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02 ミコと喧嘩。からの仲直り!?

朝。


私は朝早く、街の商店街に向かい、2日分のご飯の材料、ティナちゃんの着替えの服や、私たちの装備を整える。


「……もう、お金なくなっちゃった」


 家と装備一式そろえるのに、魔物退治の報酬金が底をついた。


 ◇◇◇


「ただいま~」

「おかえり! お姉ちゃん!」


 ティナちゃんが元気よく迎えてくれた。私は荷物をおろして、朝ごはんを作り始める。


「ふぁ~あ、おはよ、セリカ」

「おはよう、ミコ」


 私はテーブルに朝ごはんのパンとスープを3人分並べる。


「それじゃあ手を合わせて、いただきます」

「いただきまーす」

「いっただっきまーす!」


 ご飯を食べている間に、ティナちゃんのことについて少し聞いた。


 今は8歳で、2年間学校に通っていた。父が突然いなくなってから、母一人でティナちゃんを育てていたが、段々手に負えなくなってきて、お金と引き換えに男に渡した。母はまだ街のどこかにいるらしいが、前一緒に住んでいた家は空き家になっている。

 ティナちゃんは過労で倒れた親を必死に看病していた。なのに見捨てられた。もう、要らないって。


「安心して、ティナちゃん。今日からはあたしとセリカがママだから。」

「うんっ。 ……ありがとう、ミコお姉ちゃん、セリカお姉ちゃん!」


 ほっぺにパンの食べかすをつけたまま、ニコっと笑うティナちゃん。私は心が浄化されたような気がした。


 この子は、居るだけで癒しになる。私たちの今後の生活において、この子はなくてはならない存在になる。


 ◇◇◇


「じゃあ、行ってくるね。お留守番よろしくね!」

「うんっ! いってらっしゃい!」


 私は矢の補充、ミコは新しい剣を買うために、武器屋によってから、朝の魔物退治に出発して、ノルマである金貨5枚を達成し、ギルドに依頼達成を報告する。


「ありがとうございました。こちら、報酬でございます」


 カウンターのお姉さんに小袋を手渡され、中の金貨の重みを感じ、自分たちで初めて稼いだお金を見て喜ぶ。


 ついに、冒険者になれたんだ!


 ◇◇◇


そんな日々がしばらく続き、私たちがレベル10になる頃。


「ただいまー」


「お帰り、お姉ちゃんたち!」


 ティナちゃんは毎日笑顔で迎えてくれる。


「今日はね! 裁縫のお勉強をしてたんだよ!」


 そういって、手作りの寝間着を見せてくれた。私とミコ、ティナちゃんの三人分だろうか。それぞれ違うサイズの寝間着をテーブルに並べ、褒めてくれと言わんばかりにしっぽを振っている。正直、初めてにしては上手すぎる。


「ティナちゃん、すごい! これからこれ着て寝る!」

「ティナちゃんっ!」


 ミコがティナちゃんに飛びつき、顔をスリスリする。


「あははっ、ミコお姉ちゃん、くすぐったい!」

「かわえーのー。かわえーのー。」

「ふふっ、ミコ、何その言い方? へんなの!」

「まあでもこれだけ上手なら、裁縫師としてお店を出すのもアリかも?」

「ティナもお金稼げるの!?」

「セリカ、いっつもお金の話する~」

「あはは……」


 だって、実際お金が足りない。ティナちゃんの学費もそうだし、ミコは剣の消耗が激しい。私は矢の補充にお金が必要だ。


「あ、そうだ。ティナちゃん」

「えっ?」

「家でのお約束、覚えてる?」


 それは、10日前、初めて家に来た時にした約束事。


「うんっ! 家で一人の時は、知ってる人でも勝手に家に入れちゃダメ! あと、ミコお姉ちゃんに食べられたくないお菓子にはちゃんと名前を書く!」

「よろしい!」


「ええっ!? あたしがこっそりお菓子盗み食いしてたのバレてたの!?」

「あははっ! だってミコお姉ちゃん、一度にたくさん食べるんだもん。バレバレだよっ!」

「えへぇ~? バレてないと思ってたのに」


 ティナちゃんは寝間着を持って、階段の方に小走りで向かう。


「これ、寝室に置いておくね! あと、ティナ、お二階で勉強する!」

「はーい、頑張ってね!」

「うん!」


 ティナちゃんが二階に用意した一人部屋に戻り、お勉強を再開する。 ……遅れた分を取り戻すらしい。私たちは椅子に座り、スキルボードを開く。


 私は一定時間照準を合わせてくれるスキルと、矢の威力を上げてくれるエクストラスキルを取得した。


「あ、もうスキルポイント無くなっちゃった」

「ミコはなににしたの?」

「のけぞり無効スキルと、見切り」

「見切り? エクストラスキル? 私にはなかった」


 内容は、一定確率で数秒先の未来が見えて、敵の攻撃なんかを避けたりできるスキルらしい。


「なにそれ、めちゃくちゃ強くない? 一定確率っていくつなの?」


 ミコはスキル詳細を開いて、固まった。


「れ、0,01パーセント」

「あははっ! 超弱いじゃん! 本当に5ポイントも使ったの!?」

「だ、だって、説明文だけみたら強そうだったんだもん!」

「あっははは! ミコってばホント文章読まないよね!」

「むー」


 ミコは頬を膨らませ、私に飛びつく。


「セリカの意地悪っ! このっ!」

「ぎゃあっ!!」


 尻尾をつかまれた。何とも言えない、なんだか寒気のような、ブルっとくる感覚。そして、めちゃめちゃくすぐったい!!


