27 ミコ、強くなる! 気がした!
「あなた、もしかしてセリカちゃんっ?」
「えと、はい」
「ホントにホント?」
「そうですけど……って、わあっ!?」
キッカさんは、急に私に飛びついてきた。明日会う予定だったのに、なんということでしょう。
私たちはキッカさんの部屋に案内され、椅子に座り、ここに泊まることになった経緯を話した。
「そうだったんだ。ホント、よくここまで来れたわね」
「そんなに危なかったんですね」
「あたしたち、運がいいのねっ」
まあそうだけど、ミコは本当にのんきだなあ……。
「シーマから聞いたよね。私、どうしてもあなた達のお手伝いがしたいと思って」
「いえいえ、ありがとうございます!」
隣でミコが大きなあくびをしている。もう遅いし、早く寝に行こう。
「また明日お話しましょう! では、おやすみなさい」
「うん! また明日ねっ」
部屋を出た私は、ベッドに腰掛けてニコッとしたキッカさんを見て、扉を閉める。
良かった。シーマの知り合いって言うと、面倒くさそうな人かと思ったけど、案外普通の人だった。
ベッドに入り、横になる。……ミコはおやすみと一言。一瞬で寝てしまった。
……あ! ティナちゃんとシーマに手紙書いておけばよかった!
早く起きて一旦家に帰ろう。心配させてしまうかもしれない。
◇◇◇
「はっ、はっ」
私は朝早くに着替えて家へ向かう。……「カフェにいるから、ティナちゃんのこと、よろしく」と書いた紙を持って。
寝起きで走るのはきっついなあ……。
ショートカットしようとして、細路地を抜けていく。すると、少し先の方からなにやら声が聞こえる。
「おい、そっちは進んでるか?」
「へい、兄貴。順調でっせ」
「よし、明日、計画通り決行するぞ」
「「はいっ」」
3人ほどの男が、怪しい会話をしている。……こっちに来る!
急いで引き返す。……少し遠回りになるけど、大通りを通って行こう。
計画って、なんのことなんだろう。
◇◇◇
家の扉を静かに開け、家の中を見渡す。誰も起きていないようで、安心した。靴を脱いで、ゆっくりとテーブルに近づき、さっき書いた手紙を置く。
「よしっ、ミッションコンプリートっ」
カフェに戻ろうと後ろに振り返った瞬間。
「おい、どこ行くんだ」
「ひっ!」
後ろからシーマの声。どうやら昨日私たちが夜遅くに外に出てから帰ってないのに気づいていたらしく、少し怒ったような声色。私は普段聞きなれないその声に驚き、その場で固まる。
「ご」
「ご?」
「ごめんなさい……」
「いや、いいんだが、どこへ行っていたんだ? 深夜の街は危険だ」
私は変な気配を感じなかったこと、偶然カフェが遅くまで空いていたことを話し、ついでにキッカさんに会ったことも話した。
「妙だ……何も知らないってことは、普通に喋りながら外を歩いてたってことだよな?」
「でも、カフェにいる時と、さっき、変な男たちが妙なことを言っているのを聞いた気がする……計画通りとかなんとかって」
シーマはその言葉を聞いて、目を逸らしていた私の方に近づいてくる。
「セリカ、その男たちには絶対干渉するな」
目の前に立って、目を見てそう言うシーマ。ちょっと怖いんだけど……?
「ね、ねえ、怖いよ。シーマ」
「あっ、すまん……ちょっと色々あってな。もちろん、お前たちに何事も無かったようで安心した。とにかく、その男たちには近づかないでくれ」
「なにか、悪いことが起きるんじゃないの……?」
「……」
「大丈夫だ」
「嘘」
「うっ」
シーマは誤魔化すのが下手くそだな~。……私とミコに言わないってことは、危ないことってことでしょ? ……そして、私たちが付いていくって言うの分かって黙ってたんだ。
「セリカ、すまん」
「付いていく、とは言わないから、話だけでも聞かせてよ」
私とシーマは椅子に座る。
「実は、ここ最近、街で変な動きがあるんだ。まだ、情報はそれだけだが、セリカが言うには、明日決行ということなんだな?」
「えっうん」
「参ったな……俺とギザルで、街の動向を視察して、決行前に阻止する予定だったんだが」
やっぱり、内緒で依頼を受けていたんだ。
「セリカ、今回の件に関しては、俺とギザルに任せてほしい」
「一つだけ条件。もしピンチだったら、電話石で呼んでね」
「ああ、約束する」
まだ数も分からない、どんな計画か、どこでやるのか……とても危険な依頼だ。たしかに、レベル16の私とミコは足手まといになるだけだ。
相手が人だったなら、人質になったり……シーマの気が散るだけだし、家でおとなしくしていよう。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、今日は早いんだねっ」
バフっと音を立てて、座っている私にティナちゃんが抱きつく。
「おはよう、ティナちゃん!」
「おはよう、ティナ」
「うんっ! おはよう、シーマお兄ちゃん、セリカお姉ちゃん!」
ティナちゃんまで心配させるわけにはいかないし、ご飯でも作って気持ちを切り替えますか!
