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26 真剣なおはなし? それより、散歩っていいよね!


「俺と剣を修行しろ」

「へっ?」




 ……家に帰り、大量の食材を冷蔵庫に押し込むシーマ。ひと段落ついて、テーブルに腰掛ける。


 今日、ギザルさんと久々に再開して、その時に闘技大会を準優勝した剣の使い手と出会ったらしくて、ミコと私に剣を教えてくれると、そう説明された。


 その、キッカさんという方も、私たちのファンで、どうしても会いたいと。


 シーマさんは夕飯をギザルさん達と食べてきたらしいので、2人分のコーヒーと、ホットミルクを作って、テーブルに並べる。コーヒーは、ブラックとミルクがたくさん入ってるやつ。


 私は3人分の夕飯を作りながら、シーマさんの話を聞く。


「私、聖剣しか持ったことないよ」

「なかなかに凄いワードだな」

「あはは」


「まあ、強制ではないが、これからもずっと弓一本でやっていくのは、大変かもしれないと思ってな。これは俺個人の心配だ。大丈夫というなら、それでもいいんだ」


「ううん。私も、もし敵が間近まで来られたらどうしようって思ってたから、丁度いいよ!」

「あたしも、強くなれるなら指導してほしいかも」


「……そうか。じゃあ明日、お昼にあいつらと待ち合わせしているんだ、一緒に来てくれるか?」

「それとティナ」

「うく、ん?」


 ホットミルクを飲んでいて、急に声を掛けられたティナちゃん。カップを口に着けたまま、シーマの方を見る。


「今日はお友達が来ていたらしいな。学校はどうだ?」

「うん! たのしいよ! 今日ね、セリカお姉ちゃんとミコお姉ちゃんが作ったかるたで遊んだんだよ!」

「かるた?」


 私はジャパニーズかるたの説明をシーマにもして、ミコが持ってきたそれを見せる。テーブルに広げて、それぞれの札を眺める。


「へぇ、すごいな。こんな遊びを思いつくなんてな」

「まあねん!」


 なぜか自慢げなミコ。それに、これは私が発明したわけじゃないけど、異世界の遊びとも言えないよなあ……。


「さ! 出来ましたよっと」


 私はテーブルにチャーハンと野菜炒めを並べる。すると、シーマが「おっ」と声を出す。


 どうやらシーマたちの夕飯もチャーハンだったらしい。一口くれと言われて、料亭のチャーハンと比較されるのを少し気にしながら、小さいお椀によそってシーマの前に出す。


「いただきまーす!」


 みんなで恒例となったジャパニーズイタダキマスをしてから、ご飯を食べ始める。


「ん。やっぱり、こっちの味に慣れちまったみたいだな……」

「どういうこと?」

「んや、料亭の飯は濃い味でな。実は全部食べ切れなかったんだ」


「そうだったんだ……それなら、良かった!」

「私、料亭のチャーハンと比べられると思って緊張してたよ!」

「あっはは! セリカお姉ちゃんの料理なら、負けないよ!」

「うましっ」


 みんなで私のことを褒めちぎる。ちょっと恥ずかしいけど、悪い気はしないかな。


「今日は疲れた。先に寝るよ。おやすみ、みんな」

「はーい! おやすみなさいっ」


 部屋に入るシーマを見て、ティナちゃんが付いていってしまった。……って、もうご飯食べちゃったの!?


「ミコ、気づいてた?」

「うん、ティナちゃん、最近ご飯食べるの早くなってる気がする」


「成長期ってやつ?」

「あはは、あたしたちはずっと小食だったけどね」


 私は最近のティナちゃんに成長を感じて、学校に行かせてあげられて良かったと思う。今度、少し遠い所にでも連れて行ってあげようかな。


 ……この世界、観光スポットなんてあるんだろうか。私からすれば、もうこの街が観光スポットなんだけど。


 パステルカラーなこの世界に、まだ見ぬ秘境を夢見て、ベッドに入る。


「ねぇセリカ、キッカさんってどんな人なんだろうね」


 同じベッドで横になっているミコが話しかける。


「うん。明日になれば分かるよっ」

「なんか、適当」

「だって、私も分かんないもん!」


 ほんと、どんな人なんだろう。シーマが紹介する人、相当強い人なんだろうな。


 ……私は、剣を扱えるようになるのかな?


