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エア・クラフト・スチール  作者: 山鳥のハラミ
オレンジと鉄と空薬莢
8/22

ep07 『Giant of one arm〈片腕の巨人〉』

ゲームの周回と同時進行でこの作品を書いています。

山鳥のハラミです。

前書きですね。うん、書くことないですね。主に、

ある事あったら後書きに書きますし。うん。

 命都が去ると私、優華は口を開いた。

「言った通りの変な奴だろう?」

「そうですか?」

「変だろう」

「そうですかねぇ?」

「だろう?詩音、さん」

「タメ口なのに、名前だけ敬語なのか‥‥。まぁ、いいか。で、命都のことか?」

「あぁ、変な奴だろう?」

「……まぁ、変な奴だが。信用はできるな」

 ほう、驚きの言葉が出てきたな。詩音の口から信用(・・)という単語出てくるとは思わなかった。

「では、なぜだ?」

「さぁな、だが私にはわかるんだよ。あの男と刃を交えたからな。あんたも同じだろう?」

「……ふっ、まぁな」

 微笑がこぼれる。

 そうか、刃を交わったから、か。その通りかもしれない。私も詩音以上に命都と刃を交えている。故に分かっている。信用できる男だと。

「だろ?なら良いんじゃないのか?」

「そうか。そうかもな」

「……ふーん、そうか」

「んっ、なんだ?」

 詩音が何か気づいたような顔で見てくる。

「お前さん。あの男のこと、好きなのか?」

「っ!!」

 驚きの言葉がでる。私が好き!?あいつのことがか!?

「お、図星の用だな」

「な、急に何を言うのだ!」

「だって顔、赤くしているじゃん」

「!!」

 詩音にそう言われ、確認のためにスマホカバーについている鏡で自分の顔を見る。

 そこには林檎のように真っ赤になった自分の顔があった。

「っ~~~~~!!」

「大変、そうだな」

「すぅはぁ、……でそれがどうした」

 深呼吸して頭を冷やす。でなければ、ずっとあちらのペースになってしまう。

「あ?……そういえば何だっけ」

「馬鹿か」

「何だと!」

「ふふふ」

 ベンチで三人の女子が喋っている。これは周りから見てみたら幸せの風景かもしれない。

 ただ好きな男について喋ったり、今日のように買い物に行ったり、これが従来の女の子の過ごし方かもしれない。

「そう言いながら、お前らも良い雰囲気ではなかったか?」

「そ、そうですか?」

「そうかぁ?」

 うむ、反応が薄い。何だか私だけが辱めを受けただけじゃないか。

「……はぁ、まぁいい。お前たちも私のようになってしまえばいいんだ」

「「なっ!」」

 二人は驚いた顔でこちらを見てくる。ふん、何が可笑しい。お前たちも私と同じように接していくたびに堕ちてしまえばいいんだ。撃たれて(ヒット&)堕ちろ、というやつだ。

「まぁ、俺はあの人に会うまでは誰かと付き合うことは無いな」

「は?」

 何言ってんだ?こいつは。

「あの、すみません」

「ん?」

 するとシリルが口を開く。

「詩音さんの言うあの人とは一体、誰のことでしょうか?」

「あ、それは気になる」

「は!?聞いても楽しくないぞ!?」

 お、その反応が見たかった。

ということはそれを吐かせれば私の恥ずかしさは消えるのだな?

「ほう、それは気になるな」

「は!?」

「だって、前言っていたじゃないですか。ASやり始めた原因の人がいると」

「まぁ、言っていたけどよ」

「……それはいつ話していたんだ?」

 もしかしてあの姉妹と戦った時か?

「一昨日です」

 全然、違かった。

「ほう、では話して貰おうか」

「なっ!意味が分からねぇよ!」

 何、世界はいつも意味が分からないものでできているから安心しろ。

 たとえお前が許さなくても、私と世界が許す。

「話して貰おう」

「お願いします!」

「お前ら、話聞いてた!?」

「話せ」

「……」

「……」

 詩音が唖然とした顔で見てくるが気にしない。なぜならシリルも楽しそうな目で見ているからだ。一言で言うと目が輝いている。

「………………わかったよ!喋る、喋るからそんな顔で見てくるな!」

「ほう、やっと喋るようになったか」

「うるせぇ、……はぁ、私がな……」

そう詩音が語りだすと、私たちはただ静かに聞いていた。

「ほう、そんなことがあったとは……」

「気になりますね。そのゴーグルフェイスの人」

 とても面白い話であった。にしても去年の大会……か。

もしかして見た事あるか?

