表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/63

03 商業の街で起きた事件・作戦会議


「うーん、おいしい! やっぱりお店のコーヒーは最高ね。」

「あづぁ!」

「あは、ミコ、ちゃんと冷まして飲みなよ?」


 次の日、朝の依頼をノルマ分片付けて、街に帰り、息抜きにミコとカフェでお茶をしていると、隣に座っている男と、その奥にいる女の人2人がなにやら変な噂話をしていた。


「バザールが中止!? せっかく出品用の野菜育ててたのに……」

「フリャで大規模な盗みがあったらしいわ。出店準備をしていたお店の衣服や食べ物がほとんど盗まれちゃったって」

「たった一日で!? 一体誰が……」


「それがよ、近くの山からゴブリン軍団がちょこちょこ降りてきていたのを目撃したんだ。俺はあいつらが盗みを働いたと思ってる」

「そうなの? それじゃあ冒険者様に頼まなきゃね」


「なにか、困ってるんですか?」

「ちょっと、ミコ!」

「あっ、ごめん、つい! なんか冒険者がどうのって聞こえたから!」


 遠くから聞こえる噂話に反応するミコ。3人のうち、男はニヤっとして、私たちの方を見る。


「お譲さんら、冒険者か?」

「はい、2人でパーティー組んでやってます」


「ふっ、パーティーねぇ、その装備じゃあ、ろくな敵も倒したことないヒヨッコだろ?」


 ミコが立ち上がる。


「なんですって!? あたしはともかく、セリカは村をボス級魔物から救った英雄なのよ! 謝りなさい!」


 なに言ってるんだミコ! 私はまだレベル15の雑魚弓士だー!


 ミコが立ち上がった勢いで、帽子がズレる。隠していた獣耳があらわになる。後ろにいた女の人たちがヒソヒソと話している。


「獣人よ」

「獣人だわ」


 女の人たちは私たちを街に不法投棄された生ごみを見るような目で見ながら、席を外す。この街ではごく自然な光景だ。


 私はこの世界の歴史なんて知らないけど、私の知らない所で、獣人と人間に種としての差が植え付けられていた。


「ミコ、座って」


 あの女性とこの男は特に親しい関係ではなかったらしい。ミコを座らせ、男の方を見る。


「へっ、獣人のガキがよ。そんなに自身があるってんなら、俺たちと組んでゴブリンを退治しないか?」

「あんたと?」

「ああ、実は俺も冒険者なんだ。俺はアシメ。弓士レベル20。弓の熟練度は250。俺は依頼で稼いだお金で、バザールの掘り出し物を買い集めるのが趣味なんだ。バザールが当分中止と聞いて困ってるんだ。もちろん、報酬は山分けだ」


 強い。私はレベル15、熟練度は129だ。


 この世界では、レベル1ごとの差が大きい。


「……おいおい、俺が丁寧に自己紹介してるってのに、無言はキチいぜ?」

「あっ、ごめんなさい! ……これ」


 私とミコは冒険者手帳を渡す。


「ふーん。獣人にしてはやるな……ん? お前、何だこのスキルは。クリエイターモード……?」

「あっ!」


 まずい。そう言えば忘れてたけど、クリエイターモードはなぜかスキル欄にあるんだった。


「えっと、人を探すことができるスキル……かな?」


 咄嗟にウソをつく、だが男はフンと鼻息を漏らし、私を見た。


「じゃあ、俺のパーティーメンバーを探すこともできるのか? 今ちょっとはぐれててな」

「ええ、名前と大体の居場所さえわかれば」

「まじかよ。そんだけでいいのか? ……じゃあ、名前はレイラで、多分この街のどこかにいる」


「分かりました。スキル、クリエイターモード」


 体力と魔力を表示するバーが消えて、今いる場所の座標、気温、湿度、周囲の人物の名前と簡易ステータスが表示される。私はマップを開き、レイラと入力して検索する。


 ……いた。この店の目の前、いや、だんだん近づいて……?


