何かが致命的に間違っている異世界版『桃太郎』
異世界ハーレムなろー系主人公ってこんな感じかなーと思って書いてみました。
桃太郎が鬼ヶ島に鬼退治に行くお話です(嘘は言っていない)
『考えるな、感じろ』の精神で頭を空っぽにして読むのを推奨いたします。
なお、この作品には、他作品を貶める意図はございません(念のため)
俺は平凡な男子高校生、山田 桃太郎。
だったのだが、神様の手違いで死んでしまい、異世界に転生することになった。
全く、困った話だぜ。俺は平凡な日常を送りたいってのに。
転生した時は、目の前に爺さんと婆さんがいてビックリした。
神様の贈り物だって喜んでいる二人の話を聞くに、何でも、俺は桃の中から生まれてきたんだとか。
俺は目立ちたくはないので、余り吹聴されても困る。その事は他言無用だと言うと、何故か二人は驚いていた。そういえば、今の俺は幼児だったな。
そんな俺も、すくすく育って10歳になった。
前世の記憶があったお陰で、幼少期から特訓していた俺は、剣術は達人並みのレベルまで、魔法は『賢者』と呼ばれる最高峰の魔法使い並みのレベルまで成長した。
今日は、前世の知識を使って黍からきびだんごというものを作ってみた。
魔力も沢山込めたし、我ながら良い出来になっていると思う。
そう満足していた時ーーーー
突然重いプレッシャーが掛かってきたと思ったら、目の前に【地獄の番犬】ケルベロスが立っていた。
今まで遭遇したことのある魔物とは段違いの重圧だ。
これは勝てるか怪しいな、と冷や汗を掻いているとーーーーケルベロスが、恐らく念話を使ったのだろう、話しかけてきた。
『桃太郎さん、そのきびだんごを一つわたしにください!』
話を聞くに、どうやら俺のこのきびだんごが欲しいらしく、敵対の意志はないようだ。
それなら、ときびだんごを渡したら、ケルベロスは無我夢中になって食べ始めた。
俺の魔力をふんだんに込めたきびだんごは極上の味がするらしく、食べ終えたケルベロスは、『仲間になるのでこれからもきびだんごをください!』と言ってきた。丁度最近は俺に敵う相手が居なくて退屈していたところだ、俺は申し出を受けることにした。
当然ケルベロスは人化して美少女になった。
さて、ケルベロスが仲間になり、楽しい毎日を送っていたんだが、ここで問題が発生した。
今俺が住んでいるのは山奥の小屋で、自給自足の生活の為金が無いのだ。
いずれ町に出た時に必要になるだろうし、どうにか稼ぐ手段はないものかとケルベロスに聞いたところ、
「鬼ヶ島に鬼退治に行くのはどうですか?」
と返ってきた。
鬼退治? と思って詳しく話を聞くと、鬼ヶ島というところに悪さをする鬼がのさばっているらしい。
鬼は金銀財宝を貯め込んでいるらしく、また鬼を退治すると賞金が貰えるということで、一挙両得だ。正直面倒なことはしたくないんだが、俺はこの話を受けることにした。
爺さん婆さんに心配されながらも鬼退治の旅に出た俺達は、ある日、猿の獣人らしき人物と出会った。
その人物は自らを孫悟空と名乗り、俺の荷物を盗もうとしてきた、所謂盗賊というやつらしい。
当然そんなのに黙ってやられる俺ではない。
返り討ちにして説教を行い、改心させた。
もう悪さはしないと言っていたので、きびだんごをあげてやったところ、何やら感激して俺に付いてくると言ってきた。
まぁ断る理由もないし、同伴を受け入れた。
因みに孫悟空は美少女だった。
仲間が増えた後も旅を続けた俺達は、大きな町に着いた。
ここで鬼ヶ島の情報を得る予定だ。
その為に、まずは冒険者ギルドに向かった。
目当ての建物ーーーー冒険者ギルドを見つけ、中へと入る。
中は喧噪にまみれていたが、俺は気にせず受付へと向かう。
取り敢えず冒険者の登録はしておこう、と思い受付の人にその旨を言った。
対する受付の人の話では、冒険者登録には、従魔というものが必要らしい。
魔法陣から魔物を召喚することで、従魔として力を貸してもらうことが出来るらしく、その従魔の強さで冒険者のランクを決めるそうだ。従魔は、召喚した冒険者本人の魔力が多いほど、強い魔物が出るらしい。