「……写真あるか?」

「あん?あるぜ」

 詩音がそういうとスマホからその彼?彼女?の写真を見せてもらう。

「……『片腕の巨人』?」

 間違えない。こいつは見たことある。

「『片腕の巨人』」

「あぁ、去年の大会での未知数(ダーク)の(・)(フォース)だよ。大会に出ていた皆から最初は名前が分からなかったから不確定(アンノウン)と言われていたがな、戦闘が始まってからそういう名前が付けられた」

 私も最初は意味分からない奴だと思っていたが戦い方を見てからその印象は変わった。

 近接も遠距離も、ましてや何でも(オールグラウンダー)さえも対処してしまっていた。超遠(ロング)距離(レンジ)に対しては高出力の粒子砲(ビームキャノン)や、接近して(アンカー)で捕まえたり、超近距離に対しては適度の距離を取り、アンカーで行動を制限をしてビームキャノンで一撃で葬るという独特でありながら高レベルな戦闘方法していたから覚えている。

「え?もしかして、お前も出ておいたのか?」

「そうだが?」

 まぁ、負けてしまったが。準決勝で、だが。

「戦ったことあるのですか?」

「いいや、戦ってはいない」

「なんででしょう?」

「棄権したんだよ」

「え?」

そうだ、勢いよく上位近くまで上り詰めたのだがいきなり消えたのだ。

まるで陽炎や、煙のように、ふわっと大会から世間の注目から消えた。

それ以降は、『黒腕』や『黒鋼の鉄腕』などの色んな異名がついたがやはりAS通では『片腕の巨人』と言われている。

「不思議な方なんですね」

「まぁ、男性だか女性だか分からないがな」

ゴーグルフェイスで顔が分からず、首から下は重そうな装甲で見えなかったために、AS通では未だに口論が続いている。まぁ、今のところ有力な説が『女性説』だが。女性の私から言わせて貰おう。それはないと思う。

「詩音さんはその方に会いたいのですね」

「まぁな、身勝手な約束を果たしてもらうためにな」

 詩音は胸を張りながら言う。どこも誇れる所ではないが、私もそんな強い御仁と戦えるのなら戦ってみたいものだ。

「ま、そのためには強くならなければいけないな」

「わかってらぁ」

「そうですね」

 私がにやつきながら言うと二人は笑いながら返答する。

 まぁ、私も強くなければいけないがな。

 そう思いながら空を見る。中庭の上は綺麗な晴天だった。

「にしても遅いな」

「あん?あの男のことか?」

「そういえばそうですね。どうかしたんでしょうか」

「腹でも壊したんじゃねぇか?」

「あー、あり得る。……少し心配だから連絡する」

「おう、頼むぜ」

「お願いします」

二人に言われバックの中からスマホを取り出す。

ドカン!

すると後ろにあった噴水が壊れた。

「‥‥は?」

さすががに状況が飲めない。

いきなり噴水が壊れたのだ。状況なんて読めるものじゃない。

ドカン、ドカン、ドカン、

すると辺りの建物が壊れていく。

可笑しい。辺りを見回す。阿鼻叫喚のような悲鳴が右往左往からと聞こえてくる。

「きゃあ!」

「ど、どういうことだ!?」

「いいから伏せろ!」

シリルと詩音の二人を落ち着かせながらも辺りの確認を辞めない。

「うん?」

すると空から小さな影の集まりが見えてくる。

「あれは……?」

 目を懲らしめてよく見てみる。

 その影は鳥のように見えるが、鳥ではなかった。

「AS!?」

「「!?」」

 つい声に出る。影はよく見るとASであった。肩から飛び出る突起物に、ごつごつとした腕、そしてそれを纏っている生身の人間たち。あれは間違いなくASであった。

 手に持った銃はこちらに向けており、容赦なく撃ってくる。

「危ないっ!」

すると当たった弾の衝撃で壊れてかけていた噴水の肖像が崩れ始める。私は勢いよく飛び出して詩音とシリルの体を突き飛ばす。

「いっつ」

「だ、大丈夫ですか!?」

「怪我はしてねぇよな!?」

「大丈夫。かすり傷だけ」

 だけどかすり傷だけでも割と痛い。地面に散っていた噴水の破片に先ほど崩れてきた噴水の破片が当たるのだ。この痛みを簡単に表すのならタンスに小指をぶつける痛みが全身から来るのだ。とてもじゃないが痛みで体が思うように動かない。

