17 セリカ、風邪をひく 狐さんからお礼 ミコ視点
ギザルさんが帰った後、席に着き、みんなでご飯を食べる。
「ティナちゃん、ゆっくり食べなよー?」
セリカ、今日はご飯の進みが遅いな~。
ティナちゃん、ほんと毎日毎日なんでも美味しそうに食べるなあ……見てる側は飽きるって? いやいや。全く。
あたしは苦手なアスパラをよそ見しているセリカのお皿に移した。少しの罪悪感から周りを見渡す。まずい、シーマが見ていた!
「へへっ、ミコ、お前は少しティナを見習え?」
「ふぇ? お姉ちゃんが?」
不思議そうな顔をするティナちゃんに手を振り、ごまかす。
「ティナちゃん、なんでもないのよ! さ、食べよ?」
「ミコ、アスパラ嫌いだった? ごめんね」
「えっ」
かなり低いトーンでそう言われて、ドキッとした。怒られたのかと思ったけど、落ち込んでいるのだろうか? セリカは下を向いていた。
「ううん! そんなに落ち込まないで! ちゃんと食べるから! ほらっ」
自分のお皿に戻したアスパラを一気に口に運ぶ。
……に、にがっ……!
「うえ、えっ!」
「ちょっとミコ、無理しなくていいから!」
私の背中をさするセリカ、ティナちゃんとシーマも不安そうに見つめる。
あたしは、極度の野菜嫌いだ。
……ドアをノックする音。扉に一番近いあたしが席を立ち、扉を開ける。目の前には、狐族のローブを着た細目の男が居た。
「どちら様?」
狐族の男は、礼儀正しくお辞儀をして、話し始める。
「どうも、フリャの英雄様と、メンバーの方々。えー、この度はフリャの危機を救っていただき、ありがとうございました」
「いえいえ、あたしはなにも……」
「それで、なんですけども、えー」
テンポ悪く、狐族の男はゴソゴソとポケットから白いクシャクシャの紙を取り出す。それを広げて、ピッピっと紙を伸ばしてこちらに見せる。
「お礼と言っては何ですけども、えー、こちらですね、えー、バザール会場にですね、貴方様専用の出店スペースを設けさせていただきました、と」
紙に書かれていたのは、以前ゴブリンたちと戦ったバザール会場の図。真ん中に赤いマーカーで丸を付けられていた。きっとここに私たちが自由に出店していいということだろう。
「うわあ! こんなにいい場所貰っちゃっていいんですか?」
「それはもちろんでございます。貴方様のお陰で来週のバザールを行うことができますのでね。ぜひとも、えー、ご参加いただきたいと思うのですが」
「だって、セリカ……セリカ?」
「ああっ! えっと、ありがとうございます、嬉しいです!」
椅子に座り、朝ごはんとにらめっこしているセリカが、遅れて反応する。
……どうしたんだろう。顔が赤いし、ぼーっとしてる……もしかして、風邪?
……。
「では、わたくしはこれで。次のバザールは来週の日曜日ですので」
「はい、わざわざこんなところまでありがとうございました」
狐族の男が帰り、私はフラフラと立ち上がるセリカの体を支えるようにして、おでこをくっつける。
なんだか熱い。やっぱり熱かも。
「セリカ、もしかして風邪ひいたの?」
「え? ……私が?」
「大丈夫? セリカお姉ちゃん」
「セリカ、今日はシーマと依頼やるから、セリカは寝てて。」
「えっでも、昨日サボった分稼がないと……」
「セリカ」
あたしはセリカの肩をつかんで正面に向ける。セリカは強く言わないと無理をする。
「あたしたちのために頑張ってくれるのはとっても嬉しいけど、それでセリカが無理して、つらい思いをするのは、あたし、嫌」
……なんだか、始めてセリカにこんなこと、言った気がする。嫌、だなんて……
「ミコ、ごめんね……シーマさん、今日はお願いしてもいいかな?」
「ああ、当然だ。お前は安静にして早く風邪を治せ」
「……ありがとう、みんな」
「セリカ、離すよ」
「うん……えっ、ひゃあ!」
私がセリカを離すと、シーマさんはひょいっとセリカをお姫様抱っこして2階の寝室に運んで行った。
「じゃあ、準備していこっか……」
「うん……」
「セリカお姉ちゃん、大丈夫かなぁ」
「きっとすぐに良くなるわ」
階段を降りてきたシーマ。セリカと話していたけど、内容まではわからなかった。
私とシーマは着替えて、ティナちゃんを学校に送る。道中、ティナちゃんはよっぽど心配なのか、ずっとセリカの話をしていた。
「じゃあ、気をつけろよ、ティナ」
「行ってらっしゃい、ティナちゃん!」
「行ってきます! シーマお兄ちゃん、ミコお姉ちゃん!」
校門をくぐり、玄関へと走っていくティナちゃんを見送り、私たちは振り返ってギルドの方へ向かう。
「はあ」
「依頼の帰りに、なにか買っていこうか。セリカの好物とか」
「うん」
「……あんまり気にしていると、お前まで病むぞ。それに、戦いで集中できなくなって、それでミコが怪我をしたらセリカがまた心配して無理をする」
「そうだよね。……よしっ! がんばるぞー!」
私は無理やり自分に喝を入れ、いつもよりも歩幅を広げて歩いた。
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