55 お手柄ミコちゃん
「……なるほど、分かったわ!」
「ホントに分かってるのか?」
「つまり、ティナちゃんのお母さんは地下水路に隠れてるってことね!」
ガタッ
「……」
「……」
「あれ? 二人とも? 大丈夫?」
シーマはミコに、ティナちゃんの両親について、私にしたように説明をした。
でも、あんまりよくわかっていないようで、私とシーマは椅子から転げ落ちそうになる。
「あのなぁ……まあいいさ、今からの目標はティナのお母さんに会う事なんだから」
「まあそうね」
「そうでしょ?」
「……あー! もういい。準備できたら教えてくれ……」
わしわしと頭をかきながら自室へ行くシーマ。ミコと喧嘩した後だから、機嫌悪いのかな……?
「セリカ、どうしたの?」
「ミコ、先に準備してて!」
「わ、分かった」
私は起きてすぐ準備していたので、ミコを二階に行かせた後、シーマの部屋をノックする。
「ねぇシーマ、怒ってるの?」
「……」
扉を開けると、昨日持っていた写真を見つめて、なにやら考え事をしているようだった。
「……ああ、ごめん、気づかなかった」
「機嫌悪いみたいだったから、心配になって」
「ああ、ごめん。機嫌が悪いというか、ティナに両親のことなんて説明しようかなって……」
シーマは、ティナちゃんのこと大好きなんだなあ……。少しでも傷つかない嘘がつけるならと、あれこれ考えていたのだろう。
きっと、あんまり寝れていなかったんだな……。
「ごめんね、昨日、私がちゃんと上で寝ていれば……」
「別にセリカとミコは悪くないさ……それに」
「それに?」
「いやっ、なんでもない……」
部屋の外からミコの声が聞こえる。きっと準備できたのだろう。
「そろそろ行こうか」
「えっ、うん……」
私とシーマは部屋を出て、一足先に靴を履いていたミコと一緒に家を出る。
「セリカ、もし、もしね? 仮にお母さんが貴族にハメられただけの良い人だったとしたら……ティナちゃんをどうする?」
「返せって言われたら返すし、要らないって言われたら貰う」
「セリカ……」
こればかりは、会ってみないとわかんないけど、出来ればこのままがいい。
せっかく出来た新しい家族が、一度捨てた母親の元へ離れていくなんて嫌だ。
「たしか、住宅街を降りて南西の地下水路だったよね」
「ああ、この階段を降りて……こっち、あ、こっちだ」
「えっ! ちょっと待ってよ、みんな!」
「ごめん、わざとじゃないんだ」
「ミコが先に行くからでしょ? 案内役の後ろについてなさいっ」
「はぁ~い」
あちこちと指さすシーマ。それに振り回されるミコ。
◇◇◇
「ついたぞ、ここの真下が恐らく、フィリアがいるだろう廃棄された地下水路だ」
「草だらけの空き地じゃない」
「ホント、この下に隠れてるとは思えない……」
私たちは、自宅がある所から少し階段を降りた、平な土地の住宅街にある小さな広場に来ていた。
塀に囲まれた草むらに、倒れた土管の山と、大きな木が生えていて、なんだかドラ〇もんに出てきそう。
「広場のどこかに隠し通路につながる穴がないか探してみてくれ」
「りょーかい!」
「えっと、人が入れるくらいの穴が隠せそうな場所……」
私とシーマは、手分けして草が生い茂っている、隠し通路がありそうな場所を探す。
ミコは、広場に土管が置いてあるのが謎だといって、土管に潜ったっきり出てこなかった。
「シーマ、あった?」
「ないな……ミコはどこ行ったんだ?」
「そこ」
私はミコが入った土管の中を指さす。
「あのなぁ……こんなところから人が入るわけ……」
「シーマ? シーマ、どうかした?」
「まさか、な……はは、なんだこれ!?」
シーマが土管のふたをあけて、中を見ると、急に驚きだす。
何かと思い、私も近づいてみると、ミコが入ったはずの土管は、真っ暗で先が見えなかった。
反対側に回っても、ただの土管だ……。どういうこと?
「別空間に繋がってるとでもいうのか? 一体、誰がこんな高位の魔法を……」
転移系の魔法……聞いただけで強そうだ! きっと、普通の人じゃ使えないモノだろう。
シーマの驚きようを見て、そう思う。
「ミコがその中に入ったっきり、戻ってこないってことは……」
「もしかしたら、片道切符なのかもしれないな。試しに、クリエイターモードで確認してみてくれ」
「分かった! スキル、クリエイターモード」
……ミコ、ミコ……。
クリエイターモード専用マップで、ミコを検索する……いた。この土管の真下。地下水路の中だ!
「ミコはこの真下にいるわ……フィリアさんと一緒に」
「よし……いくぞ」
「うんっ」
ズムムという、風船に手を押し込むような、反発する感覚。それを乗り越えると、つるっと殻から飛び出したゆで卵のように、私とシーマは地下水路に放り出された。
「あだっ!」
「うへっ!」
「シーマ! セリカ!」
いてて……。
目を開けると、ミコの隣に居たのは、銀髪赤目の女性。ティナちゃんに似てなくもないけど、なんだか大人っぽい印象。
ここに籠ってたからなのか、背は170センチほどだけど、とても細っこくて、腰あたりまで伸びている髪の毛がボサボサと跳ねていた。
「あなたが、フィリアさん……?」
「ひっ! あなたたち、誰!? もう私をいじめないでっ!!!」
私たち……というよりは、私たちの後ろ、虚空を見つめて、怯えているフィリアさん。
「シーマ……」
「ああ、幻覚だな。俺たちが、別の何かに見えているんだろう。……こりゃ、事件だな」
シーマは怯えているフィリアさんの前に行き、フィリアさんのおでこに手をかざす。
「安心しろ、俺たちは敵じゃない。本当の姿を見てくれ」
そう言って、なにかの魔法を発動すると、彼女の瞳には、失われていた光が取り戻される。
「ああ……あ……わ、私……!」
「気が付いたようですね、フィリアさん」
「ああ……あああっ!!」
急に泣き出すフィリアさん。シーマは彼女を幻惑魔法で眠らせて、担ぎあげる。
「一旦、家に戻ろう。話はそれからだ」
「あたしも出たい! ……ここ、息苦しいし、ジメジメしてるし、頭からキノコ生えそう!」
「頭からキノコって……でもどうやってでるの?」
「あ……」
シーマはフィリアさんをかついだまま、空いてる右手で顎を触る。
「うーむ、どうしたものか……てか、その人は何日もここに居たわけだし、出口が無いと食料とか、確保できないよな?」
「うん……出口、あると思うんだけど……」
「セリカ、シーマ、見て!」
「ん?」
「え?」
ミコが指さす所には、小さな9個のボタンがあった。




