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拳銃




次の日、エネルはシエルを連れて地下の研究室に来ていた。

始めて来た部屋にシエルは緊張していた。


「エネル様。ここは一体…?」


エネルは部屋を明るくしたあと、奥の机の方に向かう。


「そこの椅子に座ってて」


シエルは辺りを見渡しながらソファーに座り、エネルを待つ。すぐにエネルは机から本や紙を持って来て、ソファーの前にある机にそれを置く。


エネルはシエルの向かい側のソファーに座り話し始める。


「シエル。これから話すこと、見た物は他言無用だよ。絶対だよ」


真剣な顔で、シエルに注意をするエネル。

シエルは表情でそれは嘘じゃないとわかる。


「もし、話したらどうなりますか?」


シエルは恐る恐るエネルに質問する。


「その時は、君を殺さないといけない。それだけ重要なことを話すことになる」


シエルは背筋が凍るように寒気が走り、息を飲んだ。しかし、シエルは真っ直ぐな瞳でエネルを見て答えた。


「私は、どんな拷問にかけられても、死んでも言いません!」


エネルは、彼女の答えを聞いて少し微笑んだ。素直で真面目な彼女が予想通りに答えたから。


「じゃあ、話していくよ。この国では魔具を作っているのは知ってるよね?」


「はい」


「ここは魔具を作ったり資料がある部屋だ。これからシエルにはこの国の重要機密。我が国がある理由でもある」


エネルが説明していく途中、シエルは質問をした。


「あの…エネル様。先祖代々の秘密なんですよね?私なんかが聞いてもよろしかったのでしょうか?……いえ!別にどっかの国に持ち出すとかはしません!絶対に!」


シエルの質問は正しかった。親族以外は教えていないこの秘密。しかし、エネルはそれも質問されることを予知していたように笑顔で答える。


「確かに。その疑問は正しいよ。でも、これは絶対ではないんだ。自分の信用できる者や婚約者などに教えることもある。身近ならお母様やネモが該当者だね。だから、僕はシエルを信用してる。だから、教えるんだ」


「信用…」


シエルはエネルの言葉を聞いたあと、少し頬を赤らめて上を見たり、さらに顔を赤くして首を振ったりしていた。


「シエルには、魔具の基本などは教えないけど。この研究室に出入りの許可をする。あとは…コレ」


エネルは机に黒い棒を取り出し置いた。シエルは、エネルが置いた物を見て質問をする。


「エネル様。これはなんでしょうか?」


「これは()だよ」


シエルは答えに驚く。銃はエネルの父アウデが作った代物だ。アウデが作った銃は長く、1発しか撃てないものだった。

しかしエネルが出した銃は、小さい銃でアウデが作ったものよりもデザインが違った。


「この銃はお父様のよりも使い勝手がいい。名前は【拳銃】って名前だ。お父様のやつは1発しか撃てない代物だけど、これは2発撃てる」


エネルが出したのは【ボンドアームズ】。この世界で作るには中々時間がかかる物だ。それを意図も簡単に作ってしまったのだ。


「これを護身用で持って欲しい。お父様の銃と違ってバレないし、扱いやすい。扱い方は教えていく」


「でも、エネル様。魔具ってものすごく高い物なんですよね?そんな物をいただく訳には」


シエルの言葉でエネルは少しキョトンとして話し始める。


「これはまだ魔具にはしてないよ」


「え?」


シエルは理解できなかった。魔具を作ったり設計などしてる研究室で話す内容と思って来たからだ。


「魔具は希少金属に魔法文字を刻むことで魔具にするんだ。だから、これには刻んでない。希少金属じゃないからね」


エネルは、シエルが取りやすいようにリアグリップをシエルの方に向けて置いた。

シエルは受け取り、大切に持った。


「ありがとうございます!一生大切に使います!」


シエルは丁寧に持ち、笑顔になった。そんな彼女を見てエネルも喜び、机にもう1つ拳銃を置く。


先程シエルに渡した物よりも重そうで、形がだいぶ違った。シエルのは黒色だったが、エネルが出した拳銃は銀色だった。


「これは、エネル様のですか?」


「うん。シエルのと違うけどね」


「すごくお似合いです!」


「ありがとう」


エネルは自分の拳銃を持って説明し始める。


「僕の銃はシエルのと違って威力がある。でも、反動が強くてシエルには耐えられない。そっちの銃は反動があまりないから扱いやすい」


シエルはしっかりと聞き、覚えていった。真面目な彼女らしいかった。


「銃は練習した分だけ上達する。これからは訓練でやっていくからね」


「はい!頑張ります!」


シエルは意気込み、気合いが入っていた。本当に素直で良い子だ。


「それじゃあ、訓練所に行こうか」


そして、2人は訓練所に行って銃の練習をするのだった。




訓練所で銃の練習をしたエネルとシエルは食事など済ませた後、研究室に来ていた。銃の状態と整備のために。

エネルが銃の状態を見ながら作業をして、その横でシエルが見ていた。


「エネル様。1つ、お伺いしても宜しいでしょうか?」


「うん。どうかした?」


エネルはそのまま作業続けたが、話しは続けた。


「エネル様はどうして、拳銃の扱い方をあんなに熟知しているのですか?私はほとんどエネル様と共に行動しておりますが、拳銃の試しなどをしたことを見たことないので気になったのですが…」


