11 ミコとシーマ ② 依頼? 寄り道? 悪だくみ!
この話は、ミコちゃんがメインのストーリーです。
今日は少し肌寒いな。
あたしは秋冬用の厚手の服を着て、深く帽子を被る。今日はティナちゃんとセリカのために、シーマと二人で依頼をこなすことにした。
「じゃあ、行くよ、シーマ」
「おう、忘れ物はないか?」
「大丈夫よ、セリカ、行ってくるね!」
「留守番よろしくな~」
「行ってらっしゃい! 二人とも!」
あたしは笑顔で手を振るセリカに背を向け、家を出た。
「シーマ、今回の依頼、いいのがあったんだって? 依頼書見せてよ、どんな依頼?」
「ほいっ」
あたしは手渡された依頼書を見てつい叫んでしまった。
「ええっ!? ……依頼主セリカって、どういうこと?」
「へへっ、驚いたろ? 今回の依頼はセリカが用意したものだ。よっぽど俺たちを外に出したくないみたいだな」
内容は、ただのおつかいだ。食材を現地調達、いや、商店街で買えるものばかりだ。
よほど心配だったのだろう。
「ほんっと、寂しがりやよね! セリカって」
「ああ、そうだな」
「シーマ?」
どうかしたのかな、なんだか暗い顔。下を向くシーマを覗き込むように見ると、ふと思い出したかのように顔を上げる。
「ミコ、ちょっと寄り道してもいいか?」
「えっ」
◇◇◇
あたしが案内されたのは、民家に化けたカフェ。外観だけ見ればただの家だが、中身はこじゃれた装飾や音楽が流れている雑音がなく、落ち着いた雰囲気のカフェだった。
どうやらここは、シーマ行きつけのカフェらしい。あたしはシーマが座った席のとなりに座る。適当にカフェオレとドーナツを注文した。 ……店内の静かさになんだか緊張してきた。
カフェオレとドーナツが目の前に出され、それを受け取って一口。
「ここ、俺のお気に入りのカフェなんだ。ミコにも紹介したかったんだ」
「あたしに?」
「ああ、マスターさん。こいつはミコ。お前の愛するファンの相棒だ」
シーマさんが話しかけている、店内なのに黒いバンダナをつけている渋い顔の店員は、あたしを見るやいきなり前にスッと寄ってきた。
「あなたがミコちゃんかい!?」
一瞬で理解した。これは変態の知り合いの変態だ。間違いない。きっと私は、今、面倒ごとに巻き込まれようとしている!
「あ、あはは、どうも」
あたしは苦笑いをして右手を頭の後ろにもっていく。渋かっこいいおじさんの店員は、バンダナをはずした。
とげとげした髪の毛と同時に、ピョコっと犬耳が生えた。
「店員さん、犬族だったんですか!?」
「ああ、ここはひそかに暮らす獣人のためのカフェだ。 ……といっても、開店してからまだ日が浅く、それにあの外観で、知名度が低すぎてまだ客がほとんどいないんだ。」
このお店は、3か月ほど前に開店したそうだ。街で修行したマスターさんが、獣人たちの憩いの場にできないものかと、有り金すべて使って作ったカフェ。
その分、客が居ないとなればすこし寂しい気もする。ということは
「ということで、ミコさん、俺のカフェにセリカちゃんを連れてきてほしい! 頼む、この通り!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
カウンターから出て、私の目の前で土下座するマスターさん。渋いイケおじの情けない姿は、とても見てて恥ずかしいものだった。
知名度を手っ取り早く上げるため、セリカを店に読んで英雄の宣伝力で客を増やそうという考えだ。
それと、マスターさんはセリカの大ファンらしい。いつぞやの新聞のセリカの写真が切り抜かれて、壁に額縁に入れて飾られている。あまりの熱意にちょっと寒気がしたかも。
セリカが獣人というのは、もうとっくに街中にバレている。今の街の流れなら、確かにセリカが通っているカフェなんて宣伝をすれば、獣人も行きやすいし、たちまち大儲けかもしれない。
獣人を嫌う人間がわざわざ獣人行きつけのカフェなんて寄らない。とすれば、セリカの宣伝力は獣人と、獣人が好きな人間に限定して効果を発揮する。
それってすごくない!?
「でも、そんなことにセリカを使わないでください!」
「でも?」
「いや、えっと」
「じゃあ、セリカちゃんを連れてきてくれたら、一杯タダだ! お菓子もやる!」
あたしがドーナツをちびちび勿体無さそうに食べてるのに気づいて、あたしにとっておいしい条件を提示するマスターさん。
このめちゃめちゃおいしいドーナツを無料で食べ放題……!?
おっと、よだれが。 だめだめ、落ち着いてミコ、そんなのセリカを良い様に使ってるのはあたしじゃん! このこのこの!
あたしが自分のことを小突いているのを見て、困惑する二人。
「ミコ、ごめん、マスターと手を組んで金儲けしようと思ったんだ。お前ら、戦闘は仕事でしぶしぶやってるんだろ? 儲かるからって理由なら、自分たちの知名度を使って稼ぐのも許してくれると思ったんだ」
「そんなこと、考えてくれてたんですか……」
たしかに、あたしたち、というか、セリカは戦闘が好きじゃない。
といっても、戦闘のセンスはあるし、街に来てからメキメキ実力をつけて、今ではシーマさんの背中を預けられるほどの実力だ。
セリカは、この仕事しか現状今の生活を維持できないっていってたけど、なんか
お店を開いて、平和に暮らすってのも悪くないわね。まあ、あたしなんかに経営の勉強なんて無理だけど。
だって、勉強大っ嫌いなんだもーん!
「シーマ。気持ちはありがたいけど、みんなが譲ってくれた英雄の称号を、金儲けに使うなんて、セリカはきっと怒ると思う。」
「そう、だよな……せっかく仲良くなれると思ったのに、イメージ下がっちまったな……」
落ち込むシーマさん。あたしは必死にフォローする。
「ううん。シーマはあたしたちのために色んなこと、してくれるじゃん。セリカはともかく、あたしは嫌いになったりしない!」
「ミコ……!」
顔を上げ、目を見開いている。
セリカにも、ちゃんとシーマの話聞かせてあげないとね。今だに2人きりで話す機会無いし。
「とと、それとこれとは別で、セリカ同伴でドーナツと一杯無料、ちゃんと覚えててよね!」
「また、来てくれるのか!?」
マスターさんは嬉しそうにしていた。シーマを抜いてはじめての常連客があたしなんてね。なんだかあたしも嬉しいかも。途中までちびちび食べていたドーナツを口に放り込み、カフェオレで流し込む。
「んっ、ふう、ごちそうさま! さあ、シーマ! さっさとおつかい行くわよ!」
「お、おう。 じゃあまたな、マスター」
「ミコちゃん、来てくれてありがとよ」
「ううん! それじゃあ」
マスターさんがお辞儀をして、お店の外で見送る。
「シーマ、いい寄り道ができたわ」
「そう言ってくれると嬉しいな」
「いつの間にあんな悪だくみをしてたの?」
「あー、それは内緒ってことで」
目をそらすシーマ。
「なにそれ! まあいいけど。セリカにはちゃんとシーマから話してよね。」
「分かったよ」
「セリカに嫌われたりしてねっ」
「……」
「冗談よ! 本気にしないで」
苦笑いして、頬をかくシーマ。
あたしは、依頼書に書いてある食品を揃えるべく商店街へ向かった。
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