49 ダンジョンの前に食べすぎ注意
「いいぞ、その調子だ!」
「ちょ、っと、ミコ、手加減してっ!」
剣を修行し始めて3日。ギザルさんとシーマさんに剣の使い方を教えてもらいながら、ひたすらに街を出てすぐの所にいる魔物を倒し、剣の熟練度を上げ続ける。
ティナちゃんは学校、シーマは旧友に会うと言って、キネフのスラムへと向かっていった。
今日、初めて対人で剣の修行をすることになり、木刀を持って、ミコと手合わせする。
ミコは加減を知らない。私はビュンビュンと当たったら死にそうな勢いの剣を避ける。
「セリカ、あたし、強いっ!?」
「うん、うんっ! ちょ、タンマっ!!」
剣を止めて、こちらを見るミコ。
「ミコ、結構やるじゃねーか」
ギザルさんが広場の隅で拍手をしていた。
「だが、練習相手にはならんな……」
「えっ!? 弱いってこと?」
「あれじゃ、セリカが練習相手みたいだぞ……ミコ、そこで見ててくれ」
少し悲しそうなミコ。ギザルさんがミコの隣まで歩いてくる。
「次は俺が相手だ。盾でガードするから、隙をついて俺にダメージを与えてみろ」
「えへぇ……? それも大変じゃないの……」
「別に、スキルを使ってくれてもいいんだぞ……そろそろ、剣術スキルも何か習得できるんじゃないのか?」
「たしかに、存在を忘れていたわ」
ギザルさんに言われてスキルボードを開く。……うーん、切れ味増加とジャストカウンターしかない……。
「ん、ジャストカウンターか。難しいスキルだな……」
剣に使えそうなエクストラスキルは一つも増えていなかった。……やっぱり、無理なんじゃないの……。
剣術に使えるスキル……?
「ギザルさん、アサシンとクリエイターモードを使ってもいいですか?」
「ん? ああ、お前の使えるスキルならなんでもいいぞ……?」
「スキル、クリエイターモード」
視界の情報量が少なくなる。背景は緑がかって、ギザルさんと、奥にいるミコとキッカさんが赤く表示される。これで攻撃してきてもちゃんと動きが見れるだろう。
「スキル、アサシン」
「なにっ!? これがアサシンか……確かに、ステルスとは違うな……。まるで見えないぞ」
キョロキョロと私を探すギザルさん。ミコたちは私のことが見えているので、一人だけ動揺しているギザルさんを見てニヤニヤしている。
「くそっ、音も聞こえねぇ! どこだ!?」
パキッ
「ひゃあ!」
足元がほぼ緑一色になっていたせいか、小枝を踏んでしまい、ギザルさんに気づかれる。いきなり振ってきた剣を避けて、もう一度息を止める。だが、ギザルさんは私の位置から逃げる方向を予測し、的確な攻撃をしてくる。
でも、隙だらけだ!
このチートスキルがあれば、ギザルさんにも勝てる!
そう思い、ギザルさんの背後を取り、木刀の束頭で突こうとする。
「セリカ、残念だったな!」
「えっ!? わあっ!」
私が持っていた木刀、腕ごとひょいっと持ち上げられ、ギザルさんにお姫様だっこをされる。
「セリカあっ!?」
「キャー」
後ろで騒ぐ二人。ギザルさんはニコっとして、降ろす。
「いい動きだ、セリカ……だが、お前は動くたびに石鹸の匂いがする。その、近くに来ると特にな……」
「なんじゃそりゃー!」
まさかの、体臭を気にしすぎて、いい香りで匂いをかき消す系石鹸を使っていたせいで、背後に回ったことがバレてしまったようだ。
「今日は終わりにしよう。飯だ、飯!」
お腹をポンポンと叩くギザルさん。私たちは4人でご飯を食べに行った。ギザルさんはチューカが好きらしく、チャハーンを3人前注文し、ガツガツと食べ始める。
「ギザル、もっと上品に食べなさいよ」
「んめえ~っ!」
キッカさん、なんだかギザルさんと距離が近くなった?
カフェに居た時からだろうか、いつの間にか呼び捨てする関係だったとは……。まあ、ギザルさん、とても話しやすいしね!
「ねえセリカ、そのシュマーイ、ちょっと頂戴?」
「欲張りミコさんめ、代わりにそのギョザーン頂戴」
箸でギョザーン……餃子を掴もうとすると、ミコはお皿を自分の方に引く。そして、拍子抜けしている私のお皿に乗っているショローンポゥ……小籠包をに向かってすさまじいスピードで箸を運ぶ。
「あっ、ずるーい!」
「もぐもぐ……うんま~いぃ」
頬っぺたを抑えて、美味しそうな顔をするミコ。
「……ふう、しょうがないんだから……」
「セリカ……お前、ミコに甘すぎないか?」
「私も今そう思ったわ、ギザル……」
私とミコのくだらないやり取りを聞いていた向かいに座る二人は、呆れた顔をしてから、フンっと鼻でため息をつく。
「ミコ、俺のチャハーンも食うか?」
「いいの? ラッキー!」
一口では食べきれない量をスプーンですくい、自分のお皿に一旦置いてから、少しずつ食べていく。ミコは外食になると、つい食べすぎちゃう系女子だ。
……私も、前世ではそうだったから、なんとなく気持ちが分かる。
「お待たせしました。こちらワンニャンドーフでございます」
「わぁー!」
店員さんが持ってきたのは、ワンニャンドーフ……杏仁豆腐。注文したのはもちろん、ミコだった。
……いつもより今日はちょっと食べすぎじゃない!?
◇◇◇
「ぐふっ、もうダメ……」
結局、お腹パンパンになって、私にしがみ付きながら街を歩くミコ。
キッカさんが心配して、ミコの身体を支える。
「少し、休憩しましょうか」
◇◇◇
ベンチに横になり、顔にタオルを掛けるミコ。
「だから言ったのに……」
「だってぇ……折角外食いくなら、メニュー全部食べたいじゃない……」
「それは、そうだけど……」
予定では今日、シーマが帰ってくるので、私たちは今日の夜か、明日の朝にダンジョンに潜る。
ティナちゃんのことだが、あらかじめマスターさんに頼んで預かってもらうことになっている。
「おー、おまえらー!」
遠くから手を振り、小走りで近づいてくるシーマが。
「シーマ! おかえりー!」
「随分と長かったな、なにか収穫でも?」
「ロンの所に会いに行っていたんだ。……ギザルの事、心配していたぞ。たまには会ってやれよ?」
「ああ、そうだなあ……」
そう言ってツルツルの頭をぺちぺちと叩くギザルさん。
シーマがミコをおんぶして、私たちはカフェに戻る。今頃、レイラさんとアシメさんも居るころだろう。
「いらっしゃい……全員そろったようだな」
「相変わらず、人が居ないな……」
「お姉ちゃん! お兄ちゃん! ギザルさんと、キッカさんも、おかえりなさい!」
みんなの帰りを待っていたのは、学校から帰ってきたティナちゃんだった。
レイラさんは、椅子に座りながらこちらを向き、口を開く。
「さて、作戦会議と行きましょうかね……」
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一旦消そうと思ったんですが、ちょっとだけ修正して再アップしました。すみません。




