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19 2人きりは不安だって? 予想的中は聞いてない!


「どの依頼にしよっかな~」


 ギルドについて、しばらく依頼を見ていたら、機嫌が直ってきたミコ。俺たちは昨日サボった分、金貨10枚ほどの依頼をこなさなくてはならない。


 金貨5枚の小さい魔物退治を2つ受けるか、金貨6枚くらいの魔物の素材集めの難しい依頼を受けて、たくさん倒して追加報酬を狙うか。


 俺たちが最終的に受けた依頼は、巨大コウモリ型魔物の翼を集める依頼。洞窟に大量発生したコウモリを倒して、依頼を受けたときに支給されたデカいカゴに死体を入れてギルドに納品するというものだ。


 俺たちはそのコウモリが大量発生したと言われている洞窟に向かった。


 ◇◇◇


「とうちゃーく! さあ、ガンガン倒すわよ!」

「落ち着け、洞窟の魔物はそこらの魔物とは違う」

「わかってるわよ!」


 無理やりやる気を出して空回りしそうなミコを落ち着かせながら、洞窟に入る。


 ……日光が入ってこない程度に暗い場所まで来て、辺りを見渡す。


「ねえこ」

「シッ」

「んむっ」


 俺は声を出そうとしたミコの口を抑え、焦る気持ちで周りを見回す。


 辺りには、ギラギラと赤い眼光が無数にあった。


「こ、これは……!」


「ぷはっ、これ、全部コウモリなの!?」

「ミコ、俺から離れるなよ。そんで、目を閉じろ!」


 バサバサと襲い掛かってくる数百のコウモリに、俺は魔法を使った。


 「落ちろっ!」


 簡単な光を出す魔法。コウモリはバタバタと地面に落ちていく。


 そして、とどめの幻影魔法。コウモリは混乱して、動けなくなる。


「すっごぉ……」

「ぼーっとしているな。この魔法は効果時間が短い。さっさと息の根を止めて、カゴに入れるぞ」


俺はなるべく傷つけないように、コウモリの首辺りを伸ばして神経を切っていく。それをカゴに回収するミコ。


 ◇◇◇


 俺たちはカゴ一杯にコウモリを詰め込み、布をかぶせて洞窟を出た。


「ふうーっ、依頼完了! さっさと帰ってセリカの看病しないと!」

「これだけいれば、かなりの額になるだろうな。今日はいい仕事ができた」

「ほんと、シーマって便利よね」

「あのなぁ、俺を道具みたいに言うのやめてく」


 急に左太ももに衝撃が走り、ドクドクと鈍痛が遅れてやってくる。


「ぐっ!?」

「シーマ!?」


 俺はカゴの重みと左太ももの痛みで地面に膝をつく。よく見ると、太ももには矢が刺さっていた。


「あっ! 離してっ!」

「ミコ!?」


 視線の先には、盗賊風の見た目のヒゲをはやした3人の男たちと、男の一人に腕を掴まれて身動きが取れないミコ。


「はっはは! これ、お前らがやったのか?」


 俺の背中に大量に入った巨大コウモリを見て、パチパチと拍手をするリーダーっぽい見た目の男。


 俺が持っていた依頼書とカゴを取り上げられ、手の空いている男に持たせる。


「くっ! 返せ! 薄汚い人間どもめえっ!!」


「薄汚い人間? ハハハっ! 面白れえっ! お前たちは人間じゃないってか!?」

「きゃあっ!」


 一人の男がミコの帽子を強引に取り上げる。獣耳があらわになり、男たちは笑い出す。


 男はミコのロングスカートの中に手を入れ、尻尾を掴み上げる。


「ひっ、やめて……うっ」

「ミコを離せえええっ!!」


 スカートが裏返り、中が丸見えだ。ミコは泣き出してしまった。


 ミコ、ごめん、ミコっ!


 俺は何もできない自分に怒る。


手元の黒い勾玉を握る。


ダメだ。セリカに助けは呼べないっ! 俺の力で、何とかしないと......!