幸い従魔召喚は冒険者ギルドでも出来るようなので、俺はここで従魔を召喚することにした。
魔法陣に手を当て、魔力を込める。
どうせなら限界まで込めてみようと思い、全魔力を出し尽くす勢いで注ぎ込んでいるとーーーー
爆発が起きたかのような轟音が鳴り、同時に視界が光で埋め尽くされる。
眼が再び見えるようになったその時には、俺の目の前にフェニックスが佇んでいた。
どうやらこいつが俺の従魔のようだ。
周囲も事態を把握したらしく、「フェニックスなんてSランク冒険者でも召喚出来ないのに!」とか「まさかあんなガキが!?」とか騒いでいる。やれやれ、俺は目立ちたくはないんだがな……
フェニックスに「よろしく」と言うと、「よろしくお願いします、ご主人様」と返ってきた。
仲間になった記念にきびだんごをあげると、凄く喜んでいるようで、何よりだ。
そんな風にしていると、ガラの悪そうなハゲが、声を掛けてきた。
「おうおう、坊ちゃんよぉ……お前みたいなひょろっこいガキがフェニックスを召喚するなんて、一体どんな不正をしたんだい? ええ?」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら、ハゲは続けて言った。
「言いたくねぇってんなら、ちょっと遊んでやろうかぁ? 後ろの嬢ちゃん方は別の"遊び"になるけどよぉ」
ぎゃははと笑い声をあげるハゲに対して、思わず低い声が出た。
「こいつらは俺の仲間だ。何かするってんなら容赦はしないぞ」
「お前みたいなガキに何が出来るんだ……よッ! ……ってあれーーーーグベッ!?」
隙だらけの動きで殴りかかってきたので、躱して蹴りを入れる。
それだけで、ハゲはギルドの壁まで飛んで行って激突し、のびて気絶した。
やれやれ、冒険者というのはこの程度なのか? ガラも悪いし、碌な奴じゃないな。
放心している周囲を置いて、鬼ヶ島の情報だけ聞いて俺達はギルドを出た。
はぁ、無駄なところに時間を使ってしまったな。
あ、勿論フェニックスは美少女に人化した。
気を取り直して、聞いた通りに鬼ヶ島へと向かう。
船を漕いで向かった先に見えたのは、鬼ヶ島という名前通りに、鬼に見えなくもない中々奇怪な形をしている島だった。
早速乗り込むと、鬼が居るだろう島の中央へと歩みを進めた。
やがて島の中央に着くと、そこには予想通り鬼が待ち構えていた。
「鬼たる我がいるこの島に来るとは、命知らずの愚か者め。地獄で後悔するといい」
そう言って威圧を掛ける鬼だったが、旅で鍛えられた俺達には効かない。
戦闘が始まると、ケルベロスは噛みつくついでに地獄の炎を吐き、孫悟空は何万もの分身体を作って引っ掻き、フェニックスは鬼の眼に嘴を突き刺し不滅の炎で燃やした。
ふぅ、この程度、俺が出る幕でもなかったな。
そう思っているうちに戦闘は終わったらしく、白旗を挙げ降参の姿勢を取る鬼を後目に、お疲れと仲間を労う。
鬼は余程こっぴどくやられたようで、財宝は全部差し上げます、何でもしますし奴隷にもなりますのでどうか命だけは……、と震えながら言っていた。
俺には奴隷を飼う趣味は無いので、奴隷になるくらいなら仲間になってくれと言ったら、鬼は感激した様子で感謝の言葉を述べた。
財宝はありがたく貰い受けたし、金を稼ぐという当初の目的も達成だ。
達成感を胸に、俺は鬼ヶ島を後にした。
なお、鬼は人化したら隻眼の美少女となった。
そういえば、ケルベロスとか孫悟空が「また仲間に美少女が……」とか言っていたが、どうかしたのだろうか。新しい仲間とも仲良くして欲しいものである。
最初は、何か童話をモチーフに話を書いてみたいなと思って取り掛かった作品だったのですが、どうしてこうなった。
取り敢えず異世界もののテンプレは結構書き込めたと思います。襲われてる馬車から姫様を救うシーンは入れられなかったのが心残りですかね。
この作品における誤字脱字、設定の違和感や矛盾及び主人公の気持ち悪さその他諸々は仕様です。そういうことにしておきます。
前書きにも書きましたが、他作品を貶める意図はありません。テンプレの練習台として書いてみただけなのでご了承ください。