モグラ叩き作戦です
お読み下さりありがとうございます。
少し時制が前後してしまいちょっと読みにくいかもしれません。
パシンッ
「だから言ったでしょ!」
時は遡りネブラスカがネイデン学院に通っていた頃の話である。
「貴方は公爵家の名前だけでその地位にいるのよ。良い気にならないで!」
「インチキするなんて下品ですわ!」
突然学校の裏庭に呼び出されたと思うといきなり頬を叩かれ、受け身も取れずに倒れてしまう。
「またですか…どうして私を叩くのでしょう。」
今日はネブラスカが在籍しているネイデン学院の学年末の試験結果日。朝から大きな掲示板に貼られた成績順を見に大勢の生徒が集まっていた。
(良かったです)
そっと後ろの方で自分の順位を見たあとネブラスカは静かに教室へと戻った。
「またネブラスカ様が1位か。」
「流石だな。」
「結局この4年間ずっと1位だったな。」
教室では複数の女生徒がこそこそと話している。
「絶対先生方が手を加えたのですわ。」
「それとも試験内容を先に知っていたのではないかしら…」
「えぇ、怪しすぎますもの。」
こういう言葉は今に始まったことではない。新入生のうちはみんなネブラスカに凄いと擦り寄ってた人たちも徐々に減っていき、最高学年になった今ではこそこそと隠れもせず陰口を叩くようになった。
(そんなわけないじゃないですか…)と言いたいネブラスカだが、誰からも話しかけては貰えず弁明する機会がなかったままずるずると来てしまった。
(そろそろかしら…)
「ネブラスカ様、少しよろしくって?」と、放課後呼び出しにあっては背中を押されたり頬を叩かれたりしていた。
王都の屋敷から通ってるネブラスカはサリーやエリックに心配をかけたくないと試験結果発表当日はいつも勉強すると伝え、1人こっそり放課後に汚れた制服を整えたり頬を冷やしたりしていた。
「あんなことをする暇があればその時間を勉強に利用すれば良いと思うのですが…どうしてこう暴力で解決しようとするのでしょう。」
校舎にある食堂のテラスに1人座りボーッと木に止まった鳥や青い空に流れる雲を見つめながら荒ぶる心を沈めるのであった。
その頃になるとネブラスカはちょっとやそっとのイタズラや悪いには慣れていた。商談で来るもっとどす黒くて息苦しい人達を何人も見てきたからだ。
(可愛そうですわね)
ネブラスカにしてみれば哀れとしか思えなかった。反論はしなかったが諭しもしなかったのである。
(ご自分で気付かなければ意味はありませんもの)
「可愛いネブラスカ!今回も1位だったんだって?」
「はい。」
「おめでとう。凄いじゃないか、私は全く無理だったなぁ。」
「いえ、お兄様。お兄様の学年には殿下もいらっしゃいましたし、それに慕われてる御学友の方も沢山いらしたじゃないですか。」
「む、それは、そうだが…それでも!誇っていいんだよ。ネブラスカ。ずっと1位は凄いことだ。」
「ありがとうございます。わたくしにはこれしかありませんもの。学院で慕われる友達も出来ず不甲斐ないばかりです。」
そうして頭を肩を小さくしてしゅんと座っているネブラスカをぎゅーっと抱きしめてあげたかったが今は夕食の時間。グッと手を握って我慢するマグリッドであった。
「ネブラスカ、ほんとう貴方は凄いわ。努力する事は良い事よ。奢ることなく反省点を上げたり、自分で自分を鑑みる性格もとっても素敵だわ。」
「そうです!お姉様は素敵です!何故友達が出来ないのか分かりません。」
「お母様ミンディ、ありがとうございます。」
「ネイビーや、きっといつか理解し合える人が現れる。その時その人を大切にしなさい。」
「ありがとうございます、お父様。」
こうして穏やかに夕食は終了したがネブラスカとミンディが寝た後には必ず家族やサリーエリックにエリオットまで集まりみんなで報告を聞くのであった。
「許せん…」
「あなた!どこへ行くのですが!」
「なに、ちょっと潰しに…」
「いけません。たかだか学校内での事で一家丸ごと血筋全員捻り潰しては!」
「だが!なんでこうもネイビーだけ毎回毎回妬まれるのだ。毎日どれほど勉強していると思ってるんだ。我慢ならん。」
「お嬢様は可愛いですから…」
ボソリとエリオットが答える。
「ほんと、貴族ってこういうところが嫌いだわ。」
「お父様お母様、エリオットも。落ち着いてください。若干時間はかかりますがここはじわじわとアイツらを苦しめて気付いた頃には一番の底辺にいて這い上がっても這い上がっても無理だと知ら占めるまで落としましょう。そうしましょう。勿論ネブラスカには内緒で。良いですね?」
モグラ叩き作戦です、とニヤリと真っ黒な顔で笑うマグリッドに反論するものはここにはいない。皆無言で頷くのだった。
実はネブラスカが何も言わないので触れていないが、今まであった暴言暴力行為はエリックによって全てまるっと報告されている。
そして家族会議で報告された家柄は全てマグリッド他その手の者で色んな制裁が下されている。
だがじわじわを追い詰めているので気付くのはネブラスカ達が卒業した後、と、こちらも用意周到であった。
こうして誰にも相談せず自分で対応して解決するすべを学院で取得していったネブラスカだが、恋愛方面はゼロどころかマイナスまで下がってしまうほど何も無かった。
接点がひとつもなかったのである。
友達は本と本と、本。そんな青春時代であったネブラスカは恋愛に関してだけはどうして良いのか分からないのである。