「にしてもなんだよあいつら」

「知らない。けど……」

頭の中で嫌な予想が飛んでくる。もし、それが事実ならこの国の問題だけではならなくなる。

「ありゃ~?こんな所に怯えていない奴がいるねぇ~」

声が聞こえる。顔を上げるとそこにはASを身に纏った厚化粧のBB、女がいた。

「なんなんだ。あんたら!」

「私たち?私たちはね。あなたたちの言うテロリストっていうやつよぉ~」

「「「!!」」」

 嫌な予想が当たった。

「ふむ~、その顔、見たことあるわぁ~。Mr.ダリルの娘さんねぇ~」

「! お父さんを知っているの!?」

「え~、フランスの国防長をしていることもねぇ~」

「……」

 シリルは唖然とした顔で相手の女性の顔を見る。

 ということは、相手は相当な情報を持っていることが分かる。

「あなたはぁ~、去年の国際大会のナンバー2~。そしてあなたがぁ~、異類な女の子ねぇ~」

「「……」」

「けど、その中でも一番、価値があるのはあなたねぇ~。シリル・メフシィ。あなたを捕えれば身代金が大量に手に入るわね」

「!!」

 その言葉を聞いた瞬間、身構える。私はシリルの前に立ち、庇うような姿でテロリストの女を見ていた。

「あらぁ~?そんなことしてどうするのかしらぁ~?」

「!」

 テロリストの女は銃口を向ける。

「インストール!」

私がそう叫ぶ。

「………」

 がASが来ない。

「あ」

 そして、とあることに気づく。

「メンテナンス中だった」

 メンテナンス中であるためにASが入っている腕輪は預けていたのだった。

「……」

 気まずい空気が流れる。

「詩音は?」

「私も、メンテ中だ」

 小さな声で詩音に確かめるが、詩音も同じくできない状況だった。

「シリルは……?」

「私はまだ、調整状態です」

「……」

最悪な状況であった。三人ともASが出せない、いわば相手に対抗できない状況であった。

「ふふ、あははははは!なんて、無様なのぉ~。ASも出せないのに私に挑むような行為に出るのぉ~」

「……ちっ」

 自身の行動に後悔の舌打ちが出る。

「あはははは、バッカみたい。何もできないのに私に挑むなんてぇ~」

 テロリストの女は大声で笑いながら銃口を向ける。

「どう?どうするの?なんかできるのぉ~?かわいらしい、お嬢ちゃんたちぃ~」

 テロリストの女はねちっこい笑い顔でこちらを見る。

 何もできない。ASが無ければ、ただの小娘で仲良くなった友達も守れなくなって、こんな悪人の一人さえも斬れないなんて……。とてつもなく悔しかった。力の無い自分自身が……。

「ふふ、じゃあ、その御令嬢様以外ぃ~、死んでもらいましょ~」

「「「!!」」」

 テロリストの女は平然とした顔で、恐ろしい言葉を放つ。

 そして向けていた銃口が更に近づき額に銃口が当たる。

 心臓の鼓動が早くなる。目の前の死という概念の塊に息は荒くなり、脂汗が額から流れる。

 ここで死ぬのかと、心の中で叫び荒れ狂う。

「ふふふ、じゃあね」

 テロリストの女がそう言うと引き金を引く動作に入る。

 視界が止まる。ゆっくりとゆっくりとスローモーションのようになっていき、画像が一枚一枚動くようなパラパラ漫画のように見えてくる。

(……死んだ)

 心の底からそう思った。

 瞬間、

 ドガァンッ!

