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44 海と炎……なぞの信号?


 高台を降りて、村に戻るのもアレなのでという理由で、海に来ましたー。


「セリカ……海、久しぶりだね」

「うん、いつぶりだろう……」


 久しぶりの海。私は前世でも都会住みだったので、海を見る機会はほとんどなかった。なので、今とても感動している。


 この世界の海は、とっても広い! 未知なる海洋生物も、前世の世界とは比にならないくらいは居るだろう。


 私たちは、裸足になって波の勢いが小さい所に行く。足を入れると、まだ春になったばかりの海は、とても冷たかった。


「ちめたっ!」

「あっはは、ミコ、いきなり入るからだよっ」


 砂浜から助走をつけて、ジャバジャバと海に向かって走るミコ。水に浸かって数秒、すぐに浜辺に上がってきた。


 しゃがんで水の中を覗くと、小さな魚が周りを泳いでいるのが見える。


 ファンタジー世界らしい、カラフルな魚だ! 銀紙のような鱗がテラテラといろんな色の光を反射し、それを目で追いかける。


「ミコ! これ見て、綺麗な魚!」

「ホントだ! 綺麗~」


 冷たいのを我慢して、私の隣まで歩いてくる。指さしで魚の場所を教えると、見つけたミコはおお~っと声を上げていた。魚好きのミコも、食用に出回らないカラフルな魚はあんまり見たことないのかな。


「これ、食べれるのかな?」

「ちょっと、取って食ったりしないでよ!?」


「なーんてね! 本気にしないでよ、セリカっ」

「ミコならやりかねないと思って」

「ええっ!」


「なんてね、本気にしないでね、ミコ?」

「なにそれ! 私のマネしたつもり!? このっ!」

「ぎゃああっ!」


 水をかけられて、つい叫んでしまった。着替え用意してないんだけど、明日までには乾くかな……シーマ達に磯臭いとか言われたらどうしよう……


「この~っ、お返し!」

「ぎゃあああっ!!」


 私は「かけられたらかけ返す、倍返しだ」を<オリジナル座右の銘>なるものにしているので、ミコには掛けられた分の倍の量をかけてやった。私よりもびしょびしょになって、同じように叫ぶミコ。


「あっはは! やったな~!」

「あははっ! ミコ、頭にワカメついてる!」

「ええっ!?」


 頭に着いたワカメを取り、私の方に投げてくる。それを避けて、また水のかけ合いが始まった。



 ……。



 空がオレンジ色になる頃には、お互いグショグショのまま、少し前まで通っていた (記憶があるだけの)海に近い小さな学校や、その通学路を通って、村に帰る。


「順番、間違えたね」

「ミコが水をかけるからでしょっ」


 頬や肩に海藻を貼り付けたままの私たちはお互いを見つめあい、笑い出す。


「風邪ひく前に帰ってお風呂入らなきゃ」

「うん……? あれなに?」

「えっ?」


 指をさすミコ。その先には、なにやら何かが燃えているようだ。


「急がないと!」

「うんっ!」


 村の全体像が見える所まで走る。燃えているのは村の中心の広場だ。


「ね、ねえセリカ、あれって……」


 細木を平行に並べ、それを上に交互に重ね合わせ、中に燃えやすい枝を入れて燃やす。キャンプファイヤーってやつ?


「火事じゃなかったようで安心したわ……」

「ふう、心配して損したわ……クシュっ」

「大丈夫? ミコ」


 ぶるるっと腕を組み、震えるミコ。私はそばにより、身体をそっと支える。……早く帰らないとね。



 村に着くと、広場では宴の準備がされていた。キャンプファイヤーもそのために作られたものだった。


「おかえり、セリカ、ミコちゃん。二人が帰ってきたのを、みんなで歓迎しようってことで、外で宴を開くことになったんだ、もちろん、参加してくれるよな? 主役のお二人さん?」