「明日はティナちゃんの送り迎え、シーマが行ってくれるんだよね……セリカ、ちょっとだけ、外に出ない?」

「えっ?」


 ◇◇◇



「夜の空気っておいしい~!」

「ちょっと怖いかも……夜の誰もいない街って、初めて歩いたかも」


 私たちは寝間着のまま、街の大通りを散歩していた。


「あれ、カフェの電気付いてるんだけど」

「ホントだ、こんな遅くまでやってるんだ」

「ねぇ、ちょっといってみない?」


 ミコが悪い顔をしている。きっとマスターさんを驚かせようと企んでいるんだろう。


 もう11時も終わる頃。


 ミコは扉の前で銃を構え(るポーズをして)扉を開ける。


「強盗だ! 金をだせー!」

「おわあああっ!?」


 マスターさんの情けない叫び声、ビックリして尻もちをついた。……カフェのカウンターを掃除していたようだ。


 私はミコの後ろで、手を合わせ、ペコリとお辞儀をした。マスターさんは私の仕草で、ドッキリと気づき、立ち上がる。


「み、ミコちゃんかい!? 驚かさないでくれよ……んで、そちらは……セリカちゃんかい?」

「は、はい……初めまして。うちのいたずら猫がごめんなさい……」


 マスターさんは私を見て、目の前に近づいたかと思えば、急に手を掴んできた。


「ひゃ、ちょっとマスターさん?」

「ファンです! お待ちしておりましたッ!!」


 急に目の前で泣き始めるマスターさん。困惑してミコの方を見ると、なんだかニヤニヤしている。


「さ、マスターさん。約束、守ってくれますよねっ」

「うううあ? ああ、わかった、ぐすっ……ぶうううっ!!」


 豪快に鼻をかみ、立ち上がったマスターさんは、カウンターの向こうに戻り、油が入った鍋に火をつける。


 何をしだすかと思えば、ドーナツを4つほど揚げていた。


 おつかいの依頼を任せたときの、美味しいカフェってここのことだったんだ。


「セリカ、ちょっとだけ、いいよね?」


 甘い匂いが私を誘惑する。……深夜! 甘い物! 太る! でも食べたい!


「ちょ、ちょっとだけなら……いいんじゃない……っ」

「よだれ出てるよ、セリカ」


「ミコちゃん、ありがとな。俺はずっとセリカちゃんに会ってみたかったんだ」


 マスターさんはバンダナを取り、犬耳を見せる。


「えっ、マスターさん獣人の方だったんですか?」

「ふふん、そうよ! このお店は獣人のために始めたんだけど、経営不振で大変な目にあってるのよね」

「おい、少し余計だぞ。……まあ間違っていないが。それに、今はギザルとかいうでけーお荷物まで付いてきやがった……」


「ギザルさん、ここに住んでいたんですね!」

「はい! セリカさんならタダで泊めてあげます……いや、泊って行ってください!」


「なんかあたしの時と態度違う気がするんですけど」

「はっはは! ミコちゃんは接しやすいってことよ」

「そうなの? あたし、接しやすい!?」


 ミコはちょろいな~。横目でそう思っていると、マスターさんもこっちを見て苦笑いする。



「はいよ、そこの箱からお好みで味を調整してくれ」


 マスターさんはコーヒーとドーナツをカウンターに出して、ニコっとする。


「ふぁあ~! おいしそう!」


 深夜の甘い物……罪悪感を感じつつ、ドーナツを口にする。



 二人でドーナツのおいしさにうっとりしていると、マスターさんが急に不思議そうな顔をする。


「ところで、二人ともこんな遅くに、帽子も被らずよくここまでこれたな」

「えっ?」


 マスターさん曰く、夜の街は危険が一杯らしい。盗賊や、グレ集団が徘徊し始める時間帯だそうだ。もちろんそんなことは全く知らずに、10分ほど歩いていたのだが、特に怪しい空気を感じたりすることはなかった。


「……今夜は、外に出ないほうがいいな」


 耳を澄ませると、カフェの外でなにやら話す声が。マスターさんもそれに気づいていたのだろう。


「そんな……怖いよ、ミコ」

「はむっ、……うん? んぐっ、じゃあ、マスターさんに送ってってもらおう!」

「申し訳ないが、俺は戦えないぞ。 こんな深夜に歩き回る奴なんて、男だろうがなんだろうがあの集団に絡まれる」

「えーっ?」


 不満そうなミコ。


「じゃ、じゃあなんでこんな時間まで営業してるの?」

「今日は遅くまで客が居たんだ。片付けて、あと少しで帰れると思ったらお前らが来た」


「ご、ごめんなさい……」

「まあでも、セリカちゃんに会えたし、結果オーライよ!」


 サムズアップ、はにかむマスターさんを見て、ミコは笑い出す。


「なにそれ、おっかしー! セリカちゃん補正すごくなーい?」

「ファンですから」



 ◇◇◇



「ごちそうさまでした、こんな夜遅くにごめんなさい」

「ごちそうさま!」

「ありがとよ」


 マスターさんは私たちが食べ終えたお皿とマグカップを洗って、清潔な白い布で拭いている。


「セリカちゃん、また、来てくれるかい?」

「はいっ!」

「ねー、あたしは?」


 カウンターに手をつき、人差し指を自分の鼻にむけるミコ。


「お前は頼まなくても来るだろ」

「あっ、それ美容院でよくある顧客の扱いがどんどんひどくなるやつだ!」


「おいおい、それは美容院に失礼だぞ」

「あはは、ミコ……」


「ベッドのある空き部屋は二階だよ。俺も朝まではこの店に残ろう」

「ほんと、ありがとうございますっ」


 私は深くお辞儀をして、ミコと一緒に階段の電気を付けて二階へ上がる。


「わぷっ!」

「ちょっとミコ、大丈夫!?」


 私は階段に躓いて転びそうになったミコを支える。


「ん-誰え? ちょっとうるさいんですけど」


 階段の上の部屋からでてきたのは、肌が白い綺麗な女性だった。


「あなたは……」

「キッカよ。あなたたち、一体深夜に……って、あなた、もしかして……」


 キッカって、シーマさんの……?

いつもありがとうございます! これからもよろしくです!

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