「ははっ、獣人のくせに、人と一緒に生活するなんざ、くそ気持ちわりぃ!!」


尻尾を引っ張り上げ、ミコのお尻を思いっきり叩く。ミコの悲鳴が森中に響き渡る。その瞬間。


「ぐあっ!」

「ぐおっ?!」

「ぎゃああっ!」


 ものすごい速さの矢が、男たちを貫き、力なく倒れる。


 俺は、矢が飛んできた方向に視線を向ける。そこには、寝間着姿のままのセリカが居た。


「はあっ、はあっ……! ミコ! シーマ!」


 ゆっくり走ってくる。彼女もかなりしんどいはずだ。……どうして、ここが分かったんだ!?


 俺は激痛に耐えながら、セリカの元へ走る。


「ぐっ、セリカあっ!」


 俺が倒れそうになるのを抱きかかえるようにして支えるセリカ。


「はあ、はあっ、ごめんね、間に合わなかった!」

「いや、助かったよ……」


 ガタガタと震えながら、足に力が入らない俺をゆっくりとおろす。セリカの体が熱い。相当無理をしてここまで来たのだろう。


 セリカは立ち上がり、弓を男たちに向かって構える。


「ひいいっ! なんだ、お前!!」


 奥の2人は肺を貫かれ、リーダー格の男は左太ももと肩を撃たれていた。そいつが情けない声をあげながら、後ろにズルズルと下がる。


 セリカはうずくまって泣いているミコの元へ行く。そして、俺と同じように声を掛けてやるが、心のダメージは相当のものだろう。ミコは立ち直れそうにない。


「……よくも、よくも私の家族をっ!!」

「ひっ、ひいいいいいいんっ!!」


 聞いたことない、セリカが激怒する声。ゆっくりと男に近づいていく。


「この依頼書とカゴは返す、返すから殺さないでくれえええっ!」

「死んで」


「ミコとシーマの痛み、こんなもんじゃ全然足りないけど、生きていられるほうがよっぽどイヤ」


 そう言って、矢を引き、男にとどめをさそうとする。


「セリカ、ダメだあっ!」


 俺はセリカに飛びつき、弾道をずらす。放たれた矢は男の左耳を掠め、森の奥へ消えていった。


 男は恐怖の限界に達し、気絶した。


「シーマ、安心して、殺さないから」

「嘘だ、俺がずらさなければ、あいつは死んでいたぞ!」

「シーマっ!? 離してよ! ねえっ!」


 弱っているセリカを止めるのに、俺は上からのしかかるだけで良かった。


 ミコがひどい目にあった。それだけで、人を殺せるんだ。こいつは。


「落ち着け、セリカ! 今こいつらを殺しても、お前が罰を受けるだけだっ!」

「シーマ! 離してっ! 私はこいつらを許せないっ! 私の家族、ミコとシーマを傷つけたっ!」


 ミコと、俺を? 


 ……俺は、セリカにとってはただの居候だと思っていた。俺はミコの親切心で、家に入れてもらったが、セリカにちゃんと歓迎された覚えはない。


 2人きりで話す機会もそれほどなく、勝手に居候しているやつだと思われていると、そう思っていた。


 でも、俺のことも、家族って、俺のためにも、怒ってくれてた、なんてっ……!


 俺は抵抗するセリカを抱きしめた。セリカは驚いて、力が抜ける。


「シーマ、ちょっと……!」


 俺は優しく、耳元で話しかける。


「セリカ。……俺たちを助けてくれてありがとう」


 一言、そういうと、セリカは泣き出し、俺を弱々しく抱きしめ、俺の胸あたりに顔をうずめる。


 殺意を感じなくなったセリカを見て安心し、俺は気絶した。




 俺も、家族になれたんだ。


 夢の、獣人との、家族に。



よんでくださり、ありがとうございます!


これからも応援よろしくお願いします!

お楽しみに! (してくださっている方、本当にありがとうございます、超励みになります)


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