミさんの存在が本当である証明になりますね……」
「証明……そうだな」
レイトは話し始めた
「ユキミは昔死んだ俺の妹でな……俺はサツに捕まってた」
「ど……どうしてですか?」
「ユキミは殺されたようなもの……その犯人を俺が殺してな」
「えっ……それは……ユキミさんが可哀想というか」
(ちょ、本人の前でする話じゃないでしょ)
「それもそうだ」
(だよね)「ですよね」とユキミとトルテの声が被る
─レイト─
めんどくせえ……
確かにどちらの返答にもなっているが……
「急にこんな話悪いな」
「気にしないで下さい」
そして近くの公園へと到着した
狭い公園であり、この時間帯なら普段人の一人もいない
レイトとトルテは公園のベンチに座るシラユキを見つけた
「シラユキさん!」
大声でシラユキを呼ぶトルテ
シラユキはトルテ達の方を向いた
シラユキの元へと向かう二人
「トルテちゃんに……君はあの島で氷漬けにした」
「口に気をつけろよ? 俺はレイトだ」
シラユキは微笑む
「それはすまないね。そして、何用かな? こんな夜の公園にまで来て」
レイトは能力社会のこと
ヒメアが攫われたことなど全てを話した
「っ……ヒメアが なるほど」
シラユキは表情の一つも変えずに冷静だった
「あとイチドクちゃんって知りませんか?」
トルテの問にシラユキは「いいや」と首をゆっくり横に振る
「イチドクちゃんもどうかしたの?」
「はい……行方不明でして」
シラユキは少し考えた
「そうか……状況は把握した。そして、それを伝えにだけ来たとは考えにくいよね……」
シラユキは笑った
「つまり能力者になりたい……とかかな?」
「その通りだ」「はい……」レイトとシラユキは返事をした
「あれ? レイトさんって能力者じゃ……?」
「いいや、俺は無能力者だ」
トルテはレイトの真似をした
「ブラックショット!」
「あれは武器だ。ったく、他人にやられるとどうも恥ずかしい技だ」
「そうですか……ブラックショット」
「よし、次言ったら分かってるな?」
レイトは手の骨を鳴らす
「す……すいません……。私なんかが、つい楽しくて調子乗っちゃって」
レイトはため息をつく
「バーカ 心底怒ってたら表情ももっと変わるわ。ただの冗談だ」
「そ……そうですか……なら良かったです!」
そしてシラユキは言った
「この微笑ましい空間に水を差すようで申し訳ないけど、今のトルテちゃんが能力者になっても弱いと思うよ?」
トルテは少し動揺していた
そして何を返せばよいのかも分からなかった
「そ、そうです……よね……私なんかが」
「脳改造 これは脳の回転速度が影響し、それにより能力も変わる。つまり回転速度の早いほうが、強い能力者へとなる」
「私の回転速度は確かに……遅いですけど……。でも諦めたくないです!さっきも聞いたと思いますが私は友達を助けたいですし、力が……必要なんです」
トルテは俯く
「ああ。無理とは言ってないよ」
シラユキは笑い、話を続ける
「超人間手術で脳を超人間化し、その後に能力を入手すれば、強い能力者へとなれるはずだよ」
「それってどういう……」
「超人間手術は、人間のその箇所を底上げする……つまり頭を手術すれば回転も早くなる。よって強い能力を得られる」
「ちなみに超人間は俺もやった方がいいのか?」
シラユキは答えた
「人間の体には限界がある。レイトくんは既に頭が回るし、超人間するにしても別の箇所のほうが良いと思うよ。 ちなみに超人間は強い人間でも二箇所が限界かな? まあ私の知る限りだけど」
「なるほど……。なら言葉通り別の箇所に使わせてもらおう」
シラユキは車椅子に乗り、漕ぎ始めた
「着いてきて 私の家には全ての道具が揃ってるから」
「道具?」と疑問に思ったトルテ
そして家へと案内されること十分
シラユキの家へと到着した
家に入り曲がった先にある扉を開くシラユキ
扉の先には地下への階段があった
「これは……」トルテは驚いていた
「超人間手術 脳改造 全てがここで出来る」
シラユキは車椅子を降り、氷で足を作る
「そうだ、レイトくんは夜食でも買ってきてくれないかな? その間にどこを超人間化するか考えるといいよ」
「分かった……じゃあ買ってくるか。ちなみに俺の奢りだ」
シラユキは微笑む
「太っ腹……」とトルテは呟く
そしてトルテとシラユキは更に階段を降り
扉が見えてきた
「扉……」
「あれが研究所への扉だよ」
シラユキは扉を開けた
そこには研究所のような場所が広がっていた
トルテはあちらこちらを見、凄いと心底思った
「早速だけど、ベッドで横になってくれるかな?」
「は、はい」
トルテはベッドで仰向けに横となる
─トルテ─
ベッドなのに固い
布団敷いてあるのに固い
どうして
「まずこれを飲み込んで」
とシラユキはトルテの口に薬のようなものを入れる
トルテは疑いもせず飲み込んだ
「あれ……体が」
─トルテ─
一ミリも動かない
「これで手術がしやすくなった」
そしてシラユキは注射を手に取り
「この手術は成功率二十五%だったっけ?」
─トルテ─
えっ!?