 壊れた建物の瓦礫の中から何かが飛び出しテロリストの女の方へ飛んでいった。何かが飛んできたおかげで突き付けられていた銃口は明後日の方向へと弾が飛んでいったため誰も怪我をしなかったが慢心はできない。

 薄れていく土煙をよく目を懲らしめ見る。

「な、なによ~!」

 するとあのテロリストの女の声が聞こえた。どうやら無事の用らしい。まったく運のBBAだ。

「だ、誰よ。あんたぁ~!」

 徐々に土煙が晴れていく。すると目の前には黒い装甲(AS)が映っていた。

「‥‥」

 その重装かつ軽い装甲、その片腕、そしてその顔に付けているゴーグルフェイス。見たことある姿がそこにはあった。

「‥‥」

 片腕(なんていえばわからないためこう言わせて貰うが)は何も言わず、私たちのことを横目で見るとすぐにテロリストの方を向いた。

「な、何なんだい!あんた!」

 そして予想外(イレギュラー)の登場に先ほどまでの余裕が無くなったテロリストの女は驚き半分、半ば慌てている状態で片腕に銃を向ける。

 だが片腕はそれを見ても恐れず、ただ単に見ていた。

「くそっ!」

 バンッ!

 発砲音。テロリストの女が持っていた銃は片腕に向かって発砲されるが、片腕は一瞬のうちに避け、その鋼鉄の左腕をテロリストの女に突き付ける。

 突き付けた瞬間、テロリストの女の短い悲鳴と大きな振動音が響く。

「‥‥がっ‥‥」

 一瞬、死んだかと心配したが、その心配も無用だった。

 ASには使用者の保護機能がついているために、使用者が危険と察するとAS自体が保護機能を作動して守る、という物があるためテロリストの女はその機能に、いや、ASに助けられたと考えてもいい。

だが、そんなASの保護機能があれども機体の限界値が来ているためにASはもう呼び出せなくて、あの直接的な物理攻撃を受けたのだ、全身に激痛が走るだろう。

「‥‥」

 だが片腕は既に倒れているテロリストの女に興味がないように振り向き、鳥の群れの様に大量にいる残りのテロリストのASを見る。

「な‥‥に、‥‥する‥‥つ、もり‥‥」

 テロリストの女は小さな声ながらも言う。

 まだ体力があるらしい。

「こ‥‥んな、‥‥に‥‥いるのに‥‥どう、する‥‥の?」

「‥‥」

 テロリストの女は途切れ途切れになりながらも、片腕に言う。

 だが片腕はその質問さえも、興味がなさそうな顔でテロリストの女の方を見るがすぐにテロリストのASの方へと向く。

「た、隊長!貴様ぁ!よくも隊長を!」

 するとテロリストの誰かが言ったのだろう。それが引き金となり、テロリストたちは一斉に発砲してくる。

「がっ」

「「「!!」」」

 だけども片腕はテロリストの首を掴む。その速さは常人では目で捉えられないほどの速さだった。

 片腕はテロリストの首を掴むと、勢いよく放り投げ鋼鉄の左腕を向ける。

 すると、左腕の手の内に光が集まり始め、一瞬で高出力のビームが射出される。

「‥‥!‥‥」

 それに巻きまれた者の他に、流れ弾を受けたテロリスト達が光の中へと消えていく。

 光の中へと消えていったテロリストたちを見ていた私たちは唖然としていた。なぜなら、ビームの出力が一段と自分たちが考えていたものと違かったからである。

 自分たちが考えていたビームというのはもっと細く、小さいものである。だがあれは確実に戦艦の主砲並で、一言で表すならガン〇ムWに出てくるバスターライフルと言えば分かるだろうか?

 まぁ、そのような威力であった。

 だが片腕は唖然としているテロリスト達には容赦なく攻撃を仕掛けていく、とある物にはその左腕で掴み、至近距離からのビームを放ったり、右腕から(アンカー)を射出して敵を捕らえると、引っ張り回したり、接近して左腕で叩きつけたり、挙句の果てにはそのまま地面に向かって叩きつけていた。

