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試験と学習についての考察

国語定期テスト得点アップ術

作者: 鶴舞麟太郎

 私の消防仲間のある先輩は、中・高生時代、テスト前に予想問題を作って友人たちに売りさばき、1回のテストで5桁の金額を稼ぐことも珍しくなかったそうです。そして、その中でも、最も的中率が高く、高評価を得ていたのが国語(高校では現国)でした。


 国語は、同じ文章でも、人によって異なる読みができることから、“答えのない教科”とも言われます。なぜ、そんな国語のテストの予想が一番当たるのか、疑問に思った人もいらっしゃることでしょう。




 まず、具体的な話をする前に、ここに触れておく必要があると思います。観念的な話にはなりますが、ご容赦ください。



 皆さんは、“テスト”って何のために行うと思いますか。



 模範的な回答としては、“学習した理解度を測るため”です。

 そして、教師視点で穿うがった回答をすると、“成績を付けるため”です。



 受験が一般的ではない小学校までは、この回答でも、さほど問題はないかと思います。しかし、受験が一般的となる中学校以降では、残念ながら、この回答は“きれい事”にしかなりません。


 中学校以降では、もう一つ大きな要素が追加されます。



 それは何かというと、“生徒に差をつけるため”です。


 何で差を付ける必要があるのかといえば、“入試があるから”です。



 高等学校以降は、教育が義務でなくなる以上、生徒も学校も競争にさらされることになります。しかも、検定類や、免許試験などと違って、成績が良ければ全員が受かるわけではありません。

 仮に受験者全員が満点だったとしても、定員を上回っていたら、ある生徒は合格で、別の生徒は不合格にしなくてはいけないのです。



 これについては、「全員合格させれば良いのでは?」と思いましたので、知人の先生に聞いてみました。



 駄目なんだそうです……。



 理由は、先生は簡単に増やせないからです。



 1クラスの最大数生徒数は法律(条例?)で決まっているので、生徒の人数が増えると、クラスを分割しなくてはいけません。分割すればクラス数が増えるので、先生も余計に必要になります。ところが、入試があるのは2月とか3月とかです。そんな時期には、もうとっくに次の年の予算を組んであります。教師一人雇うのに、非正規雇用でも年間数百万はかかりますから、いきなり先生の数は増やせない。ということなんだそうです。


 情報公開請求とかも、結構簡単にできる時代ですから、全員満点で合否を決めて後で問題になるよりは、最初っから差が付いていた方が、高校とか大学の関係者も楽ですよね。



 中学校に入ると、テストがいきなり難しくなるのはそのためなんです。




 では、難しくするためにはどうするか。


 知識を問う問題なら、教科書では少ししか出てこないような、マイナーな部分を問えば良いでしょう。思考力を問う問題なら、より多くの情報を与えるか、逆に必要最低限まで絞ってやれば良いでしょう。

 このような関門を課してやることによって、生徒が正解へ到達する道を厳しくする。これが普通の教科のテストです。





 ところが国語のテストは違います。特にテストの主要部分を占めるであろう現代文は、問題作成の意図が全く異なると言っても良いでしょう。




 どこが異なるのかを示す前に、“国語”という教科の特殊性を知っておく必要があります。


 それは何かというと、国語以外の教科は、基本、“知らない”ところに新たに知識を積み上げていくのに対し、国語は、基本、“知っている”ことを確認していく教科だからです。




 例えば、“悍ましい”という漢字が読み書きできなかったとしても、“おぞましい”と読むのだとわかれば、なんとなくニュアンスを理解することができる人がほとんどでしょう。

 また、“補助動詞”という言葉を知らない人でも「この料理、食べてみて」と言われて、出てきた料理を、“eat and look”する人はいないでしょう。


 古典については少し毛色が違いますが、漢字であれ、文法であれ、表現技法であれ、国語に関する内容は、全て、日常の言語生活の延長上にあるものなのです。現代文の読解などは、言わずもがなです。




 このように、我々日本人にとって、“国語”とは、“日本語”に他なりません。外国語話者ならともかく、長らく日本語を主言語として生活していた者なら、日本語で書かれた文章が、何について語られているかは、理解できて当然なはずです。




 ところが、テストをすると、満点を取る人はほとんどいません。それどころか、他教科に比べても明らかに満点率は低いように思います。




 これは、なぜでしょうか。




 ここに、“生徒に差をつけるため”という重要な要素が関わってきます。


 国語でも、教わらないと理屈のわからない、漢字やら、文法やら、古典やらでは『勉強した・しない』の差は簡単に付きます。




 問題となるのは、現代文です。


 本来、日本語話者であるならば、わかっているはずの現代文で、大きな差が付くことは、ほとんどないはずです。

 ところが、先生は入試を見据えてテストで、“差を付ける”必要があります。


 では、どうやって、“差を付ける”のでしょうか?





