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魔具



それからほぼ毎日、【魔具】についての勉強が行われた。午前中は【魔具】についての勉強。午後からは魔法や剣の勉強や訓練をしていた。


「魔具を作るための素材は、普通の鉄などではない。普通の鉄で似た者を作ることはできるが魔具程の威力などは無い」


アウデの長い説明で、隣では少し頭を悩ませる兄エイナル。


「ん〜…無理…」


机の上に伸びるエイナル。あまりにも早く、そして多い情報でパンク状態だった。


「お父様、質問よろしいですか?」

「許可する」

「魔具に刻まれている文字は、なんの文字なのでしょうか?普通の文字と違うのでわからないです」


エネルが言う通り、魔具に刻まれている文字は普通の文字ではなかった。


「いい質問だ。魔具に刻む文字は普通の文字と違う。魔具に刻む文字は【魔法文字】と言う。エイナルやエネルは魔法の勉強、どこまで進んでいるか分からないが【魔法文字】は簡単な初級魔法と違い上級以上の魔法で確実に当てるときや、精度・威力・スピード。あらゆる魔法能力を向上させるための文字を【魔法文字】という。魔法というのは神が我々、人間に与えたモノでその中に含まれているのが【魔法文字】だ。しかし、【魔法文字】は理解できる人があまりいなかったために知っている人は少ない。だが、しっかりと理解し扱えれば初級魔法でも上級魔法の威力にまで底上げできる文字なのだ!」


アウデの長い説明で、さらに頭を悩ませる兄エイナル。

エイナルは頭が悪いのでは無いのだが、覚えるのにはゆっくりと教えてもらう方が合っている。父アウデの説明は分かりやすくカットしてあるのだが、説明が早くエイナルは苦悩していた。


「もう、無理…」


完全に机の上に伸びてノックアウトしたエイナル。

対してエネルは、前の人生では科学が大好きで新しいものなどにはすぐに知識が入っていった。なので、エネルにとってはワクワクな時間だった。

二人の様子を見たアウデは、休憩をはさみ次の話しの準備に取り掛かる。


(剣や勘、書類系はエイナルが上手くて。魔具などはエネルが上手い……足して二で割ればちょうどいいのだがな…)


そんなことを考えながら、モノを出したりしまったりするアウデ。


「兄さん。あと少しでごはんなので、頑張りましょう。頑張ったあとのご飯は美味しいですよ」

「う〜…」

「あはは」


(完全にノックアウトしちゃったな。でも、魔具って面白いな。前の知識を活かして、この国を発展させて行こう。今度は失敗しないように)


エネルは、魔具の勉強時は他の勉強よりも楽しみで頑張っていた。前の世界でも、科学が好きで楽しんでいたため。二度目の人生でも好きな科学が出来ることに喜びを感じていた。


「よし、じゃあ。続きをしていくぞ」

「うぅ〜……」


早くも新しい授業で唸り始めるエイナルだった。




魔具の授業が始まってから2ヶ月が過ぎた。エイナル兄さんは、相変わらず覚えるのが遅くやっとのペースで着いてきている。対して僕は、一度聞いたことを覚えて魔具についてはドンドン詳しくなっていった。