 片腕がただ敵を薙ぎ払い、地面に叩きつけるたびに地面が揺れ、瓦礫が崩れ、砂煙が撒く。

「くそっ、何だよてめぇ!」

「!!」

 テロリストの仲間の一人の男がそう叫ぶと、片腕は叫んだ男に向かって飛んでいき左腕を突き付けたのだが、男はそれを呼んでいたかのように片腕の攻撃を避け、懐に入る。

「ここまで来たらてめぇの攻撃なんぞ、怖くねぇよ!」

 そう言って男は笑いながら腰元についていたヒートナイフを取り出すと片腕に向かって突き刺した。

「てめぇの装甲、剥いでやる!」

 そして男がそのままヒートナイフを突き刺すと、キィンと甲高い音が辺りに響いた。

「は?」

 男の手には先ほどまで持っていたヒートナイフは無く、代わりに片腕の右手に蒼白い刀身をしていたビーム・ブレードが握られていた。

「嘘だろ‥‥」

 再び、驚きの声が漏れる。

 現在、世界中でも試験運用として使われている武器を既に片腕は入手しており、戦闘に出せるほど調整が出来ていた。

 それにしても、蒼白いビーム・ブレードは見たことがない。うち(学園)で今、運用しているのは緑色と黄色なため蒼、それも蒼白いとなると見たこともないし聞いたことも無い。もしこんなものがあるのならあいつが一番喜ぶだろう‥‥。

 にしても大丈夫だろうか。あいつ‥‥。

「‥‥」

「なんだよ‥‥それ‥‥」

 ブォン!

 テロリストの男が小さな声でそう言うと、片腕は首を落とすように一瞬で斬りつける。

 テロリストはそのまま地面に落ちていくと、他の仲間たちもやっとそこで慌てだす。

「なんだ‥‥?」

「えっ?嘘だろ」

「何だよ‥‥あいつ‥‥」

「勝てるわけない」

 テロリストたちの焦りようは酷く、片腕の威圧に負けて逃げ出そうとするものも現れた。だが、片腕はそう言うものを見つけた瞬間、回り込み左腕でなぎ倒したり右手に持っているビーム・ブレードで斬りつけていった。

「‥‥速い‥‥」

 テロリストを一人一人、倒していく速度が上がる。一人を斬れば、次の一人を落とすために斬りつけた一人を台にしてもう一人をビームで堕とす。そして台にしていたテロリストを蹴り飛ばしビーム・ブレードを持ち直し、背後に接近していたテロリストに突き刺す。

 まさに五の工程を三の工程に、三の工程を一の工程に、あらゆる戦闘行為が徐々に簡略化されていき、敵をどう動きどう戦い、どう挑み、倒すか。それを考え、かつ最適化の行動を移す。

 片腕はその簡略化が出来ていた。例えば、左腕の粒子砲を今まで止まってから撃っていたが、逆にその粒子砲の反動を使い回避行動に移ったり、ビームを放ったまま腕を振り払うことにより巨大な剣の様に扱うこともしていた。

 だがその行為は無駄ではなく、滑らかで、豪胆で、戦略的で、美的であった。

「綺麗‥‥」

 そんな風景を見ていたシリルが小さな声で呟くと、さらに上空に映る片腕の戦闘に目が行ってしまう。

「‥‥‥」

 なんなんだろうか?この感情は?

 見ているだけで高揚し、鼓動が早くなる。視界がスローに見えてきて、背中には汗が流れる。カティッサ姉妹と闘った時もこの似た感じがした。‥‥いや、それよりもなんだ?とても前に感じたことがある。

「‥‥あぁ、これは」

 好奇心だ。

 戦闘への好奇心、強者への闘争心、この二つの感情だ。あぁ、あぁ、とても・・・・。

 悔しい。ものすごく悔しい。いまここにASがあったらテロリスト共を斬った後に片腕(あいつ)にすぐに挑んでいただろう。

「したい」

 あぁ、戦いたい。戦いたい。戦いたい。戦いたい。戦いたい。戦いたい。戦いたい。衝動が、欲望が私の身体を突き動かそうとする。

 目の前に軌道を描きながら飛んでいる片腕を見ていると体が疼く、手を伸ばせば届きそうなその極上の御馳走に至れないこの感じ、ものすごく辛くて苦しい。

 だが現実は非情である。手を伸ばしても遠く遠く、高い場所にある。

「あぁ」

 欲しい。ただ眺めているのは何かを苦しめているようだった。


 空に映る、黒い影。左腕が大きく、顔を覆い隠すような機械仕掛けの仮面、そして不完全ながらも完全なる鎧に向かって戦っている姿。それは多くの者へと見られ、目に焼き付き、心に語り掛けていた。

