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05 ゴブリン倒すよ~!

バトル要素多めにしてますんで、閲覧注意で。


 フリャの北側、森に囲まれた広いバザール会場には、私たち6人だけが待機することになった。街の住人はたった6人でゴブリンの群れを倒しに行く私たちを見送る。


 ゴブリンが警戒しないように、必要最低限の人数で戦うことになった。みんな木々の後ろに隠れて、日付が変わるとともに山から降りてくるゴブリンを待つ。


 私はバザール会場の右下に隠れている。隣には、ミコが。対角線上の向こう側には、アシメさんとレイラさんが。ギザルさんとシーマさんは会場入り口の看板に隠れている。


 バザール会場には既に出店準備のために貸し出しのテントや机、場合によっては商品が並べられているところもある。私たちの作戦はこうだ。


 会場内の物品を漁り終わり、重い荷物を持った状態のゴブリンたちを奇襲する。数が10以内なら、すぐに倒しきるが、30ほどの群れならボスがいる可能性が高い。その場合、ある程度のゴブリンを殺さず痛めつけて、帰還させる。


 ボスは他の個体よりも知能が高い。倒せない相手だと思わせられれば、私たちの勝利だ。そして、もうこの会場で盗みを働くことはないだろう。



 深夜0時。来た。



 北側の森の深いところから、ゴブリンの群れがコソコソと歩いてきた。荷物をたくさん持つためだろうか、武器ではなく、大きな風呂敷のようなものを持っている。


 そして、会場内の仮設テントや布が掛かった商品棚に手を出す。数は10ほど。これなら6人いれば勝てる。


 私たちはゴブリンの風呂敷が一杯になるのを見て、合図を送る。


「ミコ、いくよ」

「うん、セリカ」


 私は弓を空に向けて構え、矢を放った。



 放たれた矢は会場の真ん中あたりに突き刺さり、ゴブリンの注意をひいた。その瞬間、私たちは会場に飛び出して、矢に注意を向けていたゴブリンたちを一気に襲う。


 ゴブリンはレベル20だったが、武器を持っていなかったし、パニック状態になっていたので、振り回すこぶしをよけつつ、攻撃を入れる。少し時間はかかったが、私たちでも無傷で倒すことができた。


「やったぁ! まずは1匹!」

「セリカ、あれ……」

「えっ?」


 ミコが指さす方には、シーマさんとギザルさんが。なんとゴブリンの死体の山ができていたのだ。


 私たちと同じく、いや、ゴブリンをそれぞれ一体ずつ倒したアシメさんとレイラさん。アシメさんがヒューと口笛を吹いてシーマさんの元へ行く。私たちも続いて4人の元へ駆け寄る


「やるじゃねぇか?お前」

「へへっ、どうも」


 褒められ慣れていないのか、少し照れ笑いするシーマさん。アシメさんが言うに、ギザルさんが挑発スキルで敵をあつめ、シーマさんが一気に幻惑魔法を使って動きを止め、すべて一撃で仕留めたという。


 この世界では、魔法を使うには長い修練と知識が必要だ。ただの属性魔法でさえ、冒険者で使えるのは半数ほどなのに、ダメージを与えるのではなく、敵の状態を操る幻惑魔法なんて、使える人はほとんどいない、エクストラスキルのようなものだ。


 シーマさんは19歳と言っていた。見た目も確かに若い。そんな人が、こんなに凄いなんて……。


「っ!? お前ら、下がれ!!」


 何かを察知して大声で指示するギザルさん。私たちは油断して反応が遅れる。


「んぎゃ!」

「へぶっ!」


 ギザルさんが盾でアシメさんを吹っ飛ばし、飛ばされたアシメさんに私たちも飛ばされた。


 目を開けると、ギザルさんの目の前には3メートルほどのボスゴブリンがいた。 ……ミコの嫌な予感が、当たってしまったようだ。


 ギザルさんは咄嗟にボスの攻撃から私たちを守ってくれたが、ボスの槍が盾を貫通し、刃先が腹部に達していた。


「ぐっ、お前ら……逃げろ……」

「ギザルさああああん!」


 血を吐きながら槍を抜かすまいと耐え続けるギザルさん。私は叫び、ギザルさんの元へ行こうとしたが、シーマさんにお腹を捕まれ、片手で抱えられた。


「ひゃ! ちょっとシーマさん! ギザルさんが!」

「馬鹿! お前まで死ぬことになるぞ!」


 私とミコを抱え、会場から逃げ出すシーマさん。少し先にはアシメさんとレイラさんもいた。この人たちはギザルさんを見捨てる気なんだ。


「シーマさん! ギザルさんを助けなきゃ!」

「あいつはレベル50のボスモンスターだ、5人じゃ倒せない!」


 嫌だ。私たちのことを人として見てくれていた仲間を見殺しになんてできない! 私たちを守ってくれたのに、死んじゃうなんて嫌だっ!