 それは、紛らわしい問題を作って、解答者を引っかけるのです。



 例えば、選択肢の問題で、“正しいものを選びなさい”という発問を続けた後、“正しくない(・・・・・)ものを選びなさい”という問題を出せば、引っかかる人は多いでしょうし、1つを選ぶ問題を続けた後に、“正しいものを全て(・・)選びなさい”という複数回答を求める問題を出しても、不正解者は増えるでしょう。



 つまり、国語のテストは、“どうすれば不正解者を増やせるか”ということを念頭に置いて作られていることになります。これは、理解しているか否か、技能があるか否かを測るために行われる他教科のテストとの大きな違いです。



 逆を返せば、受ける側の立場からすると、他教科のテストは、“どうやって正解するか”を追求すれば良いのに対し、国語のテストは、加えて、“どうすれば不正解しないで済むか”を考える必要があるということになります。






 では、どうしたら得点が伸びるのでしょうか。


 漢字、文法、古典、文学史等、覚えなければわからない物は、ここでは除外します。横着をせずに、覚えるまで勉強してくださいw

 ちなみにちょっとしたコツはあるようです。これも聞いてきましたが、書き出すと長くなるので、あえて、ここでは書きません。


 また、リスニングについても、書きようがないので除外します。




 ここでは、得点の部分を占めるであろう現代文の得点アップのためのコツについて触れます。


 それは、以下の3点です。なお、1、2は事前学習での。3はテスト中のポイントです。


 1 “教科書準拠問題集”を使って勉強する。

 2 学校で買わされた、“課題テスト”や、“教科書ワーク”は、必ず解いておく。

 3 問題文を最後までよく読む。





 まず、1『“教科書準拠問題集”を使って勉強する』です。これは、最初に述べた『国語が、“答えのない教科”と呼ばれる』ことと大いに関連しております。


“答えがない”は、“色々な答えがある”と言い換えることができます。ところが、テスト問題を作るにあたって、模範解答が『色々な答えがあります』で良いでしょうか?


『みんな正解で、みんな良い』なら、何ら問題は無いのですが、前述のとおり、“差を付ける”ためには、このような問題は不適格と言わざるを得ません。


 つまり、『色々な答えが考えられるようなところは、テストに使えない』ということになります。逆を返せば、『答えが1つに絞れるところがテストに使われる』と言っても良いでしょう。



 ここで出てくるのが、“教科書準拠問題集”です。これは、『教科書に載っている文章を基にした問題集』のことです。つまり、この問題集に載っている問題は、教科書の本文を基に作ったということになります。


 と、言うことは、この問題集を見れば、少なくても『答えが1つに絞れるところ』を、事前に発見できることになります。そして、1社だけでなく、数社の問題集をリサーチしておけば、おのずと使われやすいポイントも割り出しやすくなります。


 その部分を重点的に読み込んでおけば、正答率も上がるでしょうし、場合によっては似たような問題が出ることだってあり得ます。これは、国語の先生をしている知人に確認したので、それなりに信憑性しんぴょうせいは高そうです。


 ただし、“教科書準拠問題集”については気を付けてほしいことがあります。現在中学校の国語の教科書は4社が出しているそうですが、それぞれの教科書に載っている文章は、一部を除いて違っています。自分の学校で使っている教科書を確認してから、その教科書に準拠した物を購入ないと、無駄金を使うことになりかねませんので、くれぐれもご注意を!

 また、“教科書ガイド”という参考書とは別物ですので、その点もご注意ください。





 次に、2『学校で買わされた、“課題テスト”や、“教科書ワーク”は、必ず解いておく』です。


 実は、こういった物を使用している場合、全く同じ問題が出題されるケースが大変多いのです。理由は3つあります。


 ①せっかく買ったから使わないとまずい。

 ②購入したので著作権を気にせず問題を使用できる。

 ③生徒がちゃんと学習をしているのか調べたい。


 ①については、集金して買っている以上、使用しないとクレームが入る恐れがあるのだそうです。テストに出題することによって、使っているアリバイになると先ほどの先生は話していました。


 ②については、購入していない教材から、勝手に問題を取ってきて使用したら、著作権法に抵触しますが、購入した物については、自由に使用できるケースが多いらしいです。元から存在する問題を使ってしまえば、問題を作る手間が省けて、テスト作成の省力化につながるとのことでした。


 ③については、事前に解かせたり、課題として出したりしておき、全く同じ問題を出題することで、“きちんと課題を解いているか”、“答えを丸写しして済ませていないか”ということをチェックするのだそうです。


 全く同じ問題が出るなんて、入試なんかではありえません。ところが、上記の理由で、定期テストではそんなこともあり得るのです。内申点アップのためにも、サービス問題はきちんと得点をするようにしたいものです。


 ちなみに、“課題テスト”や“教科書ワーク”には、“教科書準拠問題集”の要素も含まれています。出題されるポイントを予測するという観点からも、重要度は高いと言えます。





