50 ミコは恐れ知らず? どうやら逆でした
「ついに来ちゃったわね……」
私たちは作戦会議、そして戦いの準備を終え、ダンジョンの入り口に来ていた。
「もうボス部屋までは攻略済みだし、ボスを倒すだけだけよ」
ニコッとするレイラさん。でも、正直不安だ。シーマが手を叩き、注目させる。
「さて、作戦を振り返ろう」
シーマとミコ、レイラさん、キッカさん、ギザルさんが前衛、私とアシメさんが後ろから弓でアシストをする。
弓使いの私たちがボスの視界を奪い、ギザルさんがボスの攻撃を受ける。その横から他の前衛が総攻撃。人数が多いからこそできるゴリ押しだ。
前衛のみんなは、事前にレイラさんから攻撃パターンを教えてもらっている。私とアシメさんは知らないけど、ボスは遠距離の攻撃手段を持っていないみたい。
「よし、こないだはギリギリの所まで行けたんだ。今回は行ける!」
「おー!」
◇◇◇
「ついに来たわね……ボス」
「セリカ、なんか怖い……」
「うん……」
私とミコは抱き合ってガタガタ震えているというのに、他のみんなはズカズカとボス部屋の扉まで歩いていく。
「二人とも、大丈夫? ……ダンジョン、初めてだもんね」
「キッカさん、ありがとうございます」
私たちを両手で撫でるキッカさん。ちょっと安心したかも。
ボス部屋の扉が開き、私たちは部屋の中に固まって入る。
「あれが、闇のダンジョンボス……」
私たちに気づき、咆哮するボス。剣を持った二足歩行のトカゲ型魔物。でも、図体がとても大きい。……うーん、大体ギザルさんが2人分かな?
そして、ギザルさんが前にでた瞬間、ボスが襲い掛かってきた。
「始まるぞ! みんな構えろ!」
ギザルさんがそう言って、盾を構える。ボスの攻撃を弾き、横に飛んだ前衛のみんながボスの背後を取り、剣でダメージを与える。
怯んだタイミングで、私たちが同時にボスの両目を矢で貫く。
叫ぶボスの剣を抑え、みんなはめった刺しにする。
なんか、ボッコボコでボスが可哀想……。
視界を奪うだけで、こんなにやりやすくなるのか……イージーモードってこんなに簡単にボスを倒せるレベルで大丈夫なんですか……?
私とアシメさんは弓を降ろして、ただ立ち尽くしていた。
意外にも、あっという間に倒してしまった私たち。……というか、前衛の脳筋戦士たち。
「アシメさん、確認なんですけど、このボス強かったんですよね……?」
「あ、ああ……ミコとセリカが居るだけでこんなに違うか……」
ボスが消滅し、死体の後ろにある扉が開く。
「あの先に伝説の魔剣があるのね! みんな急ごう!」
「おい! ミコ、先に行くな……罠だったらどうするんだ」
「大丈夫だって! これがボスなんでしょ……って、きゃあっ!」
「ミコっ!!!」
私は考えるよりも先に身体が動いていた。ミコが吸われて閉じ始めていた扉に食い込み、ミコと一緒にダンジョンの最下層? 真っ暗でじめじめしたところに落ちてしまった。
「いっててて……ここどこ……ミコ、ミコ?」
「いたあぁい……セリカ、どこお?」
真っ暗すぎてミコの姿が見えない。
「スキル、クリエイターモード」
赤外線カメラのような黒緑の視界。目の前にはトンネルのような、洞窟のような道が続いていた。
後ろに赤い影……ミコだ。
私は手を掴む。クリエイターモード中の目の光を反射するミコの顔は、涙を浮かべていた。
「セリカ……怖いよおー!」
そう言って、私の腕を掴んで抱きついてくる。
「さて、どうしたものか……」
「セリカ、電話石っ」
私は意外にも、ミコよりも冷静じゃなかったみたい。ミコに言われて、電話石を掴み、シーマと連絡を試みる。
「……だめ、繋がらないわ」
「そっそんなー!」
うわーんと泣き出すミコ。確かに、これは怖い。
「セリカ、ごめんね、ごめん……!」
「大丈夫、道はあるから、付いてきて」
「この先に行くって言うの!? 助けを待とうよー!」
このままここに居ても仕方ない。この自然洞窟みたいな所からダンジョンに戻れれば、松明などの灯りがある。それまでの辛抱だ。
「ほら、いくよ、ミコ?」
「ぐすっ、セリカ、ちゃんと手繋いで……っ」
しょうがないなぁ……暗い所がこんなに嫌いだったなんて……。
怖がるミコのペースに合わせてゆっくりと進む。クリエイターモードで光っている目が、懐中電灯の代わりになって若干目の前が明るい。
「ねぇ、壁に何か書いてある」
「えっ? そ、それ、文字なの……?」
文字じゃないの? と思ってよーく見てみると、象形文字のような、明らかに時代の違う者が描いたような絵だった。
「耳としっぽが付いた人影に、首輪を付けて引きずっている、目以外が真っ黒に塗りつぶされているトカゲの図……?」
「なにそれ、怖い! セリカあっ!」
真っ暗闇で、物騒な絵を見た私たちは恐怖の限界に達し、立ち上がれなくなった。
「この先に行っても、絶対いいことないよ、セリカっ!」
「私も、なんだかそんな気がしてきた……」
私たちは、このままここで干からびちゃうの?
誰か助けて……。
「セリカ……あれ、あれっ」
ぐいぐいと服を引っ張り、壁の方を指さすミコ。その先には、小さな扉があった。
「なにあれ、鍵かかってない……」
扉を少し開けて中を覗く。すると中は、ダンジョンと同じ材質の壁が張られた、狭い通路だった。
壁にはダンジョン同様、松明が刺されていて、道が明るく照らされている。
「なんとか、ダンジョンの中に戻ってこれたようね……あの罠は、どういう目的だったの……?」
それとも、この道も罠なのだろうか……。
「ミコ、しっかり掴まって」
「うっうん」
私は腕に<ミコ>を装備して、ダンジョンに似た狭い通路を歩く。
通路脇にあったのは、白い骸骨だった。
「きゃぷっ」
「シッ」
叫びそうになるミコの口を押え、骸骨の手に挟まっている紙切れを取り、広げる。
「これ、上に出る方法だ……なんでこの人は、ここで息絶えたんだろう……」
骸骨には、キャラデータが表示されない。そもそも、これは死骸なのか?
なにか、ゲームイベント用に用意されたオブジェクトじゃないのか?
このダンジョン自体が、私が転移した時に一緒に追加されたものだとしたら、これは攻略のヒントで、この骸骨はただのガイドだ。
そう思ったら、案外このダンジョンも怖くなくなったかも。
急にスタスタ歩き始める私を見て、ミコが怖がる。
「セリカ……何かに取り付かれたの?」
「えっ、いや、これさえあれば出口に出られるかなって……」
この世界では、ボス以外の敵はレベル20が最高だ。
私は19、ミコは16なので、一緒に頑張れば倒せないこともない。
「しっかり、掴まっててね……」
「うん……」
一度に大量に湧いて出てこないことを願いつつ、通路を進んでいく。




