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07 シーマとティナ ①

シーマの過去のお話です。 シーマとミコ①の間になります。


この話は、シーマがメインのストーリーとなります。


「シーマ。あたしセリカ着替えさせるから、少し外しててくれない?」


 黒髪の猫耳少女、ミコはそう言って、俺を追い出した。部屋を出て、狭い廊下に立ち止まった。


 2階はここの寝室と、カギがかかった例の拾った少女とやらの部屋がある。ドアには勉強中と書かれた紙が貼ってあるが、きっと、俺が家に来ていることを気にしているのだろう。


 俺はシーマ。だたの冒険者。人間だが、獣人になりたい、仲良くなりたいという願望がある。それには、大きく2つ。


 昔、俺には獣人の友達がいた。彼女はとても可愛くて、愛嬌のある優しい子だった。彼女の家は貧乏だったので、毎日村にこっそり遊びに行っては、街にある本屋の絵本を借りて読み聞かせをしてやった。


 獣人というのは、人間に比べて身体的、知能的に発達が少し遅い。大体3から5歳ほど。だから同年代の人間の子とは仲良くなれない。とくに10代の内は。


 ……まあ、セリカについては例外だ。なぜだかアイツは俺たちよりも長生きしているかのような落ち着きがある。一般的には、獣人ってのは人間より能力が低い。


 ただ、その知能の遅れというのも、一時的なもので、20歳を超えるころには人間とほとんど同じくらいになる。


 だが、人間は醜い。獣人は種として劣っていると、そう言って差別するのだ。中には人身売買、奴隷、性的な目的で獣人を消費する者までいた。本当に腹立たしい。ストレス発散として、泣きわめく獣人をサンドバックにするような奴もいる。弱い者いじめなんてレベルじゃない。


 獣人は臆病だ。好き放題する人間に、誰一人として抵抗できなかった。当時、ガキだった俺以外には。


「もう二度とくんじゃねえ! この薄汚い人間が!」


 俺にとって一番のショックだ。俺は人間に生まれたこと、後悔したさ。それは、それは。


「シーマ……やだ。いっちゃやだ!」

「カザネっ……!」


 俺は彼女がいた村を追放され、唯一の生きる理由だった彼女にも会えなくなり、ただ孤独に、生きていた。


 ◇◇◇


 もう一つは、彼女との再会だ。


 彼女……カザネは、俺の初恋の相手、初めての友達で、獣人の子。銀髪の犬族、ふさふさした尻尾、ステンドグラスのようなキラキラした輝きの鮮やかな赤い瞳。毛先がツンツン跳ねているロングヘア。


 よく笑い、よく泣く。元気なやつだった。



 ある日、ギザルにゴミ出しを頼まれて、近くのゴミ収集場に寄ったんだ。そこに、彼女はボロボロの状態で、ゴミ袋に横たわっていた。


 最悪の再開。



 ……まあ、この街ではよくあることなんだ。薄汚い人間が、使い終わったおもちゃを捨てる。ただそれだけのこと。


俺は彼女と一緒に村へ行ったんだ。


 事情を説明したが、信じてくれなかった。俺がこんなふうにしたんだと、そう言って大人数人で俺をいたぶる。


 理由は簡単。


 ーー俺が、人間だから。


 ◇◇◇


 隣のカギがかかった部屋が空いた。


「カザネ……カザネなのか?」


 部屋から出てきたのは、カザネ……によく似た犬族の少女。急に声を掛けられて混乱している彼女に、俺は頭を下げた。


「お兄ちゃん、お姉ちゃんたちのお友達?」


「ああ、まだ、認めてくれてないけどな」

「そっか。お姉ちゃんたちなら、きっとお友達になってくれるよ! ティナが保証する!」


「ティナって言うんだな。さっきは名前を間違えてごめんな」

「ううん! でも、カザネって誰のこと?」


「ああ、昔の友達なんだけど、お前によく似ている犬族の子だったんだ」

「お兄ちゃん、人間なのに獣人のお友達がいるの!? すごいすごい!」


 目を見開き、興味津々という顔だ。


「ああ、もういないけどな」


 その言葉を聞いて少女は俯いて、スカートをきゅっと握る。


「……ごめんなさい」

「いやいや、いいんだ。そんなに悲しい話じゃない。ごめんな、急に話しかけて、さ」


「えっと、お姉ちゃんたちとお友達になれるように頑張ってね!」


 そう言って、犬族の少女は階段を降りて行った。


「シーマ、終わったわ」


 ミコの声が聞こえる。俺はいつの間にか流していた涙を拭きとり、ドアを開ける。



 ……俺は、こいつらと仲良くなりたい。一緒に暮らしたい。


 ……こいつらとなら、人間と獣人が分かり合える世の中に出来るかもしれない。


 獣人のために、なんだってやるんだ。

読んでくださり、ありがとうございます!


☆☆☆☆☆をいっぱいください! 全部青くするといいことあります。


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