 そして、3『問題文を最後までよく読む』です。

 他の2者は、事前学習の取り組み方でしたが、『問題文を最後までよく読む』は、テスト本番でのポイントです。


 ちなみに、ここで出てくる、“問題文”とは、“問”の文のことです。

 例の知人は、「テスト問題が配られたら『小説の文章なんか、放っぽっておいて、まずは、“問”を読め!』と生徒には教えるんですよ」と言っていました。


「『問題文を最後までよく読む』なんて当たり前だろ!」と言われそうですが、これが結構できないものだそうです。


 では、『問題文を最後までよく読む』と、どんな効果があるのかと言いますと、無用なミスが、相当減らせるのだそうです。


 なぜなら、前述のように、国語の先生たちは、生徒を引っかけるために問題を作っていますから、問題文も最後に落とし穴が隠されていることがよくあるそうです。無用なミスを減らすためにも、問題は語尾まできちんと読みましょう。




 なお、ちょっと高度なテクニックですが、選択肢の問題では、慣れてくると、本文を見なくても解答が予想できることもあります。


 参考までに、下の選択肢を選ぶ問題を見てください。

 ※例の知人が作ったテストの問題を提供してもらいました。

  本文は著作権に触れるので、ここでは書けません。



問、作者は幸福についてどのように考えているか。次から選び記号で答えよ。


 ア 幸福は他人には見えるが、自分はに全く見えないものである。

 イ 幸福は他人にも自分にも、はっきりとは見えないものである。

 ウ 幸福は他人には見えないが、自分にはよく見えるものである。

 エ 幸福は他人には必ず見えるが、自分には見えないこともある。

 オ 幸福は他人には見えるが、自分には見えていないこともある。



 これは、わかりやすい部類ですが、皆さんは、どれが正解だと思いますか?











 正解は、“オ”です。



 実は、この中には、明らかに不正解だろうと思われる選択肢が、2つ入っています。



 その選択肢とは、“ア”と“エ”です。



 どこが不正解のポイントかというと、それぞれ『全く』『必ず』という言葉が入っている点です。


 これは「絶対そうだ!」と言い切ることは出来ないのですが、そもそも世の中に『全く』とか『必ず』とか『絶対』とか言い切れることって、ほとんどありませんよね。

 実は、これらの言葉は、内容をひどく限定させてしまう言葉なんです。


 ちなみに、ネックとなっている 『全く』『必ず』という言葉を取り除いてやると、“ア”と“エ”って、“オ”の内容と、ほぼ一緒になりませんか?


 そして、前述のとおり、先生は、差をつけるため、生徒を惑わせて不正解に導こうと選択肢を作っています。“イ”と“ウ”のどちらかが正解では、生徒は惑ってくれません。


 以上のような点から、正解は、“オ”だろうと見当をつけるわけです。




 あまり書くと長くなりますので、この程度でやめておきます。


 私はもう相当な年ですから、せっかく知ったテクニックですが、自分自身で生かす機会はもうなさそうです。

 読者の方でも、そこまで年少の方は多くはないと思いますが、もし活用できる方がいらっしゃいましたら、どうぞご自由にを使いください。


 あ、人に売るのは止めてねw





追伸

 書き上げた後に聞いたのですが、国語の先生の中には、教科書に載っていない題材でテストを作る人もいるそうです。


 例えば「この教材では『段落構成』について学習したから、段落構成の理解が確認できる別な文章で問題を作る!」などという考えをもった方です。


 このような方が教科担当の場合、コツの1は、全く使えませんので、ご注意を!


 ただ、このような方は、多くはいらっしゃいません。もう40を過ぎた、例の知人も、そんな作り方をしている人を「実際ににしたのは、今までに2人だけですよ」と話していましたので、確率は相当低いようです。


 いらっしゃらない理由は、一言で言うと、面倒だからだそうです。


 これを聞いた方々、先生方を責めないでくださいね。


 だって、独自の題材を選んでも、まず、本当にそれで力が測れるか、保証がありませんよね。それに、習っていない漢字がないかチェックして、含まれていたら、ルビを振るなり平仮名に直すなりしてやる必要がありますでしょう。また、教科書教材については、原文がデータとしても存在するらしいですが、独自教材は、場合によっては、全て手打ちで入力してやる必要があります。こんな手間を掛けて得られる物は何か……。

 みなさんだったら、やりたいと思いますか? 少なくても私はやりたくありませんw


 と、いうことで、教科書の文章を、テストに全く使わない先生は、相当なレアケースのようですから、安心してお使いくださいw

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― 新着の感想 ―
[良い点] 国語が一番苦手でした。 その方から私も問題を買いたかったです。 今思えば、もっと国語が好きだったら、また違った人生だったのだろうと思います。 差をつけられたせいだ! 国語のせいだ!
[良い点] 現国って唯一勉強も対策もいらない教科だったんですが、世の中対策が必要な人もおるんですな。 自分を基準にしてると得られない視点なので面白かったです。
[良い点] なかなか面白いものが始まりましたね。 [一言] これ、資格試験なんかを受けると感じます。 例えば私が自動車免許をとったときの問題にこんなものがありました。 ・酒を飲んで運転してはいけないが…
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