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35 おうちで


 私とミコはかるたを、シーマとティナちゃん、それにお友達でかわいいデザインの帽子をそれぞれ結構な量作った。


 子供たちは暗くなる前に帰して、私たちはクタクタになりながら、部屋を片付けて夕飯の支度をする。


 シーマとティナちゃんはシーマの部屋で最後の工程、帽子のラッピングをしている。


「ミコ、私もう疲れちゃったよ」

「おつかれ、セリカ……今日は夕飯、私が作ろうか?」


「たしか、冷蔵庫にお湯を入れるだけのご飯があると思うんだけど」

「なにそれ?」


 私が作ったそばに似た乾麺。正直、工場とかで作ったわけじゃないから、味というか、香りがほとんど飛んじゃっておいしくないけど、つゆに入れてごまかせば、なんとなくそばっぽい味がしないでもないという、物凄くインスタントをインスタントしたそば。


 自分でも何を言ってるかわかんないけど、とにかく味がしないけど、店では売っていない長期保存がきくそばを作ったんだよね。


 この世界じゃ、冷蔵庫とか電化製品はあるのに乾麺などのインスタント食品がないのよね……。なんでだろ?


「それ、鍋でお湯作って、沸騰したら入れて3分ゆでるだけ」

「なにそれえ! すごい!」


 おおげさに驚きの声をあげるミコ。まあこれも私が発明したわけじゃないから、誇らしげに出来ないのが悲しい所だ。


 ミコに異世界転生したことをバラさなければ、私が発明したことにできたのだろうか。


 ミコは下の鍋類をしまう引き出しから大きめの鍋を取り出し、水を半分ほどためて、ガスコンロに置く。


「セリカ、これでいい?」

「ちょっと待ってね」


 私は重い身体を起こして、キッチンへ向かう。


「そそ、これで火をつけて、その間につゆを作るの」


 冷蔵庫からしょうゆ、みりん、かつおぶしを適当な量混ぜ合わせ、煮詰めておいた「そばつゆ」みたいなつゆを取り出し、味見する……うん、それっぽいかも?


 といっても、前世の私と舌の感覚? が違うので、同じ味は再現できなさそう。


「そばって言っても、そば粉はないから、沖縄そば的な感じかな?」

「どういうこと?」


「ごめん、独り言!」


 ゆであがったそばをざるに入れて、水を切る。……空腹を満たすには十分だろう。


「はいっ、完成」

「結局セリカが作っちゃったよ」

「あはは……」


 私はシーマの部屋の前に立ち、静かに扉を開けて、中の様子を見る。……どうやら、二人とも寝てしまったようだ。


 わかるわかる。休日の午後って眠くなるよね。


「ミコ、二人で食べよ」

「分かったわ」

 

 二人で向かい合うようにして席に座り、真ん中に置いたそばを少しずつ取ってつゆが入ったお椀に入れる。


 ……これは、なんとなくそばっぽい!


「うんっ、おいひー」

「それは良かった!」


 私にニコっとほほ笑むミコを見て安心する。


「ねえ、明日ってどうやってフリャまで行くの? またゴブリン退治の時みたいに、歩きで行くとかいわないよね?」

「もちろん! ……歩いていくよ」

「ガックシ」


 頭をブンっと勢いよく下げるミコ。この子、歩くのキライなんだよね~。


「しょうがないでしょ。この世界にはバスや電車はないんだから」

「ばす? でんしゃ? それって、前の世界のモノ?」


「そう、私たちはそのバスとか電車っていう大きな箱の中に座っているだけで、目的地まで行けるのよ」

「なにそれすごい! どんなの!? 乗ってみたい!」


「しょうがないな~」


 私は紙とペンを取り出し、簡単にバスと電車を描いて見せる。この世界の住人じゃ絶対思いつかないであろう乗り物のデザインを見て、感激するミコ。


「セリカ、これ作れないの?」

「作れたらとっくに作ってるよ……」

「だよねん……」


 クリエイターモードさえ、無制限ならっ!


 どうにかして制限解除できないのだろうか。


 私はメニューを開き、ペラペラと色んなページをめくる。


 スキルの欄に、クリエイターモードと書いてあるが、特にいじれなさそう。


「いや、なにこれ?」

「セリカ、急にどうしたの?」


 クリエイターモードの詳細設定を開くと、レベル1と書かれていた。……このスキル自体が、熟練度によって制限が段々解除されていくとしたら……。


 明日、エムニスさんに謝りに行くついでに、クリエイターのスキル内容を見せてもらおう。


「なんでもないわ、さ、食べよ?」

「うん? うんっ」


 ……。


「ごちそうさま」


 ミコから食器類を受け取り、洗ってからカゴに入れる。シーマとティナちゃんの分のそばをタッパーもどきに入れて、冷蔵庫にしまう。……この動作も、大分慣れたな……知らないうちに、私はこの家のお母さんになってしまっている。