 私はシーマさんの腕を引っ搔いて解き、地面に落ちた。痛い。けど、ギザルさんはもっと痛いはずだ。


「おい! セリカ! 戻れっ!」

「セリカあああああっ!」


 後ろで呼び止めようと叫ぶシーマさんとミコを無視して、会場に戻る。



 ボスはギザルさんの頭をつかんで持ち上げる。そして腹部に殴りを入れる。大声で叫ぶギザルさん。私は焦る気持ちを抑え、ボスの死角、会場内のテーブルの後ろに隠れた。


「はあっ、はあっ、落ち着け私」


 ……必ず、助けるんだ!


 ◇◇◇


 弓を構え、照準アシスト、オートエイム、強弓のスキルを発動し、ボスの右目めがけて矢を放つ。


 当たった! 右目を抑え、叫び散らかすボスゴブリン。でもギザルさんの元から離れない。


 反撃するボスの攻撃をよけ、また死角になるテントや机に隠れては、敵に矢を放ち、体力を削る。


「片目だけじゃダメ。あと左目も撃たないと……!」


 弓を構え、左目に照準を合わせるが、私の存在を徹底マークしている状態では避けられてしまう。これなら、確実に体力を削れる胴体部分に撃った方がいい。今は1対1のデスマッチ。私はこいつに一撃でも喰らったらおしまいなのだ。


「まずは、ギザルさんのもとから離さないと!」


 私は会場の隅におびき寄せるが、ボスはギザルさんが目的だと分かっているかのように、なかなかギザルさんの元から離れてくれない。ボスがテーブルを持ち上げ、私の居る方向に投げてきた。


「まずい、避けないと!」


 油断した。飛んできた机を避けた先には、ボスが居た。さっきからずっと、攻撃されたら左、攻撃されたら左と、同じ方向にしか避けていなかった。もちろん、壊れていない遮蔽物に隠れるためだが。そのせいか、ボスは私の避ける方向に先回りしていた。


「っ!?」


 攻撃されると思い、目を閉じたが、急にボスが叫び、左目を抑えて悶え始めた。


「桃色! お前ほんと無茶するよなぁ、一つ貸しだ。さっさと倒すぞ」

「アシメさん!」



 アシメさんが戻ってきて、ボスの左目を攻撃してくれたようだ! 両目を失った今、ボスの索敵は鼻だけが頼りになる。だが、ゴブリンはそこまで鼻がいいわけじゃない。



 ゴブリンもなりふり構わず、ギザルさんを放ってアシメさんの居た方向に走り出す。アシメさんの方には、もう人ひとり隠れられる遮蔽物はない。アシメさんも弓使いなので、攻撃を跳ね返すこともできない。その時。