 お父さんは、ニコッとするが、寒そうにするミコを見て目を見開く。


「ちょ、なにしてたんだ? まさか海で泳いだとか言わないよな!? まだ春は始まったばかりだぞ?」

「あはは、なんだか海が懐かしくて、遊んでたらびしょびしょになっちゃった」

「くしゅんっ!」


「セリカ、ミコちゃん、先風呂に入っちゃいなさい。丁度ママがお風呂を準備してくれているところだ。温かいお湯くらいならすぐ出るだろう」

「ありがと、お父さん!」

「へっ……へへへ……」


 愛娘に感謝されてデレデレの様子。お父さん、可愛いなあ……。


「じゃあ、お言葉に甘えて……いこっ、セリカ」

「うんっ」


 お風呂に入り、髪を乾かした後、寝間着に着替えたまま外へ出る。丁度、宴の準備が終わったところだ。


「おお、丁度いいな、セリカ、ミコちゃん、こっちに来てくれ」


 私たちはキャンプファイヤーの前に立たされ、周りを村人たちが囲う。そこには、ニケの姿は見当たらなかった。


「さて、今回、俺たちの村の娘たちが帰ってきたということで、ちょっとしたお帰り会みたいなのを開くことになった。企画準備を手伝ってくれたやつら、ありがとな」


 私たちの隣に立ち、話し始めるお父さん。知らぬ間に、この村の司会ポジションにでもなったのだろうか。私の知ってるかぎりでは、裏庭の小さな畑で作物を育てるただの農家だったような気がするけど。


 お父さんの司会挨拶に拍手を送る村人たち。


「んじゃ、かんぱーい!」

「「かんぱーい!!」」


 村の男たちは、勢いよくお酒を飲み始めた。事前に用意していた野菜や串などのつまみをお母さんとミコのお母さんが運んでいた。


「お母さん、私も手伝うよ?」

「いいのよ、今夜の主役はあんたたちなんだから」


 そう言って紙皿に乗せていた串を渡してきて、ニコっとする。ミコはこっちを見て困り顔をしていた。


「とりあえず、食べる?」

「うん……いいのかな、ただ食べるだけなんて」


「セリカ、いつもご飯作ってくれてありがとう」

「どうしたの? 急に」

「なんとなく……セリカも食べよ? おいしいよっ」


 私の目の前で串を食べて見せるミコ。


 私は毎日料理を作るのが当たり前になっていたので、少し申し訳なさを感じつつ、おいしそうな脂ののった肉串を食べる。


「おいしい……なんだか、街の肉料理とは違って、素材本来の味というか、お肉と脂の味がしっかり味わえておいしいかも……」

「食レポのつもり? たしかに、あたしたち獣人にピッタリの味付けね……レシピ聞いておこうかしら?」


「いいね、これ、ティナちゃんにも食べさせてあげたい!」

「シーマは?」

「シーマ、味気ないって言いそうだけど、どうかな……」


 私たちにとっては絶品級のこの肉串。でも、人間にとってはただ焼いただけの、味がしない肉だ。


「ん、どうした、まずいか?」

「えっううん! おいしすぎて気絶しそうだった!」

「おいおい、そりゃ逆に心配だぞ……」


 肉串を口に入れてから、ずっと固まっていた私を見て心配そうにするお父さん。隣ではミコがあっという間に肉串を食べ終わり、棒をキャンプファイヤーの近くに設置されたごみ袋に捨てに行った。


「セリカ、気になるあの子は見つかったか?」

「急にどうしたの、お父さん?」


 急に肩を組んでくるお父さん。この世界では、16歳から結婚できるらしい。街に行けば、人口がこの村とは比べ物にならないほど居る。その中なら、すぐにカレの一人や二人……って、二股はいかんでしょ……。