 ある人には戦えと、ある人には守れと、ある人には慢心するなと、見た人たちはあらゆる観点からその姿を受け取った。

 だが当の本人(片腕)は、その真理へと至っておらず、他人からの無駄の共感をただ無視をし続けていた。

 そう、ただ何も考えず、戦っていただけ。本能(けもの)の様に、全ての思考を全て体に任せていた。

 時にはアンカーを飛ばし、敵を捕らえ、振り回し周りにいる敵を一緒に落とし、時には左腕のバスターアームで敵を一気に撃ち落としたりする。

 そう、ただ薙ぎ払い、撃ち落とし、括りつけ、縛り付け、叩き落とした。まるでデータを取るかのように、機体を試すかのようにただ無茶をする。

速度を維持しながら瓦礫となった建物を綺麗にすりぬけてゆき、物陰で隠れ待ち伏せをして敵が来た所を容赦なくバスターアームで撃ち落とす。後ろについてきていた敵もそのビームの餌食となり、光の中へと消えていく。

片腕は、後ろからテロリストが来てないことを確認すると片腕はすぐに瓦礫となった建物の物陰から出る。

「!!」

 するとそれを待ちわびたかのように残りのテロリスト達が銃口を片腕に向けていた。

「撃てっ!」

 そしてテロリスト達の誰かがそう合図をすると、片腕に向かって無数の弾が飛んでくる。

「‥‥!!」

「な、何っ!?」

 バシューン!

 だが片腕はそれに怖気ず、そのまま弾の雨を避けながら突貫し通り抜けるとテロリストの集団の背後に回りバスターアームでそのまま撃ちぬく。

 片腕は何機か落とされるのを確認すると、一度、その場を離れる。そして残ったテロリスト達は片腕を追いかける。

 その姿を確認した片腕は何か呟くと、左太腿装甲部が変形すると対AS用フレアを発射する。するとテロリストたちは、フレアに当たり、そのまま墜落していく。

「‥‥」

 それを横目で確認すると、片腕は機体を急旋回し後ろについてきていたテロリスト達の方に振り返り、バスターアームでそのまま撃ちぬく。

 片腕は、バスターアームから煙を出しながら撃ちぬいたことを確かめると体を翻し、そのまま降下してくる。

 地面に近づくとブースターをかけ、ゆっくりと降下する。

 砂埃を上げながら着地をすると優華たちに片腕は近づく。

「な、なんだ」

 優華は半ば怯えながらも興味深々な目で片腕のことを見てくるが、片腕は、興味なさそうに後ろで埋もれているテロリストの女隊長の方に目を向けた。片腕はそのテロリストをただ眺めていると、再び片腕はゆっくりと砂埃を大きく舞わせながら飛翔し始め、ある程度の高さに着くとそのままどこかに飛んでいった。