 目の前で急に破裂音のような音が鳴る。私は驚いてクリエイターモードを閉じた。


「っでぇ!なにすんだ、よ……?」

「アシメ!また女の子ナンパしてたの!? そろそろいい加減にしなさいよ!」

「いやいや、違うって、まじ! 俺はこいつらとフリャのためにゴブリン退治に出ようって……」


 長身の女性にひっぱたかれるアシメさん。


 なるほど、さっきの女性2人もこの男にナンパされてたのか。


「こんにちは、私の夫がごめんなさいね? 変なこととか言われてない?」


 困った顔のままニコっとするレイラさん。この人が男の嫁? 似合わなすぎる。


 外から見ると、チャラ男と女騎士って感じで、なんともマッチしない組み合わせだ。


「あの、今ちょうど、あなたを探していたんです!」

「えっ、そうなの?」


「はあ、俺は信用0だから、お前らの口から言ってやってくれ」


 私はレイラさんにお辞儀をして、握手をした。椅子に座りなおし、レイラさんとアシメさんの話を聞く。


 レイラさんは、剣士レベル21、熟練度は195。ステータスはそこそこだが、身体強化系スキルが豊富で、肉弾戦がめっぽう強い。


「レイラさん、お強いんですね! 尊敬します!」

「セリカ、この人たち、完全にあたしたちの上位互換だよ。クラスだだ被りだし」

「あはは、たしかに!」


「おいおい、面白い話してんじゃねぇか?」


 後ろのテーブル、声のする方を見ると、そこには、つるっぱげの甲冑を着た大男と、ワカメのようなテカった黒いマントを着た黒髪の若い男の人がいた。


「あなたたちも冒険者ですか?」

「ああ、まだギルドにも届けてない話らしいな。俺はギザル。こいつはシーマ」


 大男はワカメを着た青年を指さす。頭を少し下げて挨拶するワカメ。


「えと、セリカとミコ、アシメさんとレイラさんです」


 私は同じように順番に指をさしながら紹介する。


 ギザルさん。銀色の甲冑を身に着けた、スキンヘッドの大きな人。レベルは24、大きな盾と片手剣を装備している。防御スキルが豊富なタンクタイプだ。仲間にいればかなり心強い。


 シーマさん。黒髪で、後ろ髪だけ長くて縛っている。黒いワカメのような外套の中は、意外にも普通の装備だった。レベル25……って、現時点の最高レベル!?


 スピード系スキルと、幻影魔法を得意とする、トリッキーな戦闘スタイルが特徴的だ。


 シーマさんはずっと私とミコのことを見ている。


「キミたち、獣人だろ? なんでこの街で暮らしているんだ?」


 優しさを感じる声。聞いていて落ち着く。ミコはシーマさんの方を見て立ち上がる。


「獣人だったらなんだって言うんですか!? あなたたちまで私たちをいじめる気ですか!?」

「ミコ、落ち着いて!」


 シーマさんは表情を変えず、無言でミコをみつめる。そして口を開けた。


「はぁ、俺はこの街に居る理由を聞いたんだが。それに、俺は獣人が好きなんだ。警戒しないでほしい。」


 話を聞いて落ち着いたミコが座り、話し始める。


「あたしたち、こどもを学校に行かせるために街に来たんです」


 ミコ以外の5人が、固まる。ミコ、それじゃ言葉が足りなさすぎる!