「あびゃびゃ! もう、もう分かったから! ごめんなさい! 許してええええ!」


 尻尾を擦りながら、脇をくすぐるミコ。


「はあっ、はあっ、ごめ、ごめんて……!」

「ふんっ!」


 ミコは怒って家を出て行ってしまった。


 ミコは怒るとすぐにどこかへいってしまう。でも、数分もすれば寂しくなって自分から仲直りしようと来るのだ。とてもかわいらしい。


 でも、夜になってもミコは帰ってこなかった。私はティナちゃんと一緒に椅子に腰掛けて帰りを待っていた。


「お姉ちゃん、帰ってこないね」

「うん……」


 たった2時間、離れただけだというのに、とてつもない不安が押し寄せる。


「仕方ない、使っちゃいますか、チートスキル!」


「クリエイターモード」


 視界のUIが変わる。全体的に緑がかって、人物は赤、オブジェクトの属性ごとに色がすこしずつ変わって見える。視界の下の方には編集モードと書いてある。


 そう、これがゲーム本来のUIだ。このモードで、本当は街を改造したり、無からアイテムを生成したりできるのだが、私が制限モードにしてしまったせいで、編集モードは使えない。


 だが、ただ一つだけ使える状態の機能があった。それがクリエイターモード専用マップだ。


 このマップには、普通映し出されない人物や建物の名前、敵の位置などがすべてわかるものだ。私は検索欄にミコと打ち込み、検索する。


「いた。ミコ……これ!」


 ミコがいたのは、ここからそう遠く離れていない民家だ。動きが止まっている。……もしかして!


 私は弓と矢を持って飛び出す。


「お姉ちゃん!?」

「ちょっと待ってて、すぐ戻る!」


 どうしよう、もっと早く気づいていれば!


 焦る気持ちで、全力疾走する。


 間に合え、間に合えっ!!


「っ! この家だ」


 私は助走をつけ、ドアを蹴破り、弓を構える。


「ミコから離れて!!」




 私は、目の前の光景を見て固まった。



 ◇◇◇



 ……あれ?


 民家に居たのは、犬族のおばあちゃんと、おばあちゃんの後ろで肩たたきをしているミコだった。二人とも、私の方を見てすごく驚いていた。


「み、ミコ……心配したのよ!」


「ミ、ミコさん、お知り合いかい?」

「え、ええ、私の家族です」


私は蹴破ったドアの上にへたり込む。次第に涙があふれてきた。視界がぼやける。


「ミコ、もし、あの男みたいなのに誘拐されて、変なことされてたらって思って、ひどい目に合ってたらどうしようって……!」


「ごめん、心配かけて」


 ミコはそう言って私をそっと抱きしめる。ミコも少し震えていた。


「ほら、こっち」


 しばらくして落ち着いたので、席に座る。おばあちゃんにホットミルクを用意してもらい、少しのんでから、話し始めた。


「おばあちゃん、ごめんなさい。ドア、壊しちゃった」


 謝る私に笑顔になるおばあちゃん。


「いいんだよ。それだけ、ミコさんのことが心配だったってことでしょう。私も、私を心配してくれるミコさんが嬉しくて、つい長居させてしまったわ。ごめんなさいね」


「おばあちゃんは悪くないわ! 謝らないで!」


 ミコが前に座り、話し始める。


「セリカ、あたしね、あの後外を歩いてたら、階段でおばあちゃんが転んで動けなくなってるのをみつけて、この家まで運んだの。骨折はしてなかったから、軽い傷の手当で済んだけど、おばあちゃんが心配でなかなか家にかえれなかったんだ」


「そういう、ことだったんだ……余計な心配だったのね」


 ミコはマグカップを持っている私の手に優しく触れ、ニコッと笑う。


「さっ、そろそろ帰りなさいな。私は大丈夫よ」


 私たちは準備をして、玄関の前に移動する。


「あっ!!」

「どうしたの、セリカ?」


 ……ドア、直さないと。必死にドアをテープで直そうとする私を見て、おばあちゃんが大笑いする。


「はっはっは! いいんだよ。 どうせもうこの家はボロボロで、時期に引っ越さないといけなかったんだ。今回、いいきっかけになったよ。あなたたちみたいな若者のためにも、こんな階段だらけの住宅街は引っ越すべきだねえ」


 私は最低限、ドアとしての役割を果たせる分の補修をして、おばあちゃんに挨拶をする。


「おばあちゃん、引っ越したらまた会いにいきますね! これ、私たちの住所!」


「分かったわ。また面白い話でも聞かせて頂戴」

「はいっ!」


「いこ、セリカ」

「うん!」


 私たちは、仲直りをして家に帰った。


「ただいまー! ごめんね、ティナちゃん!」


 ティナちゃんは、椅子に座って一人さみしそうにしていた。


「お姉ちゃん!」


 私たちの間に飛びつくティナちゃん。私たちはティナちゃんの頭を撫でて、椅子に座る。


「お姉ちゃん、これ……」

「ティナちゃん……!」


 それぞれ手渡されたのは、お揃いの髪飾り。


「ミコお姉ちゃんと、セリカお姉ちゃんの、仲直りの印……!」


「私たちのために、ありがとう、ティナちゃん!」

「ティナちゃんんっ!!」


 私たちは全力でティナちゃんをほめちぎり、ティナちゃんはとても嬉しそうだった。


 夕食とお風呂を済ませて、ベッドに入る。となりには、ティナちゃん。その奥にミコ。


「ティナちゃん、暑くない?」

「ううん、大丈夫!」


「……そっか」



「明日は魔物退治再開ね。寝坊しないでよね、セリカ」

「わかってまーす。 ……それじゃあ、おやすみ」


 今日は大変だったなぁ……。




 私は疲れからか、とてつもない睡魔が襲いかかり、すぐに寝てしまった。


読んでくださり、ありがとうございます。



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