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狙撃銃




バン!!!


大きい音と共に岩が砕け散る。砕けた岩は80メートル離れた場所にあり()()微塵(みじん)になっていた。


「すごいです!エネル様!あんな大きい岩を粉々にするなんて!」


少し離れた位置で見ていたシエルが大いに褒める。


「ありがとうシエル。やっと馴染んできたし安定してきた。命中率も良くなってきたし威力も上々。コレなら問題は無いな」


シエルに銃を渡してから数日間、王宮で管理している山で訓練をしていた。ここは関係者以外滅多に入る人はおらず、もし立ち入ったことが分かれば重罪になる。訓練にはもってこいの場所だった。


「よし、じゃあついでに他のも試すか」


そう言ってエネルは、大きなカバンから長いものを取り出す。


「エネル様、それは?」


「これも同じ銃だよ。ただこれは、遠くの敵を倒す用だけどね」


そう言ってエネルは立ち膝になり銃を構えスコープを(のぞ)く。茂みから出てきて、止まっていたウサギを撃ち抜く。


「よし。今日の夕飯の素材ゲット」


今の発言で、シエルは驚いていた。直接、彼女の表情を見た訳では無いがそう思った。


「一体、なにに向けて撃ったのですか?」


銃を仕舞い立ち上がる。カバンを持ち森の方に進む。その後をシエルは追いかける。


「さっき撃ったのはウサギだよ。遠くにいたから分からないと思うけど、約600メートル離れた所にいたのを撃ち抜いた」


「ろ、600メートル!?」


シエルの驚きは仕方ないだろう。いくら魔法でも、射程は限りがある。魔法を極め、魔力のコントロールが完璧な人でも約50メートルが限界だろう。


攻撃範囲や地形によって多量は変わるが、大きく変わることは無い。


「この銃の利点は遠距離から敵を攻撃できることだ。いくら魔法や弓が上手くても、限界がある。魔法は遠くの敵を倒すためには多くの魔力とそれなりに威力がある魔法を使わなければならない。そのせいで、広範囲に被害が出てしまう。でも、銃なら敵のみ倒すことが出来る。慣れれば、乱戦の中でも敵だけを撃ち抜くことも可能だ」


魔法も万能ではない。この世界では魔法を作ることは出来ない。神が人々に与えた魔法。それは人が魔物と戦えるために神が与えたものと言われている。


魔法よりも便利なものがあるが、それは【スキル】と言われ、色々な能力がある。


ただ、自分の望む能力じゃなかったり、能力が得られないこともある。

スキルは、全員発現する訳では無い。


「エネル様、これはすごい発明ですよ!」


すごい褒めるシエルだったが、エネルはあまり嬉しそうではなかった。どことなく暗い表情だった。


「エネル様?」


「ごめん。この銃だけど、これは秘密にする」


この発言に驚いたシエル。こんな便利なものをなぜ広めようとしないのか疑問に思った。


「どうしてですか?」


「これは、確かに便利だよ。敏感な動物を狩る際には適切な武器だ。でも、逆に言えば他国がこれを使い暗殺に使うことだって可能なんだ」


これを聞いてシエルは察した。銃はあまり主流ではく、金持ちや貴族の武器と言われていて人気があまりない。だがもし、この銃を知れば敵対してる勢力のトップを殺すことが簡単に出来てしまうことになる。


「早計でした。申し訳ありません」


「いいよ。ちゃんと考えて答えがわかったんでしょ?なら全然大丈夫」


エネルは、シエルが自分で考え答えを出すことが嬉しかった。自分で考え答えを出す。それができるようシエルに教育してきたからだ。


「信用できる者に教えても、必ずどこかで情報は漏れる。敵の手に渡らなくとも、相手が危険と判断したら攻めいられる。そうならないためには、隠しておくことも時には大切なんだ」


この言葉を聞いてシエルは立ち止まった。エネルも止まりシエルの方を見る。シエルは少し暗い表情をしていた。


「エネル様、私は絶対に誰にも漏らしません!」


「大丈夫。シエルはそんなことしないって信じてるから」


そう言ってエネルはシエルの頭を撫でる。シエルは暗い表情から徐々に戻り笑顔になった。


シエルがすぐ落ち込んだりするのは、シエルが幼い頃に親に捨てられたからだろう。だから、自分が必要ない、いらないと思われるかもしれないという不安からシエルは怖いのだろう。


