会議
魔具研究室。
そこに3人の人影があった。父・アウデと兄・エイナル。
二人は研究室にある椅子に座りエネルの向かい側に座っていた。
「シエルは最近どうだ?」
開幕アウデが先陣を切って聞いてきた。エネルはアウデの質問に答える。
「素直で優しくていいです。伸び代もあるので、大丈夫だと思います」
アウデは、少し顔を緩ませ話を続ける。
「確かに、素直で料理も上達してきた。伸び代もある。だが…」
「俺たちが聞いてるのは、他の国の諜報員じゃないかってことだよ」
アウデの発言を遮り、エイナルが説明をする。エネルは、素直に質問に答える。
「その可能性は、ほとんど無いと思います。カマかけをしてみましたが、特に引っかかることは無いので」
アウデは脱力し、イスに背中を預ける。
「私の考えすぎか…だがもし、裏切ったり諜報員なら責任は取れよ、エネル」
責任とは、裏切った時に殺せということだ。何故こんな話をしているかと言うと、魔具についての秘密をシエルに教えるかどうかを決めるためだった。
アウデは深く考えたあと、エイナルの方を向いて話がかける。
「エイナル。お前ならこの件、どうする?」
エイナルは話は聞いていたものの、自分が関与することは少ないと思っていたので、少し考えてから話し出した。
「俺ですか?……俺はいいと思いますよ。素直だし、エネルも大丈夫と言ってるなら大丈夫ですよ。それに、しっかりと責任も取ると言ってるので」
「そうか…」
アウデはエイナルの返事を聞いてまた考え始める。
右手を眉間にまで持ってきて、人差し指と中指立て、人差し指は不定期にリズムを刻んでいた。アウデが考える時の癖だ。
そして、指を止め。エネルの方を向く。
「…許可する。しかし、何度も言うように責任は必ずとること。これが条件だ」
「お約束します」
エネルは、覚悟のある表情で答えた。その表情を見たアウデは、安心して立ち上がった。
「じゃあ、話は終わりだ」
「よいしょっと!」
エイナルも立ち上がり研究室の出口の方に向かう。そう思ったのだが、アウデとエイナルは、エネルの研究室を見渡し、気になる方に視線がいってしまう。
「ん?あれは…」
「すごい」
二人はそれぞれ、エネルが作った設計図や書類、試作品の魔具を見ていた。いや、魅入ってしまった。
「はぁ…」
エネルは深くため息を吐くと、アウデとエイナルを捕まえて部屋から追い出したのだった。