23 取り戻したのは
「いらっしゃい、英雄さん! 今日は早いね!」
商店街の八百屋に来て、朝ごはんの材料を買いに来た。
「おはようございます、おじさん!」
「うーっす」
新鮮な野菜がずらっと並ぶ店内を見て回る。
「シーマ、何食べたい?」
「俺が決めていいのか?」
「だって今聞けるのシーマしかいないんだもん」
「そうだなー。スープでも作るか? 果物も摂った方がいいか。……パンに卵とベーコンをのせて食うのもアリだな。」
「ふふっ、お腹空いてるんでしょ? 全部買っちゃお!」
「ぁ……バレてたか」
「バレバレ」
私はシーマの目の前に立って、笑顔を見せる。
「冷蔵庫空っぽだったし、ティナちゃんにだけ、ご飯作って食べさせてたんでしょ?」
目にクマが出来ているシーマ。髪もなんだかベタベタしてるかも。きっと私のことを心配して、自分のことは後回しにしていたんだろう。ホントに、私の家族は……っ
どうしようもなく心配性なんだから!
私も、お腹が空きすぎて気持ち悪い。さっさと食材買って、家に帰ろう。
シーマのリクエスト通り、必要な材料を買って家に帰った。
「シーマお兄ちゃん! セリカお姉ちゃん! どこいってたの?」
「ああ、朝ごはんの買い出しにな。おはよう、ティナ」
「あっうん、おはよう! シーマお兄ちゃん! セリカお姉ちゃん!」
「おっはよ~! 昨日はゴメンね、ティナちゃん!」
「ううん! 元気そうで良かった! ……ミコお姉ちゃんが全然起きないの。どうしよう?」
「ふふっ、朝ごはんができるまでは寝かせておこう?」
そう言ってエプロンに着替え、朝食を作り始める。
メシの匂いに釣られたかのように、ゆらゆらと寝ぼけた顔で部屋から出てくるミコ。
「あっおはよう、ミコ」
「ふぁ~。おはよん」
ミコがテーブルに座り、目をこする。まだ眠いのかな。
カウンターの向こうからは、楽しそうに会話する3人の姿。
ああ、これだ。……私の世界。私の家族。
シンクには、シーマの部屋でこぼしたミルクが入っていたマグカップが置かれていた。きっとミコが片付けてくれたんだ。……それで寝坊したのかな? なんて。
「ミコ、マグカップ片付けてくれてありがとね」
「ううん。もとはと言えばあたしがセリカのこと押し倒したからだし」
「押し倒した……?」
ティナちゃんが不思議そうな顔をしてミコを見つめる。
「い、いや!? 別に変なことしたとかそんなんじゃないからね! ティナちゃん!」
「おーおー、ミコ、お前俺たちが居ないのを良いことに英雄さんをまた独り占めしてたのか? ファンが知ったら泣くぞ?」
「うっさい! シーマが言うとなんかムカつく!」
「はあっ!? なんかひどくねーか!?」
「あははっ!」
「ふふっ」
次第にみんなが笑い出す。幸せだ。
……。
「さて、出来ましたよっと!」
私はリクエスト通りの朝食を作り、配膳する。みんな、お腹が空いていたのか、よだれを垂らしてまだかまだかと体を前のめりにする。
机に並ぶのは、焼いたベーコンと目玉焼きを食パンの上に乗せたもの。カットしたリンゴ、朝買った新鮮なミルク!
「うわぁ~っ、美味しそう!」
目を輝かせるティナちゃん。
「これはね、シーマのリクエストなのよ!」
「よだれが止まんねぇぜ!」
「セリカ、早く早く!」
みんなの待ちきれないという顔を見て、クスっと笑う。
「はいはい、じゃあ手を合わせて、いただきます!」
「いっただっきまーす!」
「いただきます!」
「いただきま~!」
……。
しばらくは、このままがいい。
幸せな時間。
私は、パンを小さくかじった。