「シエルは僕にとって必要だ」


シエルにとって深い傷を、少しでも治してあげられればいいのだが、治してあげることが出来るのか不安だ。


仕留めたウサギの方へと行くと、昆虫系の魔物が寄ってきていた。


「まあ、臭いで寄ってくるよね。シエル戦闘態勢」


そうエネルが声をかけると、シエルは腰に手を回し短剣を両手に抜く。茂みから昆虫系の魔物が10匹ほど現れた。


「数は多いけど、大丈夫?」


「やってみます。いえ、やってみせます」


「無理はダメだよ」


「はい!」


エネルの質問に即答し、昆虫の魔物に突撃する。シエルは次々と昆虫の魔物の首を斬り飛ばしたり、叩き潰して行った。


魔物を狩るのに数分もなかった。


「やりました!エネル様!」


「うん。見てたよ。しっかりと的確に対処してたから文句なしだったよ」


「ありがとうございます!」


エネルは、シエルが倒した魔物をどうするか悩んでいた。魔石は需要あるが、昆虫系の魔物の素材は処理が面倒なのだ。


「シエル。周りの警戒を頼んでいいかな?」


「分かりました。なにかするのですか?」


「うん。面倒だから、魔物を焼く」


エネルは、手袋をして土魔法で浅く穴を作り、そこに魔物を集める。

そして火魔法で魔物を燃やす。


基本的に、森で火属性と雷属性の魔法を使うのは

御法度だ。


森が燃えてしまうからだ。燃え広がるだけならいいが、森から魔物が散乱し各村や街に被害が出てしまう。


だが、燃え広がる前に、完全に鎮火できるほどの水魔法を使えば防ぐことは可能だ。


「そろそろかな?」


燃える魔物を見ながら水魔法の準備をする。準備ができて直ぐに水を注ぎ火を鎮火(ちんか)する。


穴の中には魔石だけが残り、魔物の体は燃えカスと化していた。


燃え残った魔石を回収して、土魔法で元の状態に戻す。


「よし。じゃあウサギを持って帰ろうか」


「はい!」


ウサギの血抜きをしようと思ったが、シエルが警戒している間に血抜きをしていたようだ。


「今夜はウサギのシチューにしようかな?」


「本当ですか!?嬉しいです!エネル様の料理はすごく美味しいので!」


この世界に転生して、魔具の研究以外にも楽しくやっていることがある。それは料理だ。


科学=料理と言っても過言ではない。


「今日は少し味を変えようと思うんだ。シエルにも手伝ってもらいたいんだけど、いいかな?」


「エネル様がよければ是非!」


シエルは、すごく喜んでいた。普段シエルには料理するところを見せているが、味付けなどは見せていなかったし、コツなども教えていなかった。


シエルの手料理は日に日に上がって行ったが、シエルの中ではまだ勝てていないと思っているのだろう。


「今回は特別に味付けを教えるよ」


「ほ、本当ですか!?」


「うん。特別にだよ」


「ありがとうございます!」


シエルの喜ぶ顔を見て、自然と頬が緩む。


前世で孤児院に居た頃は、カノンと一緒に料理をしていた。いつも孤児院の院長が1人で作っていたのを手伝っていた。


ただ、カノンや院長と同じように作っても味の再現はできなかった。


悔しくはない。悔しくない。

そして、城までシエルと雑談をしながら戻った。




シエルと共に調理をした。シエルに味付けの工程を教えながらウサギのシチューやデザートを作った。

そして、それは食堂で起きた。


いつものように家族全員で夕食を取ったのだが、ウサギのシチューが二皿あった。


しっかりした理由は無いが、シエルが自分のシチューとどれほど違いがあるのか聞きたかったからだ。

左側にシエルのシチュー。右側にエネルのシチューを置いた。


そして、エイナル兄さんたち3人の回答はシエルのシチューの方が美味しいと答えた。


「俺は左側かな?」


「私も左」


「左のシチューね、コクがあってまろやかだわ」


最初にエイナル兄さんが答え、次に父のアウデ。最後に母のシーナが答えた。


僕が前世でカノンが作った味を再現しようと科学的に再現したが、料理の腕は専門家には勝てないと改めて思った。



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