まだ眠そうなティナちゃんを抱き上げ、隣の椅子に座らせる。私は立ち上がり、キッチンの方へ歩く。
「……あはっ! 顔洗ってきな~? 二人とも、寝ぐせすごいっ」
「ん、おおっ」
シーマは自分の頭を撫で、ぴょんぴょんと好き勝手跳ねる髪に気づいて立ち上がる。
「ティナ、行こうか」
「はーい!」
今日は無難にパンとスープでいいや……手抜き? いやいや。
……正直、シーマとギザルさんが不安で他の事を考えられない。今日の、いつ、なにが起きるんだろう。
「セリカ? おい、セリカ?」
「えっ?」
「パン、焦げてるぞっ!?」
「ああっ! ちょ、ちょっと待って! あつっ!」
「なにしてるんだよ、ほら」
焦ってトースターに手を伸ばし、やけどしてしまった。私、自分が思っているよりも周りが見えなくなってる?
「お姉ちゃん、具合悪いの?」
「いやあ、まだ眠いのかなあー? なんてね!」
「ごめんね、シーマ」
焦げたパンの焦げている部分をナイフでそぎ落とし、食べれる状態にしてくれたシーマ。
「いや、それより、指、大丈夫か?」
「あっうん、大丈夫!」
……ちょっと痛いかもだけど。
「さて、じゃあ、手を合わせて、いただきます!」
◇◇◇
「じゃあ、行ってくるね!」
「うん、行ってらっしゃい!」
シーマと手を繋いだ制服姿のティナちゃんを抱きしめ、見送る。
「さて、ミコの所にいかないと」
私も準備して、カフェに向かう。
街を歩いていると、いつもより人が多いような……なんだか、ゴツい装備の人が多い……って、もしかして、この人たち全部悪い人だったりして!?
私は後ろ髪をまとめて帽子に入れて深めにかぶり、目につかない様に自然に歩く。きっと、シーマも気づいているだろう。早くカフェで合流しないと。
「お客さん、まだ開店前だよ」
カフェに入ると、マスターさんが机を拭きながら、こちらを見る。
「あっ、ごめんなさいっ」
私は急いで帽子を取り、ウィンクして舌をちょびっと出す。ミコがよくやる顔芸だ。
「セリカちゃんか、悪いけど、そこの扉の鍵を閉めておいてくれないか?」
「マスターさんも、やっぱり気づいてますか?」
「ああ、街の様子がおかしい」
「あれ、キッカさんとミコはどこですか?」
「ああ、あの子達なら……」
◇◇◇
じー……。
私が二人が居る部屋の扉を少しだけ開けて中を覗き込むと、二人はベッドの上に腰掛けていた。
なんだか、キッカさんの顔が赤い。そして、ミコの体をベッドに押し倒す。
「キッカさん……ダメですって、セリカに怒られちゃう……っ」
キッカさんは無言でミコの服をまくり、白いお腹に手を当てる。
「いくわよ……準備はいい?」
「はいっ……お願いしますっ」
我慢の限界。あの人は私のミコに何をするというんだ!?
