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22 これは悪夢ですか?


 ……。


 ……なえ……。


「香苗?」

「はっ」


 周りを見渡す。ここは、私が前世で通っていた、高校の教室。私は一番後ろの窓側に座っていた。目の前には、椅子を逆に座ってこちらに話しかけてくる女子。たしか、名前は……。


「千沙、どうかした?」

「いや、授業終わってからずっと固まってたからさ、どうしたんだろって思って」


 状況についていけないという顔をして下を向いている私を覗き込むように見る。


 この子は、たしか私のお友達。私と同じ、ゲームが趣味の女の子。スポーツも得意だけど、ちょっぴり頭が悪い。休日はいつも私とオンラインゲームなどで遊ぶ。


「ねぇ香苗、今日取りに行くんでしょ?」

「えっ、なにを?」


 千沙はため息をついて、グイっとこっちに顔を近づける。


「はぁ? あんたが今日発売日って言ってたんじゃん。授業中寝すぎて頭おかしくなったんじゃないの~?」

「あっははは……」


 私は私の……机にかかっていたバッグに手を突っ込み、スマホを取り出す。


 ……RPG島づくりゲームの発売日。ってことは。


「私があの世界に飛ばされる前に戻ったってこと……?」


「ねぇ香苗? ほんとに大丈夫なの?」


「ああっ、うん! そうそう! 今日取りに行くんだ! もー楽しみすぎて夜寝れなくってさ! 頭おかしくなっちゃってるかも!」


「なんじゃそりゃ? あ、先生が来た」


 千沙は座りなおし、前を向く。ホームルームが終わり、教室から生徒がゾロゾロと出ていく。私と千沙も、校門を出てバスに乗った。


「ほい」

「えっ、ありがとう」


 千沙が私にイヤホンの右を渡してくる。それを耳にはめて、一緒に音楽を聴く。


 なんだか、懐かしい。


 こんなに加工された音楽は、向こうの世界には無かったなぁ……。それに、座るだけで移動できるバスも。


 この世界を思い出せば思い出すほど、あの世界の住人の顔が脳裏に浮かぶ。


「ミコ、ティナちゃん、シーマ、ギザルさん、アシメさ……」


「なえ? ……香苗!」

「ひゃい!」


 横腹を突かれて、意識が現実に戻る。


「なんかの呪文? ほんと今日大丈夫なの?」

「うっ、うん! あ! ここゲーム屋さん近いから、先に降りるね! じゃあまた明日!」


 私はイヤホンを返して、パスをリーダーに当て、段差を降りる。


「あっ、いっちゃった。 ……ゲーム屋近いの、次のバス停なのに」


 ◇◇◇


「芹沢香苗さん……こちらですね」

「……ありがとうございます」


 私は予約していたゲームを受け取り、家に帰る。


 道中の、目の前を横切る黒猫、私を追い越す赤い自転車、隣の家に止まる救急車。全部、なんだか見たことのある光景だった。そのすべてが懐かしく感じる。


「おかえり、香苗。ご飯は?」


 家の扉を開けると、太っていて、メガネを掛けている男性が私に声を掛ける。たしか、兄だ。


 オタクな性格の兄で、私はこの人の影響でゲームにハマったんだった。


「今日は、いらないわ」

「うん? 機嫌悪いのか? いらないわって……どこかのお嬢さん?」


 今となっては昔一緒にゲームをしたな~くらいしか覚えていない兄を適当に避けて、自室に入る。


 早く、あの世界に帰りたい。急いでパッケージを開け、ダウンロードして、起動する。


 設定は全く同じにして、ヒロイン枠にミコによく似た娘を作る。


 ゲーム、スタート


 そこは、見慣れた村……とは少し違う。それに、壁や草などのオブジェクトがローポリのジャギジャギだった。これはVRゲームといっても、少しグラフィックのクオリティが低い。


 やっぱり、これが本物のゲーム……あの世界は、なんだったんだろう。


 わざと目の前に配置したボス魔物は、一歩も動かない。


 そして、極めつけは。


「あなたが冒険者? あたしはミコ、これから一緒に冒険しようね!」


 ミコ、に似た誰か。ソレがゲーム内で設定された定型文を淡々と読み上げる。


 ここで限界が来て、膝をついて泣いた。


 ……涙は、出なかった。


 私はすぐにログアウトして、この世界から去った。


 ……。


 部屋で制服のまま部屋のど真ん中で横になっている私は、ゲーム機を外し、また、涙が止まらなくなって、声を出して泣いていた。


「う、みこ、ミコおおっ! みんなあああっ!!」


「お、おい香苗、どうしたんだ!?」


 隣の部屋から兄が駆けつけてくる。私のことを必死になだめる。


 昔は仲が良かっただろう兄に、嫌悪感を抱く。


 私の居場所は、もうどこにもなかった。


 全てを失った私は、その日から部屋を出なくなり、ご飯も食べなくなった。もう、2日ほど経過しただろうか。


 部屋は閉め切っていて、朝か夜かもわからなかった。でも多分、夜だろう。


 ……向こうの世界なら、ちょうどシーマとミコが帰ってきて、私たちは楽しく夕食でもとっているんだろうか。


 私の脳内は、ミコ、ティナちゃん、シーマが、私じゃない私と一緒に楽しく暮らしている光景を何度も何度も繰り返し再生した。


 兄が気遣って時々声を掛けに来るが、無視をしている。私が声を掛けてほしいのは、兄じゃない。


「セリカ!」

「セリカお姉ちゃん!」

「セリカ」


 脳内でひたすらに、忘れないように、あの世界の住人の声を再生する。


「おいしー!」

「大好き!」

「ありがとう」


 ……なんで、戻ってきたの? ……戻して欲しいなんて、頼んでないっ!!


