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集まれ妖怪の森クリニック  作者: 中川聖茗
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第二章

さて、くす玉の下に一人の人物が現れた。

 彼は、自分はここの事務長であり、名は「イカムーチョ」であると自己紹介をした。彼はおよそ、クリニック事務長にふさわしくない、チンピラのような恰好をしていた。空腹だった僕は今晩のおかずはきんぴらにしようと思っていたが、彼のチンピラ姿を見てすぐさま止めにした。

彼は「まあ先生、適当にやってくれてたらいいですよ。まあ、詳しいことは、全体の会議でーー(後は良く聞こえない)ーーということなので、後は全体の会議で(まるで魔法の呪文のようにこの言葉を唱えるので、今後はこの言葉に注意せねばなるまいと僕は考えた)ーーまあ、そんなとこです」と、手足をバタつかせ踊りながら言った。その有様はまるでタコのようであり、しかも顔を真っ赤にしている。これなら名前は「タコキムチ炒め」とした方がいいのではと思った。

 次に紹介されたのが、看護部長の「リスパアリマス」女史である。彼女は「先生、必要ならこれもいつも準備してます」と、左のポケットの中に、あの伝説の薬リスパダールを常に携帯していた。これは引きこもっている若者を外へ引っ張り出すのに有効なのだと自慢気に彼女は話した。ここに至って、この人はひょっとして魔女ではないか?と言う疑念が浮かび、僕は彼女のことをこれからは「リスパ売りの妖女」と呼ぶことにした。

 また、彼女は伝説のゴミ屋敷退治師であり、右のポケットにはいつもゴキジェットを携帯していた。確かにゴミ屋敷への往診には彼女は欠かせない存在であり、またゴミ屋敷で籠城していた、垢まみれの老人を保護すると、連れて帰ってせっせと風呂に入れてピカピカにすることでも有名であった。


 最後に紹介されたのが、院長の「ケムニマク」氏である。彼は人を煙に巻くような話し方をするので、イラッとしたが、煙に巻かれるのを防ぐために、僕も適当に相槌を打って、彼を煙に巻いておいた。

彼は「あー先生はー(途中良く聞き取れない)ー何もしなくてもいいですよ」と、のらりくらり話をする。意味不明の言葉は実は魔法の呪文かも知れないと思ったりもしたが、単に認知機能の低下のせいかもしれないとも考えられた。そこでこの人物の取り扱いには今後要注意と思い、僕は以後、彼のことを「ノラリヒョン」と呼ぶことにした。

 これら3人の人物だけでも十分に、怪しげな雰囲気であったが、実はまだまだ、このクリニックの怪しさの本丸はこれからだった。

 クリニックには二階もあったのである。

 その2階には精神科デイケア、認知症デイケア、訪問看護ステーションなるものがあると…。聞くからに怪しい雰囲気ではないか。

 そう、そここそが妖怪の巣窟、怪しの本丸であった。---無論、このことは後で知るのだが。

 こうして、僕は、この「怪しげな森の困ったさんクリニック」ーと、僕はそう呼ぶことに決めたのだが、精神科医師として摩訶不思議、不可解な日々を送ることとなったのである。







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