「ダメに決まってんでしょおおーっ!」
「ひいいいっ!?」
「セリカっ!?」
私はミコの上にまたがるキッカさんを引っ張り、ベッドの下に投げる。
「あだっ!!」
「ミコ、大丈夫!? 変なことされてない!?」
「あ、えっと、セリカさん……?」
「なんか、勘違いしてない?」
「えっ?」
◇◇◇
しばらくして落ち着いた私に、ベッド下でぐったりしながら、キッカさんは説明をし始めた。
「えっとね、私の魔力をあげようと思って」
「セリカ、さっきのはその儀式なのよ」
「ええっ……そんなこと言われてもっ」
魔力を渡す? そんなの聞いたことない。
「体内の魔力が高いと、体のあらゆる脆弱な面をカバーしてくれるのよ。見えないアーマーと言ったほうが分かるかしら」
なるほど、ゲームやアニメのキャラが壁に打ち付けられたりしても四肢がもげないのもコレのお陰か。
「そ、そうだったんですか……でも、なんで今?」
「あたし、なんか潜在魔力って言うのが普通よりも少ないらしいわ」
ミコはお腹をさすり、俯く。
「この前のボス戦、あたしだけ、ボスゴブリンの咆哮で気絶しちゃったのよ」
……そう言えば、そうだった。……体内の魔力が、あの衝撃波を守ってくれてたんだ。
MPって、魔法を使うためのものだと思っていたけど、もう一つのHPと言っても過言じゃないってことね……。
キッカさんが起き上がり、私の目を見る。綺麗な翡翠のような瞳。見れば見るほど、吸い込まれそう……。
「私のエクストラスキル……危険予知が、ミコちゃんの危険を知らせたの」
「そんな……ほ、他の人たちは?」
「幸い、と言ってはなんだけど、私が危険予知で見たのはミコちゃんだけよ」
「あたしも、今日はなんだか嫌な予感がするのよね」
嫌な予感って、実はスキルだったのかな……?
この世界じゃ、自分だけの小さな癖の積み重ねがエクストラスキルになったりするし、もしかしたらあり得るかも。
ということは、キッカさんはミコよりも「嫌な予感」を感じられる人……?
「ってことは、ミコが危険っていうのはほぼ確実なんですねっ!?」
「私の危険予知が外れたことはないわ」
「そんな……」
「でも、安心して。 危険予知が起きる前のままなら、免れないけど、対策をすればいいだけの話よ」
「それで、魔力を……」
「そういうこと。じゃあ、続きやるから、ちょっと離れてて」
二人はさきほどの体制になり、ミコは壁を見つめている。
「じゃあ、いくわよ……はああっ」
手のひらが黄緑色に光り出し、部屋が暖かくなる。
……。
「終わったわ」
「えっ? もう終わりですか?」
「なんか、体が軽いかも」
ベッドに腰掛け、両手を見つめるミコ。
「あとは、運次第ってとこね。一体、何が起こるというの?」
何かが聞こえる。私とミコの耳が同時にピクっと動いた。それをみて、キッカさんが目を見開く。
「えっ、なになに? なにが起こるの?」
「鍵の閉まった扉を誰かが開けようとした音が聞こえました」
「あたしも」
「キッカさん、ミコを守ってあげてください」
「え? ええ、分かったわ!」
私は音をたてないように、階段を降りた。
……マスターさんの声が聞こえない。
不安が大きくなる。でも、ミコを守らないと!
階段の一番下の段に足をつけたと同時に、1階の奥にある窓から何者かが侵入する音が聞こえた。
「よっと、はぁ、鍵閉めるなら事前に言ってくれよな」
そう言って、パチパチと手のひらについたホコリを払うのは、ティナちゃんの送り迎えを終えて来たシーマだった。
「っ、なんだ、シーマだったのね」
「ん……うおっ! セリカ!?」
「ん? あ、ゴメン!」
私はいつの間にかシーマに向かって構えていた弓を降ろす。
「いやあ、入口のドアが閉まっててな。その、マスターは戸締りをしない奴だから、油断していた。危うくドア破壊するところだったぜ」
「あっはは、そうだったんだ……通りで窓から侵入できたわけだ?」
「んで、ミコとマスターは?」
「ミコとキッカさんは上にいるんだけど、マスターが居なくなっちゃったのよね」
「なんだと? いつ頃からいなくなったんだ?」
「え、分かんない! 私も上に居たから……」
急に街の外で轟音が聞こえる。
「まずい、始まったか!? マスターは後だ! 上の二人と一緒に居ろ!」
「うん!」
シーマは初めて会った時に纏っていた黒い外套と白い剣を持って、ドアの鍵を開けてから、外に飛び出す。
ついに、動き出した!
よんでくださり、ありがとうございます!
これからもよろしくおねがいします。
続きを今書いているんですが、なかなか短く、分かりやすく纏めるのが難しくて苦戦しております。