 私は手元にあったゲーム機を窓にたたきつけた。窓ガラスが割れる音が響いて、家族全員が慌てて部屋に入ってきた。


「おい、香苗!」

「何をしてるの!?」

「大丈夫か、香苗!?」


 ……ふふっ、心配してくれてるわよ、香苗。


 誰!? 私を元の世界に戻してよっ!!!


 まだ、まだ始まったばかりじゃない!!


 これからだっていうのに……!


 家族の後ろには、不気味な笑みを浮かべる少女。……そう、あの世界の私だった。


 桃髪の少女は、背を向け、遠くへ歩いていく。


「待って! 待ってよ! まだっ、まだこれからっ!!」

「落ち着け香苗! どうしたんだ!!!」


 家族全員で居もしない者を追いかけようと手を伸ばす私を抑える。


 私は、幻覚を見ていた。


 目の前には、ガラスの上で暴れる私を止めようとして、体中血だらけの家族。


 家族の顔は、歪んでいた。いや、歪んでいたのは私の方か。



 その禍々しい表情を見て、私は住宅街に響く声で叫ぶ。


 ◇◇◇


「きゃああああああーっ!!!」

「っ! セリカっ!?」

「セリカお姉ちゃんっ!!!」


 ベッドの上で叫ぶ私を囲い、涙を流していた3人。


「はあっ、はあっ!」

「落ち着いて、しっかり……!」


 私を優しく抱きかかえる黒髪の少女。私は恐怖で手をはねた。


「えっ……? セリカ……!」

「はあっ、はあ、誰っ!?」


「誰って、ミコだよ? セリカ……っ!」


 酸欠だろうか、耳が遠く、視界がモノクロの砂嵐のようになってよく見えない。


 目の前に何があるか、誰に話しかけられているか分からない恐怖で暴れまわる。


「目を覚ませ、セリカあああっ!!!」


 シーマの叫び声でようやく、さっきのが夢であったことに気がつく。


 私はミコに抱かれたまま、ひたすらに泣いた。目が痛くて開けられないくらい。


 ◇◇◇


「ミコ、ごめんね」


 ミコが用意してくれたホットミルクを両手で持ち、ベッドの上で上体だけ起こす。ティナちゃんとシーマは気を遣ってティナちゃんの部屋に上がっていった。


「セリカ、丸3日、ずっとうなされてたんだよ。 体調はどう?」

「3日も? ……うん。まだ、混乱してるかも……」


「いったい、どんな夢を見たの?」


 私はこの世界に来た経緯を説明した。そして、今回の夢の内容も。人探しスキルといった、クリエイターモードの本来の使い方も説明し、ミコは混乱しつつも、ちゃんと話を聞いて、理解してくれた。


「そんな、前世の記憶、じゃなくて、異世界から飛んできたなんて……


「ミコ、でもね、今の私はこの世界の住人で、生まれたときからの記憶もちゃんとある。転生前の記憶なんてほとんど残っていないわ。……忘れてたの。 私に兄が居たことすら」


「んっ、ぷ、セリカ?」


 優しく抱きしめるミコに、私はキスをする。


「私、怖かった。もう、この世界に戻れないって思って、もうほとんど覚えてない、あの地獄のような世界で、何もかも失ったまま過ごすんだ、って……!」


 ミコは私を強く抱きしめ、今度はミコからキスをした。私をベッドに押し倒す。


 押し倒した衝撃で、手に持っていたホットミルクが入ったマグカップをベッド下に落とす。


 しばらく、ミコは私を離さなかった。苦しい、けど、なんだか安心する。


 私の体が、ミコを欲しがっている。


 ◇◇◇


 ミコはベッドに入り、私の隣で寝ていた。もう朝だ。


 私は起き上がり、部屋を出る。


 そこには、毛布を掛けて椅子で寝ている2人の姿が。シーマは私に気づき、ずり落ちた毛布をティナちゃんに掛け直して、起き上がる。


「ごめんね、こんなところで寝かせちゃって」


「ああ、2階で寝ようっていったんだが、ティナが近くに居たいって言ってな。」


「詳しい事情は聞かないでおくが、一つだけ。……おかえり、セリカ」


 私はその言葉を聞いてとても嬉しくなり、シーマを軽く抱きしめる。


「うおっ!? ……セリカ?」


「良かった。本当に。みんなに会えないって思ったら、私どうにかなりそうだった。それは、ミコだけじゃない。ティナちゃんや、シーマも、今の私には大切な家族なんだ」


「セリカ……!」


 ◇◇◇


 3日ぶりのお風呂に入って、着替えた後、キッチン周りを見回す。……とてもきれいだ。冷蔵庫の中はすっからかんで、私を看病?観察? している間、何も飲まず食わずだったのに気が付いた。


「ねぇシーマ。ちょっとだけ付き合って」

「うん? 俺でよければ」



 ……まずは、朝ごはんだ!

読んでくださり、ありがとうございます!


評価感想ブクマ色々よろしくお願いします!


この前評価をくださった方めちゃくちゃありがとうございます!!!!!!!!!


この作品を読んで評価してくれて超嬉しいです!!!!!!!!


正直嬉しすぎて仕事がうまくいっていません。いい感じに空回りしています!!!!!!


ちゃんと仕事もします!!!!

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