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04 戦いの前に


「ティナちゃん、ただいまー!」

「おかえりなさ~い!」


 トタタと駆け寄ってくるティナちゃん。ミコは頭を撫でて、ほっぺにキスをして抱き上げる。


「ふぁあ!? ミコお姉ちゃん!?」

「今日一日、怖い人ばっかりで疲れちゃったわ。やっぱり街の人は良い人達ばかりではないわね」


 ティナちゃんを降ろし、ため息をつくミコ。



「まあでも、私たちのこと獣人と分かってて話してくれてたし、それにシーマさん……ワカメみたいなマントを着た人は獣人が好きっていってたよ? なんだか街の人全員が獣人嫌いって思ってたけど、少し希望が見えたわ」


「ティナちゃん、私たち、今日の夜に魔物退治にいくことになったの。お留守番、また頼んでもいいかしら?」

「うん……気を付けてね?」


 スカートをきゅっと握り、涙目になるティナちゃん。



「絶対、絶対に無理しないでね? 約束よ?」

「うん、必ず帰ってくるわ。安心して待ってて、ティナちゃん」


 私は屈んでティナちゃんを抱きしめ、ほっぺにキスをする。


「ひゃあ! セリカお姉ちゃんまで!」

「大好きだよ、ティナちゃん」



 顔を赤くするティナちゃんを見て安心し、立ち上がる。


「さて、ご飯にしましょ! ミコは先にティナちゃんとお風呂はいってて」

「えー?ご飯の後戦いに行くんだよ?」


「ティナちゃんのために入ってあげてほしいんだけど」

「は~い」


 やる気ない返事をして、ティナちゃんと一緒に浴室へ向かうミコ。


 っと、今日は何作ろっかな~


 上着を脱ぎ、エプロンを着る。 ……向こうの世界では、エプロンなんか着たことなかったな。


 風呂場から、楽しそうな声と、たまにミコの叫び声が聞こえる。


 なにしてんだか……よし、完成!


 

 私はテーブルの上に穀物と野菜が入ったスープと、こんがり焼いたパンに肉を挟んだものを人数分並べる。


 風呂場の扉が開き、ティナちゃんがテーブルの方を覗く。


「おいしそーな匂いがする!」

「ちょっとティナちゃん! ちゃんと体拭いてからでなさい!」

「ごめんなさーい! だって、美味しそうな匂いがしたんだもん!」

「はいはい、だったら早く着替えてご飯たべようね~?」


 ◇◇◇


「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさま~! 今日のスープ、おいしかったわ、セリカ」

「どういたしまして! じゃあ私はお風呂入るから、ミコはティナちゃんを寝かせておいて」

「りょーかい!」


 私は食器を片付け、浴室へ入り、服を脱いだあと、ふと思い出してスキルボードを見る。


 そういえば、レベル上がった時のスキルポイント振ってなかった。どれどれ……ん?


 エクストラスキルの欄に、照準アシストという名前のスキルが解放されていることに気が付いた。今取得してる一定時間照準を敵に合わせてくれるスキルと何が違うんだろう。試しに取ってみよう。


 えっ、これスキルポイント5も使うの!? 一気にすっからかんになっちゃった。


 効果発動条件は、弓を構えること。簡単じゃん! 特定条件型のスキルね。


 私は裸のままこっそり浴室を出て、玄関にある弓と矢を持ちだし、浴室に戻る。


「よっと、ん~!」


 弓を構えると、視界が若干緑がかる。クリエイターモードと似たような感じだ。そして視線の先、おそらく弓を放った後の着弾予想地点だろう場所に赤い点が表示されている。


 それと、私からその赤い点までの距離、着弾予想時間、矢を引くと、予想ダメージやチャージ限界値なども表示される。


 これは、ものすごいスキルだ……!


 全裸で弓を構えたまま風呂場で新しいスキルに感動していると、浴室の扉が開く。


「セリカ、なにしてんの」


 そこには、ミコが居た。


「え、えっと、その……あはっ!」


 私は笑うしかなかった。こんな恥ずかしい所を見られたら、もう笑うしかない。


 ◇◇◇


 私はお風呂を上がり、着替えた後、ティナちゃんを寝かせたあとのミコがホットミルクを作ってくれた。


「はい、どうぞ」

「ありがと、ミコ。いただきます」


 熱いミルクを覚ましながら、少しずつ飲む。


「セリカ、さっきのアレ」

「ぶっ!?」


 私はさっきのアレを思い出し、ミルクを吹き出した。


「あっと、えっとね、新しいスキルを手に入れて興奮してたんだよね……照準アシストって言って、デジタル的な感じのメーター的なのがピピっと!」

「何言ってるのか全然わかんなかったんだけど?」

「うーん……」


「まあなんとなくわかったわ。あたしの見切りスキルよりも、圧倒的に強力で使い勝手のいいスキルが手に入ったってことでしょ」


 ミコ、もしかして見切りの件忘れてなかったの……!? 笑顔のミコ。でもなんか怖い。


「ま、まあでも、0,01%って言っても、運が良ければ何回でも発動するし? それはミコ次第っていうかなんというか……?」


「そうよね! たまには良いこと言うじゃん、セリカ」


 なんとか機嫌を取り戻してくれたようだ。任務まで、あと2時間。フリャの街は幸い、そんなに遠い所じゃない。街の北西、間の草原を歩いて1時間ほどの場所だ。


「セリカ、少しだけ、ダメ?」


 ミコは私の背後に周り、椅子ごと私を抱きしめるようにして、右肩に顔を乗せる。ミコの心音や息づかいが手に取るように分かる。私も次第にドキドキしてきた。



「セリカ、あたし、なんか嫌な予感がするんだ。危なかったら、絶対に逃げよう。セリカ、いっつも無理するから、念を押しておかないと心配だわ」


「ミコ……」


「もちろん、あたしはちゃんと依頼を達成して、報酬金をたんまり貰ってティナちゃんを学校に行かせるつもりだけどね。」

「うん。必ずクリアしよう」


 私はミコの頭を撫でて、目を閉じる。 ……嫌な予感。ボス級のゴブリンがでる? ……パーティーメンバーの誰かが裏切る?


 あまり仲間のことを疑いたくない。連携が取れなくなってしまう。でも、ミコの嫌な予感というのは、大抵当たってしまう。今回はこのどっちかだろう。


「……そろそろ、準備していこっか。」

「うん」


「ティナちゃん、行ってきます」


 私とミコは気持ちよさそうに寝ているティナちゃんに小声であいさつする。



 戦闘用装束に着替え、私たちは村に向けて歩き出した。

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