28 ダンジョン籠ってたら街が……
この話は、レイラお姉さんがメインのストーリーでございます。
「ふう、久々の地上ね」
「死ぬかと思ったぜ」
私たちは、目の前に突如現れたボスから必死に逃げて、地上に出るまで丸1日かかってしまった。
……結局、ボスを倒すことはできなかった。いくら攻撃しても、全く怯まないし、攻撃を一撃でも受けたらしばらく動けない。なんなのあいつ!?
ダンジョンのボスは、以前のボスゴブリンとは訳が違った。……私たちは、ボスを舐めていたのだ。
外は明るい。まだ寒いから、朝方かしら。
「レイラ、歩くのが早いぞ。俺はもうクタクタだ」
「弓士って言っても、そのスタミナの無さは恥じたほうがいいわよ、アシメ」
急に、街の方から轟音が聞こえる。
「うわあっ!? なんだ?」
「私たちの居ない間に、何が起きてるの!?」
あの英雄たちは、何をやっているんだろうか。
「ふふっ、私の出番のようね」
ボスを倒せなかったとはいえ、剣の熟練度だけなら、かなり盛れた。今の私は、最強だ!
◇◇◇
私たちは駆け足で街の入り口に来た。ギルド本部のある方向から、どんどん人が逃げ出してくる。私とアシメはその流れに逆らって、ギルド本部に向かう。
「休憩させてくれないようだな」
「ええ、ボスを倒せない、情けない私たちを活躍させてくれるチャンスよ」
「ポジティブでよろしいな、レイラは……っ!」
ギルド本部の周りには、黒煙や塵が舞っていて良く見えない。
アシメを連れて3階建ての民家の屋上まで登り、ギルド本部辺りを見渡す。
「いた、あの男、たしかシーマって言ったわね」
「シーマ? 一人なのか?」
「あと、ギザルさんもいるわ。……それだけ」
敵らしき影は20かそこらだ。2人で相手するには少々無理があるが、彼はネイバの中でも最速でレベル25になった男。……きっと、倒してしまうんだろう。
「おい、助けに行かないのか?」
「少し、様子を見ましょう」
疲れ切って呼吸が荒くなっているアシメを座らせて、シーマとギザルの様子を見る。
……あの猫娘はどこへいったの?
「また、最後のおいしい所だけ、持っていくつもり……!?」
「アシメ、少し、ここで休憩してて」
「ああ、気を付けろよ」
私は民家から飛び降りて、シーマとギザルの元へ走る。
「くそっ、数が多い!」
「何が目的なんだ、こいつらはっ!」
「お前らだよ! 獣人にこの街で活躍されると困るんだよっ!!」
「ぐっ!?」
「死ねえっ!」
間に合え、っ!!
私は10対1という無謀な戦いをして、危うく死にそうなシーマの目の前に飛び、敵の剣をはじく。
ギザルさんは、タンク役を担っていたのだろう、敵に全方位から総攻撃を受け、倒れている。
「なんだっ!? おまえっ!」
黒装束の男は驚いて、後ろに下がる。
「はっ、あなたは……」
「待たせたわね、シーマ君」
私は尻もちをつきそうになるシーマの腕を掴み、体を起こす。
「助かりました、レイラ姉さん」
「んふ、まだ、礼を言うには早いわ……ところで、あの猫ちゃんたちは?」
「カフェに預けてある。こいつらの目的はセリカの殺害だ」
「なんですって!?」
次々襲い掛かってくる黒装束の男たちを蹴散らしながら、シーマの話を聞く。
「この街では、獣人をタダ同然で働かせ、莫大な利益を起こしている企業がある。おそらく、そこの獣人たちが企業に反発して、仕事を放棄したのだろうな……ボイコットみたいなもんだ」
「くっ! ……それで、企業の怒りの矛先が、セリカに向けられた訳だっ……!」
「こいつらは、そいつに雇われた殺し屋だって言うの!?」
「違う。こいつらは、その企業の社員から、個人的にセリカに恨みを持つ者、金を目当てに参加している奴までごちゃごちゃだ! 莫大な懸賞金を掛けられているんだろう……なッ!!」
ずっと戦い続けて、握力がなくなりかけているシーマ。ついに持っていた剣が飛ばされ、無防備な彼を攻撃しようとする。
「シーマっ!?」
「ブグッ!?」
突然、男の肩に矢が刺さる。
「もうやめて、みんな!」
声のする方向には、この島じゃ見かけないピンク髪の少女。帽子を被っているが、間違いない、セリカだ。
「セリカ……っ、出てきたらダメだっ! こいつらの目的はお前だ!」
「えっ、私?」
「あいつを殺せえっ!!」
黒装束の男たちが一斉にセリカの元へ行く。
英雄ちゃんに貸しを作るチャンス……!