「よし、片付いたし、お風呂入りますか」

「いってらーん」

「ティナちゃんたちが起きたら冷蔵庫のそばを食べさせてあげて」

「ふぁ~ああい」


 頼りない返事をするミコを信じて、私は寝間着を持って風呂場に行く。


 ……。



「はあ~っ」


 毎日恒例、風呂場のスキルボード。


 といっても、今日は料理熟練度しかほとんど上がってないけど。……料理熟練度を一定まで上げたおかげか、スキルポイントが増えている。


 エクストラスキル欄を見ると、新しい物が増えていた。


「アサシン……?」


 スキルを発動し、人物を指定してから、息を止める。


 ……すると、息を止めている間、その指定した人物からは姿が見えないというものだ。


「こんなの、いつ取得したんだろう。……ちょっと使ってみるかあ……」


 料理熟練度で手に入れたスキルポイントを使い、アサシンを習得する。


「よしっ」


「セリカ~? まだ入ってるの?」


 来た。スキルボードを見ていると、つい時間を忘れてしまう。


「スキル、アサシン」


 ミコの姿を想像して、息を止めると、なんだか身体が透けて見えるように。


「あれ? セリカ? ……電気つけっぱなしでどこ行ったの?」


 すごい、バレてない!


 ミコが浴槽の水が変な形に歪んでいるのに気づく。


「ん? どうなってるのこれ」


「ばあっ!」

「きゃあああーっ!!」


 止めていた息を吐き、ザバーっと浴槽から飛び上がる。ミコは驚いて、悲鳴を上げる。


「おい、どうしたんだ!?」

「お姉ちゃん!」


 リビングの方から二人の声が。まずい! どうしよう!?


「ちょ、ちょっとミコ! 扉閉めて!」

「セリカ!? どこから出てきたの!?」

「いいから!」


 ガララっと風呂場の扉が開く。間に合わなかった。


「大丈夫かっ……って」

「ふんっ!」



 ◇◇◇



 着替えて机に座る。ミコとティナちゃんは交代で一緒にお風呂に入っている。


 シーマは、ミコに殴られて鼻血を出している。


「ごめん、セリカ……」


 鼻を抑えて、こもった声で謝罪するシーマ。


「いやあ……私のせいで、ごめんね?」

「一体、何があったんだよ?」


「スキル、アサシン……すうーっ」


「消えた」


 シーマの前で消えて見せる。そして息を吐き、パッと姿を現す私に驚く。


「すごいスキルだ。魔物退治に使えるかもな!」

「残念だけど、これ1人にだけ見えないようになるスキルだから、使い道はかなり限定されるわ。スパイとかには向かないし、魔物も雑魚が周りにいないボス級とかにしか、使えない……」


「でも、強力なスキルだ。……移動系スキルの方が便利なことが多いが、隠密系スキルもなかなかいいな。今度取得してみるか。」


「シーマも、隠れ身の術みたいなエクストラスキル解放されてるの?」

「ああ、でも、俺のは身体が一時的に半透明になるだけだ。セリカのアサシンほど、綺麗に消えれるスキルなら、いくらか戦闘にも活用できたかもしれないんだが」


「そっか、完全に消えれるスキルってあんまりないんだね……」


「あっ、そう、それでこのスキルをミコに使って、驚かせたんだ」

「それでか。誰かに無防備な状態のミコが襲われたのかと思ったよ」


「あはは、ほんとごめんね……」


「安心したところで、俺は眠くなったから、寝る。……ティナにも、寝ちゃって出来なかった残りはやっておくと伝えておいてほしい」

「うん、わかった」

「それじゃ、おやすみ」


 そう言って、自分の部屋に戻るシーマ。


 私もそろそろベッドに行こう。


 ……。



 私は体の力を抜き、ベッドに倒れこむ。


「はあーっ、ベッドよ、そなたはなぜそんなに気持ちいいのだ~」

「にてないし、ちょっとバカにしてるでしょ、セリカ」



 ミコの悪ふざけをするときの口調をまねたつもりだが、まさかの、いつの間にか後ろにいた本人からダメ出し。


「ミコ、もう出たの?」

「これから、ティナちゃんの髪を乾かすところ」


「そっか、じゃあ待ってるね」

「うん、ありがとっ」



 ベッドに入り、毛布をかぶる。


 明日こそは、必ず早起きしないと……!


 

 ミコを待っているつもりだったが、疲れからか、5分ほど目を閉じただけで寝てしまった。

よんでくださり、ありがとうございます!


これからもよろしくおねがいします。

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