今日は授業がなく、エイナル兄さんと二人で中庭にある木陰で寝転がっていた。


「ふぅ〜、やっぱここが落ち着く〜」


エイナル兄さんが言う通り、この場所は落ち着く。快晴で気持ちいい風がなびく。


「そうですね〜。気持ちが安らぎます」


前世では、ずっと部屋に監禁状態で。寝る間も惜しんで兵器を造っていたので、安らぐことがなく、身も心もガタガタだった。


「なあ、エネル」

「ん?なんですか?兄さん」


涼しい風が吹き、髪がなびく。


「目標、夢はあるのか?」

「目標、ですか?……特にないですね。強いてあげるなら、魔具をしっかりと勉強してこの国を発展させたいです。エイナル兄さんは、夢はあるんですか?」


質問して、エイナル兄さんの方をむく。


「俺は、世界を平和にしたい。戦争しないといけない理由は分かる。でも、同じ人なのに争うのは違うと思うんだ。だから、俺は強くなりたい!」


腕を上げて、拳を突き上げる。


「すごい大きな目標ですね。兄さんならできますよ!応援します!」

「ありがとう。エネル」


腕を下ろして、エネルの方を振り向いて笑顔になる。

本当に優しい兄だ。




それから1ヶ月後。

魔具の授業が始まって3ヶ月がちょうどたった。

兄の方はゆっくりながらも、頑張って覚えている。授業以外でも魔具の説明をして、ギリギリのラインで頑張っている。


「さて、実は大切なことを言おうと思う」


授業を始める前に、アウデから大切なことがあるらしい。いつもよりも真剣な顔だった。


「実は、王位継承者をエネル。お前にしようと思う」


この発言は普通は異常だ。一般的に王位継承者や貴族は、基本嫡男、長男が継承する。


「分かりました。荷物を持って、部屋を出る準備をします」


病死や廃嫡などをしない限りは、ほとんど。


「お父様。僕は次男です。長男の兄さんを廃嫡にするんですか?」


もし、ほんとうにエイナル兄さんが廃嫡なら。僕はお父様を嫌いになるだろう。優しい兄さんが居なくなるのは嫌だ。


「いや、エイナルを廃嫡にする訳ではない。アストラル王国では、優秀な方を王にするのだ。エネル。お前は魔具と魔法が優秀だ。王にする基準は剣術よりも魔法と魔具が優秀かだ。だから、エネルを選んだ」


(なるほど。合理的に選ぶのか。長男とかよりも、優秀な人を…)


エネルは、少し考えたあと、父アウデに話しかける。


「お父様。僕は王位継承をしません」


アウデは、少し目を見開いたあと理由を聞く。


「なんでだ?」

「僕は、書類などのことはあまり得意ではありません。人と話すのも苦手です。その点に関してはエイナル兄さんが得意です。僕は、魔具の研究が出来ればそれだけで十分です!僕は!エイナル兄さんと一緒にこの国を発展させたいです!」


今、自分の気持ちを正直に言った。


「エイナル。お前はどうしたい?」


アウデは、少し落ち込んでいるエイナルに話しかける。


「お、俺は、この国を発展させたいです!そのためには、エネルの力が必要です!お願いします!俺を、王位継承者に!」


エイナルも、自分の思いをアウデにぶつける。エイナル、エネルは。お互いの気持ちをアウデにぶつけ決意の目をアウデに向ける。


「そうか。なら、王位継承者はエイナル、お前だ。しっかりと、私以上の成果を期待しているよ」


アウデは、喋りながらエイナルに近づき。エイナルの視線高さを合わせて、頭の上に手を置く。


「は、はい!」


アウデは、エネルの方を向き喋り始める。


「エネル。お前は魔具の事はすぐに覚える。だから、魔具の事を全て教えたら。魔具の研究を頑張ってくれ」

「はい!」


アウデは立ち上がり、机の方に向かう。


「それじゃ。エイナルには、最低でも魔具の基礎だけ覚えてもらう。エネルには、魔具についての全てを叩き込む。エイナルの分も頑張って覚えてくれ」


2人は、お互いの顔を見て頷く。


「「はい!」」


二人の返事を聞き、笑顔になり授業を始めるアウデ。

もしかしたら、試したのかもしれない。

そう思う、エネルだった。




授業が、終わったその日の夜。

エイナルは、エネルの部屋に来ていた。


「どうしたんですか?兄さん」


エイナルは椅子に座り、窓の外を見ていた。エネルはベッドに座り、エイナルの方を見る。しばらく待つと、エイナルが喋り始める。


「エネル。今日はありがとな…」

「いえ。僕は兄さんが居なくなるのが嫌だっただけです。それに、王の位置なんて。僕には向かないので」


正直な気持ちをそのまま伝える。


(上の立場なんて、似合わないよ。平和共存会の創設者の時は本当に大変だった。もう、あの時の苦労は懲り懲りだよ)


エネルは、前世のことを思い出しながらエイナルの方を見る。


「王位継承する以上、これまで以上に強くなって安心させないと」

「兄さんは、今でも強いですよ?」

「もっと強く。みんなを護るための力を付けないと」


エネルは、エイナルの話を聞くうちに、本当に優しい兄さんだと改めて思った。


「なら、二人で。この国を発展させましょう!僕は魔具で。兄さんは王として」


エネルは立ち上がり、エイナルの方に向かう。


「ああ。二人で一つだ」


エイナルも、立ち上がりエネルの正面に立つ。

そして、二人は右腕を出して。お互いに拳を当てる。

二人の絆が、しっかりと結び会った瞬間だった。


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