 シーマさんとミコがアシメさんの前に飛び込み、ボスの槍をはじき返した。


「セリカあっ!」

「無茶しやがって! 大丈夫か!?」


「シーマさん! ミコ!」


 逃げていたはずの2人が、私の後を追うように来てくれた。私は3人の元へ駆け寄り、状況を説明する。


「みんな、ボスの両目は使えない。音と匂いを頼りに襲い掛かってくるけど、攻撃はかなり大雑把で、会場が危ない!」


「つまり、あまり走り回らないほうがいいってことだな? へへっ、上等だ」


 なぜかニヤけ顔のシーマさん。その額には汗が。


「あ、ありがとよ……っと」


 ボスの接近に怯んで尻もちをついていたアシメさんがシーマさんにお礼を言う。アシメさんはシーマさんが差し出した手を取り、立ち上がる。


 ボスの怒りが最高潮に達した。ものすごい雄たけびと鼻息だ。


「桃色っ! そのおっさんを頼んだ! こいつは俺たちに任せろ!」

「セリカ、頼んだわ!」

「うんっ!」


 私はボスの離れたギザルさんの元へと駆ける。会場の入り口には、レイラさんらしき人が、きっとみんなと戦おうと駆けつけてきてくれたんだ。


「はあ、はあ! っ、ギザルさん!」

「なんだ……お前……助けに来たのか?」


 目に映るのは、血だらけのお腹を押さえてかすかに目を開けたギザルさんだった。激痛のはずなのに、私を見て起き上がろうとする。でもやっぱり動けなさそうだ。


「大丈夫、大丈夫ですっ!」


 私は腰につけているポーチの中の包帯を取り出し、傷口をふさぐ。


「ありがとよ……で、あのボスは……?」

「今、3人、多分今頃レイラさんも駆けつけて4人で戦っています。ボスも視力を失っているので、あの4人ならきっと倒せるはずです。信じましょう」


「ああ、そうだな……ぐっ!」

「あっ、ごめんなさい!」


 ギザルさんを持ち上げようと体を起こそうとすると、痛がるギザルさん。でもこのままじゃ危険だ。


「おい、お前……セリカっていったか」

「は、はいっ!」


「すまねぇ、俺が守ってやるべきなのに……こんな恥さらしをっ!!」


 ギザルさんは動けない体をガタガタと震わせ、拳を地面にたたきつける。


「すまねえ、俺はいい。あいつらを頼む。ここまでしてくれればあとは自力で隅まで移動する」

「……信じますっ!」


 私は力なく、でも少しずつ隅にズルズルと移動するギザルさんを見て、振り向き、4人の元へ向かう。


「はいっ!」


 ボスの体力は、のこり10%。だが、目の前に見えたのは、倒れている3人と、腕を抑えながら戦うシーマさんの姿だった。


 アシメさんは痛そうに腕を抑えている。骨折しているのかも。

 レイラさんは気絶している。きっとスキルの使い過ぎだ。

 ミコは・・・衝撃波でも喰らって気絶したんだろうか。外傷は見当たらないが、気絶してしまっている。 ……無理もない。私とミコはレベル15。圧倒的な戦力差だ。むしろ、私が生きてるのが不思議なくらい。


「みんなあっ!」


 私は叫び、全力で駆けつける。気づいたシーマさんが、ボスに幻惑魔法を使い、動きを止め、こっちに駆け寄る。


「セリカっ! ギザルはどうだ?」

「手当して、意識もはっきりしてる。大丈夫!」

「そうか、よくやった! 敵の体力はあと少し、動きも鈍い。一気に片付けるぞ!」

「はいっ!」


 幻惑魔法の耐性がつき、数秒で解くボス。やはりボス級の魔物は適応能力が高い。同じ手は通じない。


 もちろん、遮蔽物もすべて壊してある。隠れられない!


「俺が引き付ける! セリカは敵の弱点、頭と胸を狙え!」

「わかりまし……たっ!」


 シーマさんは片手でボスの攻撃をはじくが、槍を持っていない左手でシーマさんを攻撃する。私は急いで照準を攻撃する腕に向け、矢を放った。


 その矢は0,05%の確率で発動する、会心の一撃!!


 細く小さな矢は光を放ち、ボスの左腕を跡形もなく吹き飛ばした。


「会心の……一撃……!」


 ボスは残り体力1%。私はフラフラと倒れそうになるシーマさんを支える。


「会心の一撃か……助かった」

「あとは、任せてください」


 ボスは最後の力を振り絞ってこちらに突進してくる。私は弓を構え、最後の一撃を放つ。


 森中に響き渡る断末魔と共に、ボスゴブリンは倒れ、灰になった。


「はあっ、はあっ……終わった……?」


 ボスの反応は消え、地面にへたり込む私の目の前にはリザルト画面が映し出されていた。


 レベル……18!?


 ボスの与ダメージ割合ボーナスと、ラストアタックボーナスで、経験値が一人だけアホみたいに入った。


 私はフラッと意識と飛ばしそうになったが、まだ、やるべきことがある!


 私とシーマさんはた折れている3人をギザルさんの近くまで運び、医者を呼んで治療を頼んだ。


 その後、事情を聞いたギルド関係者を話をして、後ほどギルド本部に来るよう言われた。詳しい内容や、追加報酬の話がしたいそうだ。


 シーマさんが腕を抑えながら、フラフラとこちらに歩く。


「セリカ、お前の勇気、見せてもらった。お前のおかげで、ギザル、俺の相棒は命を救われた。それに……俺も。なにか、礼がしたい」


 シーマさんが少し笑顔になる。私は安心して、スッと意識が飛んだ。


「っ! おい!」


 ◇◇◇


 ……ううん……はっ!?


 私は目を覚ました。目の前には、ミコがいた。


「セリカっ! ……目を、覚ましたのね!?」


読んでくださり、ありがとうございます。

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