「ひっ、いやああっ!」
「逃げろ、セリカっ!」
「スキル発動、間に合えええっ!」
私は足を速くするスキルを2つ同時に発動して、セリカの目の前まで一瞬で飛ぶ。
その衝撃波で敵を吹き飛ばし、セリカの腕を掴んで引き寄せる。
「あっ、レイラさんっ!!」
「久しぶり、英雄の猫ちゃんっ」
「た、助かりました……」
「一つ、貸しってことでねっ!」
次々と攻撃を仕掛けてくる男たち。だが、なぜか容易く蹴散らすことができる。
……セリカ。彼女のサポートが的確なおかげか。死角を100%カバーしてくれているどころか、攻撃しやすい様に敵を分散させている。
一対一なら、負ける気がしないっ!
◇◇◇
「はあっ、はあっ、こいつら、何人いるのよ!?」
倒しても倒しても、減らない。挙句の果てには魔物を使役するビーストテイマーが現れて、魔物まで襲い掛かってくるようになった。
「これが、俺たちの恨みだ!」
「とっとと死にやがれ!」
黒装束の男たちは、一斉にこちらに向かってきた。シーマも魔力が底を付き、剣を杖代わりにして立っている。
「レイラさん、シーマを頼みます」
「何を、するつもり? ……きゃあっ!?」
セリカは腰に付けているポーチに手を突っ込んだかと思うと、ボールのようなものを地面にたたきつけ、急に白い煙幕が街を覆い始める。
「スキル……クリエイターモード」
彼女の桜色の瞳が緑色に光りだす。
「セリカ……!」
「シーマ、レイラさんと逃げて。私は大丈夫……」
「でも、あなた」
「ミコっ!」
「あいよっと!」
白くて良く見えない。急に黒猫の娘が私の手を引っ張って、遠ざかる。
「あんた! 友人を見殺しにするつもり!?」
「セリカは煙幕の中でも敵の位置が分かるスキルを持ってるんです!」
なにそれ。そんな強いスキルを、あのレベルで……?
一体、どんな生き方をすればその境地にいけるんだろう。
私は嫉妬を通り越して、関心していた。
そのスキルと、圧倒的な戦闘センスに。
「セリカ! 必ず帰ってくるのよ!」
「レイラさん……分かりました!」
私はアシメの居る所に案内して、セリカを見守ることにした。
……といっても、真っ白で良く見えない。
「また、美味しい所を取られたわね」
もはや、一種の才能かもしれないとまで思えてきた。
「この戦い、レイラさんとシーマが居なかったら、とっくに負けていました」
「っと、こいつを、忘れるなよ……っとぉ!!」
ドスン、と大きな音を立てて、ギザルさんを降ろすシーマ。この男、もう動けないはずの体で、大男をここまで運んできたというの!?
「ギザルさんっ! あたしです! わかりますか!?」
「ぐっ、……ミコぉ……シーマ……」
「良かった、意識はあるみたいだな。とは言え、かなりのダメージだ」
「シーマ、あんたも相当のはずよ。ほら、掴まって」
「レイラさん、アシメさん。もしセリカがピンチだったら、助けてあげてください……お願いします」
シーマがそう言って、フラフラとギザルさんの元へ行く。
黒髪の猫娘、ミコはギザルさんとシーマを支えて、ゆっくりと階段を降りていく。
私は、白煙の中にうっすらと見える彼女の背中を見る。
私の中の獣人に対する、この薄汚い街で堆積していった偏見が、少しずつ取り払われ、純粋な気持ちで彼女を応援する私がいた。
彼女は、なるべくしてなったんだ。英雄に。
「頑張って……セリカちゃん」
「レイラ……」
ありがとうございます。
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これからも応援よろしくお願いします!