 一言も何も言わず、腕など一つも動かそうとはせずにただ、無条件に眺め、勝手に納得したように飛んでいった。


 辺りにはパトカーのサイレンが響き渡る。

 警察の特殊部隊が、テロリストを一人一人、手錠をされ特殊装甲車の中へと連れて行かれ消えていく。

「‥‥大変だったな」

「ですね。それにしても彼女らは一体、どのような目的でこのような場所を襲撃したのでしょう?」

「さぁ?」

 救急隊に応急手当をして貰ったシリルは不思議そうに言うが、優華は適当そうに答える。

「まぁ、出来たところで私達にできることは無いがな、っと」

「‥‥そう、ですね」

 詩音が立ち上がるシリルの手を引っ張り立ち上がらせるとそのままシリルの身体を支えるとシリルは詩音の答えに残念そうに答えた。

「大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「はぁ、そうか」

 さすがに痛みがあるかを気にする詩音だがシリルは平然とした顔で返答するため詩音は安堵の息を吐くとそのまま優華の方に歩き始める。

 優華はそんな中、ソワソワと辺りを見回す。

「‥‥」

 カツンカツンと鳴らす靴の音が更に優華のそわつきを酷くする。

「ごめ~ん」

 すると聞きなれた声が聞こえる。

「命都っ!」

「命都さんっ!」

「無事だったのかよ。おい!」

「なに~、生きてちゃダメだった?」

 瓦礫を踏みつけながら命都は優華たちの前に現れた。

「いや、無事だったのかという確認だけだったんだよ」

 詩音は命都の質問に半ば嫌な顔で答える。

「そう、まぁいいか」

「それにしても、大丈夫だったの」

「おう、このようにね」

 命都は平然そうに腕を回す。

「ま、体はつりそうだがね」

「そう」

「それにしても、襲撃されたときにいったいどこにいたんですか?」

「あぁ、それね。トイレにいた」

「え」

「いや~、びっくりしたよ~。本当にトイレにいて運よく生き残れたんだから」

 そう言って命都は笑いながら手をひらひらさせながら、噴水だった瓦礫の上に座る。

「にしても、皆、無事だったんだ」

「‥‥まぁな」

「中庭、危険じゃなかったのか?」

「まぁ、危険ですけど建物内のほうが危なかったですし」

「ふ~ん、‥‥そう言えば人的被害ってどのぐらいだった?」

「たしか‥‥死者は居ませんが重軽傷者が多数ということですよ?」

「はぁん、その中で君らはシリルだけが怪我したと」

「うっ、すみません」

 命都が嫌味ったらしく言うと、シリルは申し訳なさそうに見てくるため少々、罪悪感が命の中で湧く。

「まぁ、それにしてもけが人がシリルだけだとはな。確か、テロリストたちと鉢合わせになっていたんだろう?」

「あ、あぁ。運がよかったんだよ」

「運がよくて、かすり傷なのかよ」

 命都は半ば呆れと一緒に言う。

「本当に運がいい」

「ま、私たちは助けられたんだけどな」

「えっ、誰に?」

「ゴーグルフェイスを付けたAS使いさ」

「は?」

 詩音がノリノリで言ってくるが命都にはそれが理解できなかった。

「ゴーグルフェイス?それだけ?」

「いや、ゴーグルフェイスの他にも独特な装備をしていたぞ」

すると横から優華がそう言ってきた。

「独特な装備?何よ、それ」

「‥‥分かりやすく言ってしまうと『片腕』だ」

「!!」

 命都の表情が固まる。

 そして、真剣な顔つきで優華の方を見る。

「本当なのか?」

「あぁ、この目できちんと見た。あの時と一緒、奴の象徴的な左腕だけの武装がな」

「‥‥まさかな」

「? どうした」

 命都が静かにそう言うと優華は不思議そうな顔で見てくる。

「い、いやさ。何か変わっていたか?」

「そう言えばそうだな。右腕に装備が追加されていたな」

「そう」

「アンカーがついていたな」

「へぇ、アンカー‥‥」

命都は興味深そうに顎に触れる。

「‥‥なぁ、命都」

「ん、何?」

「なんで、それほど『片腕』について知りたがるんだ?」

 優華がそう言うと命都は一瞬だけ固まり、優華の方に首を振り向かせる。

「面白そうだから」

 命都はにやりと笑うと優華はただ真顔で命都のことを見る。

「ま、今後のためさ」

 さすがに冗談が過ぎたのか、命都は逃げるように顔を元に戻す。

「今後の為?」

「あぁ、今後の為。‥‥今、俺らの方で作っている奴じゃ無理があるからね」

「‥‥そう、か」

「ま、そう言うこと」

 命都がそう言うと、そのまま勢いよく立ち上がり背を伸ばすと歩き出した。

「さ、帰ろう。どうせ、帰ったら反省文とか書かされるに決まっているからね」

「げ、まじかよ」

「だって、ねぇ?」

 そう言って目くばせをすると、残り二人は綺麗に右や下などを向き、視線を外す。

「ふふふ、そうですね」

「お、やっと喋った」

「何だと思っていたんですか!?」

「かすり傷で体を支えられている怪我人」

「そ、そうですけど‥‥」

「まぁ、いいじゃん。さっさと行こうよ」

「ま、その前にシリルは医務室か救急隊の所に行かなきゃな」

「す、すみません」

「‥‥早くしろよ」

「はははっ、ごめんにゃあ」

 命都たちは瓦礫となったショッピングモールを去り、そのまま沈みかけていた日に、いや今住んでいる学園の寮へと向かった。

 こうして騒がしく、可笑しい、一日が終わった。

今になって気づきました。

あらすじとか、章編成とか本当に良いのかと。

ほら、コメントか来ませんし、このままでいいのかな~?ろか思っていますから。うん。

このまま良い人は良いんですけど。ほら、気になる人はコメントください。

じゃあ、良いたいことは言いましたしここからやっと本題です。

この章、次回で最後です。

以上!よし、言うこと終わったー。次の作品さっさと書かなきゃ( ;∀;)

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