ヤバいじゃん
しかも手術直前に言うことなの?
「でも安心して 私がやれば成功率百%だから」
「は、はい……」
トルテは緊張していた
しかし体は震えもしなかった
薬の効果だろう
シラユキは注射を持ち、手術を始めようとした
そんなシラユキにトルテは聞いた
「あの……麻酔は……今から……ですか?」
シラユキは笑って答えた
「麻酔は無いよ」「えっ!?」
トルテは驚きのあまり声が漏れた
「それって痛いどころじゃない……ですよね?」
「死ぬことはないし問題はない」
シラユキはトルテの頭に注射を打った
「い"あ"あ"あ"」とトルテの悲鳴が地下に響き渡る
トルテは涙を流しながら気絶した
それから時は経ち
トルテは目覚めた
目覚めるとシラユキ、レイトがいた
「え……あの……ここは」
トルテは朦朧な意識の中聞いた
シラユキは答えた
「トルテちゃんの手術は成功したよ」
「えっと……」
「手術は成功。後は使いこなせるかどうかだね。でも、完治するまでは脳改造はできないよ」
「あの……」
シラユキは首を傾げた
「どうしたの?」
「あなたは……」
「もしかして」
レイトは何かに気づく
「なるほどね……」
シラユキも何かを察した
「じゃあ手術は失敗なのか?」
「いいや、手術は成功した。おそらく体が耐えきれなかったんじゃないかな……」
トルテは首を傾げ何がなんだか分かっていない様子だ
「そうか……んで、完治したら脳改造もするのか? 注射の跡が」
「いいや、負担が大きすぎる。このまま脳改造までしたら、一生治らなくなるね 記憶喪失」
「そうか……」
トルテは聞いた
「あの……私、記憶無くしたんですか?」
「そうなるね」
トルテは俯いた
「そう……なんですね……。あの……」
「ん?」と聞き返す
「なぜ私は研究所みたいな所にいるんですか?」
「それは細かく話すと長くなってしまう そうだね……強くなるため、とでも言っておこう」
「そう……ですか」
シラユキはテレビを付けた
テレビにはサカツキが映っていた
「強い能力者には強い能力者 もしくは相性のいい能力者でないと、基本は勝てない。つまり全能力に勝つことは不可能に近いわけだな。しかし、私の下に着けば全て解決。唯一最強の能力者がいるのだとすれば、私だからだ」
そしてレイトは言った
「サカツキ……」
シラユキは話し始める
「二人に話しておくことがある。トルテちゃんは何のことか分からないと思うけど聞いてね」
「は、はい」
「私達の敵。つまり能力社会を制そうとしている者。そいつらがいる限り、能力社会は終わらない」
「ほう……」と声を出すレイト
「まずはサカツキのいるヒサナキツルギ。そして上層部という謎の十人組、そしてその上に神と呼ばれる人もいるらしいね……クローズ。そしてラスイングだが、ラスイングにも部下は沢山いる。最後に、私も名前しか知らないが、謎多き組織コネクト。この四勢力が能力社会を統べようとしている」
「クローズ……コネクト……聞いたことない名前だな」
「それもそうだ。表には名前も出せないような組織だからね」
ポカンとするトルテ
シラユキはそんなトルテを見て言った
「トルテちゃんもレイトくんも、好きなだけここにいていいよ。私はヒサナキツルギの城を潰しに行く」
シラユキはそう言い階段を上がる
「本当に行くのか?」レイトは聞いた
「勿論。 妹は渡せないからね」
シラユキは再び階段を登り始める
レイトに止めることはできなかった
「あと、鍵は置いていくね。出る時に鍵は閉めてきて。鍵は私と次に会うときまで預かっておいて」
「分かった」
トルテは話が全く見えていなかった
「あの……」とトルテは言った
「どうした?」
と微笑みながら返すシラユキ
「……い、いえ、また会えましたら」
「うん、また会えたら」
シラユキはそう言い家を後にした
そしてレイトは聞いた
「なあトルテ……本当に何も覚えてないのか?」
「はい……。トルテって私の名前ですよね?」
「覚えているのか?」
「いえ、みなさんがそう呼ぶので」
「そうか……」とレイトはシラユキの言った言葉を思い出した
『ここに注射を二つ置いておく。これは脳改造の注射。首に打てば能力者になれる』
レイトは注射を見ている
そして注射を手に取り、首に打とうとした
─レイト─
待て、今じゃない
今現在の頭の状況も能力に影響が出る
最高の状態で打ちたい
「トルテ、少し留守番しててくれ。今から夕飯でも買ってくる」
「はい……分かりました」
そう言いレイトも家を後にした
─トルテ─
何がどうなってるんだろう……
思い出の一つもない……なんかモヤモヤする
そして固定電話が鳴った
もちろんのこと、この家の主であるシラユキかヒメアに向けた電話である
トルテは恐る恐る受話器を手に取る
「シラユキですか? いやはや久しぶりですね。あれ? 何か話さないんですか?」
「あ、あの……どちら様で」
トルテが話した瞬間
電話は切れた