シエルは不思議に思っていた。使う姿を見たこともないのに扱い方を熟知していて、尚且つ的確に悪い所を教えて改善するエネルは不思議だった。


エネルは作業の手を止めて机から2枚の紙を取り出し作業してる机の隣に紙を置いてシエルに説明し始める。


「お父様の銃と僕の銃の違いはなにかな?」


置いた紙にはアウデが作った銃の設計図とエネルが作った銃の設計図が書かれていた。


「形や大きさが大きく違うのと、使える銃弾の数……それ以外、わからないです」


シエルはしょんぼりして少し俯いてしまった。エネルはシエルの頭を撫でる。シエルはエネルと目があったあと、エネルが説明し始める。


「分からないことはわからないって言っていいんだよ。誰も責めないし、知らない事を知れるのはいいことだよ。逆に、知ったか振りをする方が最悪だからね」


エネルは、撫でる手を止めて戻し。銃の違いを説明し始める。


「お父様との銃の違いは、さっきシエルが言ったこともあってる。僕の銃は、小回りや扱いやすくして作ってある。でも、お父様のはシンプルで飛距離もある。だけど持ち運びや整備が大変なんだ。それに、僕が作ったのはあくまでも護身用。自分の身を守るため……それに。この形にする時にどうしたらこうなるのか?とか。危険性とか考えるからね。完成して使う時の感じとか…だから、大体は予想だけど、合ってるから大丈夫。そんな感じだよ」


シエルは、エネルの説明を聞いて納得していた。


「すごいです…設計図の段階で分かるなんて」


感動していたシエルは、本当にすごいと思っていた。

その様子を見たあと、エネルは作業に戻った。


(前世の世界で使ってたのを造っていて、知ってるなんて言えないよな)


エネルが転生する前の世界。日本で兵器を造っていた頃にエネルは扱い方を習っていた。

転生する前。【生駒 (れん)】の時。





エネルが転生する前の話



(れん)は、人気の無い階段を降りていた。薄暗く足元がハッキリと見えない階段を降りていく一人の男。階段上からは賑わってる声が聞こえてきたが、下に行くにつれて声は薄くなる。


階段を降りきると、すぐ前に扉があり男はそのまま入って行った。

部屋の中は、しっかりとしており綺麗なBARだった。


中には酒を飲んでいる者や食事をしている者が多く居た。店には外国人や日本人仲良く会話をしていた。

男はBARの奥の部屋に行き入る。

部屋に入ると数人の男と外国人の女性店員が居た。


「時間ピッタリだな」


部屋の中にいた1人の男が呟く。見た目は20代後半で鍛え抜かれた体は引き締まっており強そうだった。


「お忙しい中お呼びしてすみません。神園(かみぞの)隊長」


フードを下げながら名前を呼んだ男は(れん)だった。


「気にするな。こっちも話したいことがあったからな」


神園(かみぞの) 勇祐(ゆうすけ)】。特殊部隊A、通称【A隊】の隊長をしている人だ。

蓮は席に座り、酒以外の飲み物を注文する。


「お先にどうぞ」


「おう。【平和共存会】にスパイが入り込んでたから捕まえた。ほとんど情報が漏れる前に捕らえたがどうする?」


蓮は少し考えたあと、どうするか話した。


「そのままでいいよ。尋問しても無意味だし、拷問はやる方もやられる方も辛いからね。食事をしっかりすればいいよ。持ち物やGPSとかは取ったんでしょ?」


「ああ。もう機能はしてないし他も見たがこれ以外は無かった」


「ありがとう。話しはそれだけ?」


「まぁな。それで、そっちの話しは?」


蓮が離そうとすると、ちょうど注文した物が届いたのでそれを1口飲んだあと話し始める。


「実は、銃の扱い方を教えて欲しいんです」


「銃?でも、作ってるのはエネ様だろう?分かるんじゃないのか?」


「理論的に分かっていても、実際に使うのとは訳が違いますから。だから教えて欲しいんです。計画通りに行かない可能性もあるので。知っておいて損は無いと思ってます」


蓮の決意の瞳を見た神園は、素直に答える


「わかった。基本は全て教える」


「ありがとうございます!隊長」


「礼を言われることは無いよ。あんたの目指す未来のために協力するんだ」


この時の特殊部隊は4つの部隊があった。どの部隊も平和共存会のメンバー出ない事をしっかりと検査して選出された部隊だ。蓮が死ぬときはまだ完成はしていなかったが、編成中の特殊部隊Eも存在していた。


しかし、A隊は編成される前に蓮の共存会に入っていた。政府から信用を得ることで深く情報を得ることが出来た。


彼らは、戦争で親や友人を亡くした者達だ。その戦争の真実を知ったことで政府の敵になることを決めた彼らには、共存会はうってつけだった。


「なら、また今度会う時に教えますよ。今日は帰ります」


神園はハイハットを被って部屋を出ていった。他の人も出て行き部屋には蓮1人だけになった。


「ありがとう。隊長」


そう呟いて飲み物を一気に流し込み部屋を出るのだった。




転生する前の事を思い出しながら整備するエネル。一通りの整備をしてシエルに銃を渡す。


「一通りの整備の仕方は教えた通りだよ。あとは自分でしっかりと管理してね」


銃を受け取り、喜びながら答えるシエル。


「わかりました!ありがとうございます!エネル様!」


「なんか違和感があったら言ってね?あとは……はいこれ」


そう言って、エネルはシエルに小さな箱を渡す。シエルが受け取ると、ガラガラっと音が鳴り見た目よりも重かった。


「それは弾だから、自分で持っててね。無くなった時は言うこと」


「はい!わかりました!」


シエルの喜ぶ姿に微笑むエネル。自然と笑顔になり、会話をしながら、自分の銃を整備するのだった。



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