09 帰還、入学準備!
私は下に降りて、ミコが作ってくれた朝ごはんをみんなで食べる。
「「いただきまーす」」
「ミコお姉ちゃん、このパン、何入れたの?」
「内緒。当ててみて?」
「うへぇ? ……分かんない」
ミコはホットミルク以外の料理を作ると、なぜかレシピ通りに作っても失敗する。
今回のパンには、なぜか隠し味にクッキーが入っていた。すごくボソボソとして、食べにくい。
「ヒントはね、あたしの好きなお菓子!」
「ミコ……もしかしてクッキー入れたの?」
「正解~! さっすがセリカ!」
嬉しそうなミコを見ると、指摘するのを躊躇ってしまう。ティナちゃんのためにも、料理くらいマトモに作ってほしいというのが本音だけど。
扉の向こう、荷物受けに何かが届く音がした。
「わたし、取ってくるね!」
残りのパンを口に放り、タタタっと玄関の方に向かうティナちゃん。持ってきたのは、一通の手紙だった。
「セリカお姉ちゃん宛てだ。ギルドからだ!」
ギルドという単語を聞いて、私は立ち上がり、手紙を受け取る。
「……やっときた!」
中身は、「ギルドからの追加報酬が用意できたので、取りに来てください」という内容だった。
「私、ちょっとギルドに行ってくるね」
「セリカ? どうかしたの?」
「内緒!」
私は着替えて、帽子を被り、家をでた。
早朝、まだ外には朝の散歩をしている老人がぽつぽつといる程度で、いつもの活気ある街という感じではなかった。
「セリカ、どこ行くんだ?」
上から声が聞こえると思ったら、私たちの家のベランダで洗濯物を干しているシーマさんの姿があった。
「シーマさん!? どうしてそこに?」
「へへっ、すまんな、勝手に。 ……ミコに許可をもらって、しばらく一緒に暮らさせてもらうことになった。邪魔か?」
「い、いえ……その、ありがとうございます」
私が頭を下げると、クスクスと笑い出す。
「えっと、私、ギルドに追加報酬を受け取りに行ってきます。シーマさん、ミコとティナちゃんをお願いします」
「任されましたとさ。……んじゃ、気をつけてな」
「はい!」
ミコが、許可? ミコが許可って、あの子が人間を信用するなんて。
分かっている。シーマさんがとてもいい人なのは。でも、人間嫌いのミコがOKを出すなんて珍しい。正直、私はまだシーマさんのことよく知らない。
「んま、ミコがいいって言うならいっか!」
深く考えるのをやめ、歩き出す。
普段は混んでいる道。私はスルスルと前に進めるのが楽しくて、早足でギルド本部がある城に向かった。
「おはようございます。来てくださったんですね、セリカさん」
「はい! おはようございます!」
すっかり、名前を覚えられちゃったな……
私はギルド本部の依頼カウンターにいるお姉さんに挨拶をする。そして受け取った手紙を渡し、追加報酬を受け取った。中身は金貨100枚ほどで、ティナちゃんの入学金、制服代、道具代すべてここから出しても、おつりが出るほどの量だ。
「今回の件は、本当にありがとうございました。実は私、フリャの出身なんです」
「そうだったんですか!?」
「はいっ! だから私の手で渡したくて……ウチの家族を助けていただき、ありがとうございました!」
私の前でお辞儀をするこの人、ギルドのお姉さんは、フリャの出身で、実はお姉さんの家族もゴブリンによる被害を受けていたそうだ。
私、この人のためにもなってたんだ。なんの縁もないと思っていた人と少しだけ、繋がれた気がした。
たくさんの金貨が入った大きな袋を両手で抱え、ギルドのお姉さんに挨拶をしてから、ギルドを出た。
このお金で、ついにティナちゃんを学校に……!
今となっては、この街に来た一番の理由である [ティナちゃんを学校に行かせる] がついに達成される。ここまでそんなに日数は立ってないけど、とても大変だったなあ。
ティナちゃん、喜んでくれるかな……!
私は期待に胸躍らせ、ティナちゃんの学校に行く姿を想像しながら家に帰った。
◇◇◇
私は家に帰り、皆を下に集めて学校に行く費用が貯まったことを報告した。その後、ティナちゃんを連れて学校に行き、編入手続きを行う。
ティナちゃんは少し前までフェウロ村の小さな学校に通っていたため、同じ年の子と同じ学年にしてもらった。
「じゃあ今からティナちゃんの体の大きさを測りますね~」
学校の先生らしき人がティナちゃんと私を個室へ案内する。担任を持たない事務の人だろうか。
幸い、ティナちゃんの体のサイズに合う制服が余っているようなので、それを受け取って、細かい部分は私が手直ししよう。……多分、ティナちゃんが手直ししたほうが上手なんだろうけど。
「どうぞ、これが制服で、こっちは帽子です」
先生らしき人は私たちの前にある机に制服を広げ、帽子を手渡す。青と白、ボタンや小さな装飾に黄色が使われた涼しげなデザインの制服だ。正直、とてもかわいい。
「帽子も専用のものがあるんですね」
「はい! 学校の創設者のエザモンさんは、熊族の獣人だったのです。どの種族でもみんなと同じ生活が送れるよう自ら帽子をデザインしたそうですよ」
この学校では、獣人も混ざって授業を受けられるよう、登校から下校まで、ずっと帽子を被ってもいいらしい。村の学校じゃそんなの無かったから、少し変かも。……でも、獣人のことを想ってのことだよね! エザモンさん、ありがとう!
「学校では、獣人であることを隠さずに過ごしている子ばかりですよ。ティナちゃんも、人間の子ともすぐに仲良くなれるわ!」
「本当!? お姉ちゃん、ティナ楽しみ!」
「うん! 頑張ろうね、ティナちゃん!」
獣人であることを隠さなくてもいいのか……。いじめとかなければいいけど。
「では春休みが終わる1週間後から、よろしくお願いします。若くて綺麗なお母さん!」
「ひゃ、ひゃい!」
「うふふ、よろしくね! お母さん?」
ティナちゃんはクスクスと笑う。私、ついにお母さんになっちゃった!?
……ってことは、ミコはパパ? シーマさんはお兄さんかな?
私は受け取って机に広げた制服をたたみ、カバンに入れる。私たちは先生に挨拶をして別れ、学校を出た。
「セリカお姉ちゃん、ありがとうね? ミコお姉ちゃんも、シーマお兄ちゃんも」
「みんな、ティナちゃんのことが大好きだからだよ」
私はティナちゃんの頭を撫でる。ニコニコしているティナちゃんの顔を見て、自然と表情が崩れる。
「ティナちゃんの幸せが、私たちの幸せだよ」
「うん! ……でも、それはティナも一緒」
撫でている私の手を止め、両手で掴むティナちゃん。
「お姉ちゃんたちがケガしたりして帰ってくるの、ティナも痛いよ。だから、無理しないで?」
「ティナちゃん……!」
私はティナちゃんを抱きしめる
魔物退治以外にも、なんか手に職つけようかな。なーんて。
現状、あの家と3人の生活費を賄う手段は、冒険者として依頼をこなすことしかない。
でも、危ない仕事ばかりで、ティナちゃんを心配させるのも良くないなあ。
ひとまず、これで入学の手続きは完了!
「ティナちゃんの制服姿、みんなにも見せてあげよ!」
「うん!」
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