 っというツッコミは置いておいて。


 とにかく、お父さんは将来の相手と孫を期待しているようだった。……そんなの、全く考えたことなかったな。お父さんは結婚しないという選択は許してくれないのかな……。


「気づいてると思うけど私、ミコのことが好きだからっ」

「そうか……女の子同士でも、子どもが出来ればいいんだがな……」

「なんじゃそりゃ」


 女の子同士の恋愛は許してくれるっぽい。少し安心。第一、私街の男とか興味ない。街ゆく男たちの顔をまじまじと見たことないし。


「ははっ、お父さんがイケメンすぎて彼氏連れてくるのが億劫とか気にしないでもいいんだぞ、セリカ……おまえの見た目なら、もう婚約の話とか出てそうなもんだが……」

「お父さん、私しばらくはそういうの、考えてないから……」

「ご、ごめん、まだ16だもんな……将来の話に夢膨らませすぎた……」


 肩から手を放して、距離を置くお父さん。仕方ない。お父さんとお母さんは小さいころから仲良しで、実際16歳で結婚している。……なんだか悲しそう。


「ごめんね、やっぱり、孫の姿とか見たかった?」

「セリカ、おまえが幸せなら、俺とお母さんも幸せだ」


 そう言って肩をポンポンと叩いて、おっさんたちの集まりの方へ歩いて行った。お父さんの背中を見つめていると、後ろから背中をツンツンとつつかれる感覚が。


「セリカ、もう結婚の話?」

「うん、やっぱり、猫族は数が少ないからね……仕方ないよ」



 キャンプファイヤーの火が弱くなり、おっさんたちが外で寝ている。お父さんとお母さんがこちらに来て、宴の終了を知らせる。


 私たちは今夜は色々話したいことがあると言って、それぞれの家に帰ることにした。


「じゃあ、また明日の朝ね、セリカ」

「うん、おやすみ、ミコ」


「じゃあ、いこうか、セリカ」

「私の部屋ってぶっ!?」


 私の前を歩くお父さんが急に足を止め、私はお父さんの背中に頭をぶつける。


「大丈夫、村を出る前と同じ状態で残してあるさ。その……たまにお母さんが出入りしてるけど」



 ◇◇◇



 自分の部屋に入ると、昔の記憶を思い出す。初めて入ったはずなのに、なんだかここで長いこと暮らしてきたような気がする。


「たしか……あった。ミコからの手紙」


 小さいころ、よく遊びで手紙を送りあったものだ……ひどく懐かしく感じる。


「今日はね、セリカのためにお花のしおりをつくったのよ……」


 その手紙に添付されていたであろうしおりは、勉強机の一番新しいノートに挟まれたままだった。


 それを抜いて、見つめる。……大分古っぽくなっちゃったけど、持ち帰って使おうかな。


 ……。


 ……二十一。


 ふと村に帰って来た時のことを思い出し、時計を見る。


 ちょうど21時になろうとしている。私は悪寒を感じて、窓を開けて外を見渡す。


「はっ、はっ、なにこの、寒気……イヤな予感はっ……!」


 心臓がバクバクして、外の音が聞こえづらい。


「スキル、クリエイターモード」


 スキルを使い、マップを開く。……ミコ、ニケ、二十一。そういうことか。これは、危険信号……!


 マップでミコの家付近を見ると、ミコの家に近づく一つの赤い点。詳細を開くと、やはりニケだった。


 誰が教えてくれたのだろう。とにかく、まずい事というのは、なんとなく分かった。



 私は武器を持たずに、窓から飛び降りて全速力でミコの家に向かう。


 何が起こるか分からない恐怖と焦りに、心臓と肺が痛む。


「ミコ、待ってて……!」


 ……。


 家の前に立ち、扉に手を掛ける。やはり、空きっぱなしだった。音をたてないように、そっと耳を澄ませながら、二階に上がる。


 ガタガタと物音が聞こえるのは、二階にあるミコの部屋。


「フー、フーッ」

「……」


 今の私では、内容までは聞こえないが、ミコが危険な状態というのは何となくわかった。


 耐えきれず、扉を勢いよく開ける。


 ……そこには、ミコの首を絞め、口元がよだれまみれになっているニケが居た。

中途半端ですみません。いそいで書いてます! キーボード入力が遅くてごめんなさい。スマホで下書き?みたいなのを書くのは早いんですけどね(笑)


すぐに続きを上げたいと思います。


続きを待ってくださっている方には申し訳ありませんが、数日1話しか書けない日が続いてしまうことをお許しください。休みの日に、また書き溜めておきたいと思います!


これからもよろしくお願いします!!

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