「えっ? ……お前ら夫婦だったのか? パパはどっちだ? 気づかなかった」

「あらあら、かわいらしい夫婦ですこと?」

「お前ら、いくつだよ? ガキだと思ってたぞ」


 それぞれ驚きの表情を見せる。想定通りのコメント。


「えっと! こどもっていうか、人間に奴隷にされて逃げてきた子を保護することになって、その子はまだ8歳なので、私たちがなんとか学校に行かせようって話になって……」


 どうやら納得してくれたようだ。


「なるほどな。ビックリしたぜ」


 肩を落とすアシメさん


「それなら、ギルドに正式な依頼にしてもらおう。要はお金が欲しいんだな?」


 ギザルさんがそう言って、右手を出しゼニのマークを作る。


「ええ、まあ……」


 私は頬をかき、目線を下に下げる。


「じゃあみんな、今日からしばらくよろしくな!」


 アシメさんはニカっと笑い、6人でパーティーを組んだ。


 ゴブリンが次街に降りてくるのは、おおよそ今日の深夜0時。私たちは夜10時にフリャのバザール会場へ集合することになった。


 私とミコ、アシメさんでギルド本部へ行き、緊急任務として今回の件を取り扱ってもらうことにした。


 緊急任務。それは普通の依頼よりも、緊急性が高い依頼に付けられる名前だ。報酬金が高く、目標やボスをいち早く倒したパーティーに報酬が渡される。早い者勝ちってやつだ。


 そして、その中でも一番の功績を残した者には、ネイバの王様、ナト家のエムニス様から直々に追加の報酬や、個人的な会話などをすることができる。といっても、私、王様とか全く興味ない。どんな人かも知らないし、そもそも居たんだってレベル。


 ギルドに緊急任務の申請を終え、依頼書を作成してもらい、それを受け取る。ギルドの出口でアシメさんと別れた後、ミコと二人で寄り道をしながら家に向かう。


「ミコ」

「にゃ、なに?」


 道中で買ったはちみつレモンジュースにすっかり脱力していたミコ。私は心配だ。最近、というか、私の身の回りではいろいろと危ないことが起きすぎてる気がする。毎日がゲリライベントみたいだ。先ほどの作戦会議を思い出す。


「私は後衛だから、ミコに何かあっても助けに行けないかもしれないわ。もし、危なくなったらすぐに逃げてね?」


 珍しくミコに弱気なセリフを吐く私。ミコも少し驚いて、クスクスと笑い出す。


「ふふっ、セリカ、もしかして心配なのー?」


「うん。この前のことを思い出して、もしミコが居なくなったら、私どうにかなりそうな気がして」

「セリカ……」


 ……。


 ミコの手が私の左手の甲に触れる。私はそっとミコの手を握った。緊張か、すこしミコの手は汗ばんでいた。


「ねぇ、離してよ。手汗かいてるから、なんか恥ずかしい。」

「なに言ってるの。手をつなごうとしたのミコでしょ?」

「ちょっと当たっただけだし……!」


 顔を赤くするミコ。とてもかわいい。



 私はそのまま、家まで手を繋いで帰った。ミコは照れてるのかずっと無言のままだった。

読んでくださり、ありがとうございます。ここで今出ているキャラの紹介をしようと思います


人物1:芹沢香苗


プロフィール 人間 16歳 黒髪 ショートボブ 155センチ 53キロ Bカップ


・ゲームオタク・獣人好き・小食・百合好き・早口・ポジティブ思考・心配性


人物2:セリカ


プロフィール 猫族 16歳 桃髪 ミディアムヘア 155センチ 45キロ Cカップ 


・上に同じ


人物3:ミコ


プロフィール 猫族 16歳 黒髪 ロングヘア 150センチ 40キロ Bカップ


・寂しがり・魚好き・人見知り・甘えん坊


人物7:ティナ


プロフィール 犬族 8歳 銀髪 外ハネミディアム 125センチ22キロ


・寂しがり屋・甘えんぼ・ロリ・お菓子好き・お姉ちゃんっ子・元気・泣き虫


人物4:アシメ


プロフィール 人間 冒険者 24歳 茶髪 バンダナツンツンヘア たれ目つり眉 無精ひげ 170センチ63キロ


・おっさん・ひげ・口悪い・既婚者


人物5:レイラ


プロフィール 人間 冒険者 24歳 金髪外はねロング つり目たれ眉 厚化粧 170センチ58キロ Fカップ


・やさしい・お姉さん・アシメの嫁・アシメにだけ暴力振るう


人物6:ギザル


プロフィール 人間 冒険者 46歳 ハゲ たれ目つり眉 196センチ120キロ


・おっさん・ゴリマッチョ・とにかくかたい・タンク


人物7:シーマ


プロフィール 人間 冒険者 19歳 黒髪 後ろだけ長くて縛ってる 標準目つり眉 170センチ 60キロ


・弱そう・獣人好き・ワカメ・謎の男・へへっ・適当男


これからもよろしくお願いします!!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] セリカちゃんがミコちゃんやティナちゃんを想いやっているところが良かったです。 [気になる点] 獣人族が一部の人達から嫌われているという設定が可哀想でした。 猫耳少女やキツネ耳少女、可愛いの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