お断りします!
こんにちは。クスノキです。見て下さりありがとうございます。
初投稿よろしくお願いします。
ある春の日の柔らかい陽の光が木々を照らす午後のひと時、王城近くの公園で場違いな見目麗しい男性と儚げな女性が向き合っていた。
「失礼。君がネブラスカ嬢か。」
「?はい。そうですが。」
ネブラスカ嬢は首を傾げて目の前の男性を見上げる。
(どなたかしら?)
「ふむ…」
ピチチチチ
(あ、綺麗な鳥さん…それにしてもこのお方背が高くてとてもかっこいい気がします)(影が長いです)
ネブラスカは多分眉目秀麗と思われる目の前の年上男性と目を合わせるだなんて言語道断という思いで空を飛ぶ1羽の鳥を見ていた。
「…私と結婚してくれないか。」
(え…え!?)
「へ!?!……っ〜〜!!おおお断りします〜!」
ネブラスカ・オールドネイは決して早くない速度でその場を逃げ出した。顔色も青色を通り越して少し土気色だったかもしれない。
「「お、お嬢様!」」
ネブラスカを追って侍女と護衛も男性へ礼をするなり追いかけて行った。
「あーあ、行ってしまったな。」
騎士団長風情の男性の連れだろう男が両腕を頭にあげて呟いた。
「そうだな、やはり花束が必要だったか…」
長い銀髪をはためかせ、190センチはあろう美丈夫は手を顎に置いて独りごちた。
「いやいや、違うでしょ。きっと彼女貴方のこと知りませんよ。」
そう言えば…私の自己紹介をしなかった。
「そうか、失念していた。そう言えば名前を伝えていなかったな。」
「この王都ならば知らない人は居ないと言われている貴方を知らないなんて。そんな人居たんですねぇ。」
とそこまでビックリしてない様な、飄々とした返事を返す。
「さてと、どうしたものか…」
ネブラスカの睨んだとおり超絶美形のスタイル抜群男性が少し麗しげにぼそりと呟いた。それだけで周りの木々に隠れてこちらの様子を見ていた公園の夫人達が膝から崩れ落ちるくらい彼の魅力は凄まじかった。
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「お、お嬢様!お待ちくださいませ!転んでしまいます!」
直ぐに追いついた侍女がネブラスカと並走しながら語りかける。
「な、な、な、一体何が起こったのですか!?」
ネブラスカはパニックになって周りの声がまるで聞こえない。
そして何も無い道端でつまづいた。
「あっ!」
「お嬢様!失礼します!」
転びかけた所をさっと優雅に護衛に助けられた。この動作からしてもこう言ったことは護衛にとって日常茶飯事のようだ。
「とりあえずお嬢様、馬車に乗りましょう。」
「え、えぇ、そうね、そうします。本当は教会にも伺いたかったのだけれど…次の機会にしましょう。」
ネブラスカは公園の近くに停めてあった馬車へと優雅に乗り込んだ。お嬢様としての振る舞いは道に入っており、どんな状況下でも遠目から見たらただの美しいお嬢様である。遠目から見たら、であるが。
「あぁ、どうしましょ。サリー、あの方聞き間違いかも知れないけどわたくしにプ、プ、プロポーズしていませんでしたか?このわたくしに?」
ネブラスカは老若男女誰にでも敬語が基本である。生きとし生けるもの総てがネブラスカ自身よりも尊敬に値するというポリシーで17歳になるまで生きてきた。
あわあわと可愛らしいが土気色になった小さな顔を両手で隠して侍女のサリーに話しかけた。指と指の間から見える揺れる水色の瞳は、どうか聞き間違いであってくれ!と訴えている。
「そうでございますね。確かにこの私サリーも結婚を申し込んでいるようにお見受けいたしました。」
「…………………………」
馬車の走る音以外の沈黙が数分間2人を包み込んだ。
やがて王都の賑やかな街並みを通り過ぎのどかな田園風景が窓から見えるようになってきた。
「お嬢様?」
「あぁ!やってしまいました。なんという事なの。どういうことなのでしょうか。わたくしに結婚?このわたくしに?し、信じられません。…怖い…」
しかも直ぐに逃げてしまいました!と言いながらネブラスカは小さな両手でこれまた小さな顔を覆い隠しメソメソと頬を涙で濡らしていった。
サリーはさっと自然にハンカチを取りだしネブラスカへ差し出す。いつもの事なのかこちらも慣れた手つきだ。流石はお嬢様を幼少期よりお世話してきただけはある。
その後馬車の中はネブラスカのメソメソ泣く音以外何も聞こえることは無かった。
いや、ネブラスカの小さな声は聞こえていたが独り言である。何もかも弁えたサリーは帰路に着くまで聞こえないふりをし続けたのである。
「無理無理無理無理無理…」