ep01 Single battle・ Route guidance・For the first time〈初めてと道案内とシングルバトル〉
私がどのようにしてこのような作品を生み出しているか。
それは好きな作品の曲を聴いているとネタが思いつきます。
サブタイトルはどうやってかと言いますと………適当に付けています。
気温が高く湿度のじっとりとなっていた肌に服がくっつき気持ち悪いほどの全く持っての最悪な空気。そんななか教室内で地獄という授業を受けている一組のクラスがあった。
「死にそ」
4月の終わりなのになぜここまで暑いのだろうか。そんなことを思いながら教室で授業で受けている。
「死ぬ」
さすがに暑い。朝早く家を出たために天気予報なんて見やしねぇ。
今日の天気は曇りだったとは、朝出たときは晴れていたじゃないですか。
「暑い」
周りの人の暑さでだらけている。まぁ、天気関係なくいつものことだが。
挙句の果てには白板の前にいる先生の目を盗んで携帯を使っている。これもいつものことだが、
「…となる。ここまでノートを取ったか?」
「とりました。次に行ってください」
「なら、ここの練習問題を‥‥」
あぁ、空はいつも綺麗ですね。曇りですけど。
にしても暑い、ものすごく暑い。気温20度超えた時点で暑い。
そのまま、だらだらとノートをとる。
「……」
あー、暑い。保冷剤を首につけたいなこれ。
できれば、拭くだけで肌がさらさらするシートも欲しい。
「……」
「……」
きつい、マジできつい。
視線が……。
「なんですか」
「授業、真面目受けろ」
「なんで俺だけ!?」
理不尽すぎる。これ以上に理不尽なことはあるだろうか。
自分はそう思いながら渋々とノートに白板に書かれていることを書いていく。
キーンコーンカーンコーン
「と、ここまでだな。次は外だからな。第二アリーナ集合だぞ」
「「「はーい」」」
雑な返事で生徒たちは席を立ち教室から出ていく。
まったく解散だけは早いなこのクラス。
そんな視線を、去っていくクラスメイト達に向ける。
「ほら、いくよ。命都」
「はーい」
命都は優華に連れられて、教室を出る。
「そういや、今日来るの?」
「来るつもりだけど?」
「そ、ならデータの解析と分析お願い。システムの設定はこっちでやるから」
「わかった」
そういえばそんなことあったな。書類も書いて資料をUSBメモリに転送しなきゃいけないんだっけ。
そんな事を考えながら平然と廊下を歩く。
「お、着いたかねぇ」
「じゃ、私あっちだから」
「了解」
そういって優華は命都と別れ、別の道に行く。
すると命都は目の前に『男子更衣室』と書かれた部屋に入る。
「おう、命都やってきたのか」
「お疲れさん」
「ごめんなー」
命都は適当にあしらい鍵をかけているロッカーを開ける。
(にしてもさすがに男子の数は多いな)
むさ苦しい男子更衣室をさっさと抜け出したいためにさっさと作業服に着替えロッカーのカギをポケットに入れる。
その時、命都の中指についている指輪がうっすらと輝いた。
「集まったな」
「「「……」」」
「今日やることは、各自の機体メンテナンスとチェック。終わったものから自由だ。だがアリーナから出るなよ」
「「「はーい(ウィー)」」」
「じゃ、解散!!」
薫子先生がそう言うと生徒たちは散り散りに去っていって自分の機体のメンテナンスを行う。
そんなことを自分もやらなきゃいけないんですよ。ですけど‥‥。
「命都ー!!」
「ん~? なに~」
「ここの設定なんだけど」
「ここは習ったところでしょ。何でできないのよ」
駆り出されているんですよね。
あっちに行ったりこっちに行ったりと東奔西走状態ですよ。
「あの~」
「うん?」
「自分の方やっていい?」
「やだ」
全くなんてやつだ。
自分の機体のメンテナンスができずにそのまま、皆のメンテナンスにつき合わせられる日々、正直疲れんだけどな。千手観音や仙人、ましてや仏じゃあるまいし。
命都は溜息を吐きながらも作業には取り組み、本人ができそうなところはやらず本人に任せてできるだけ時間を短縮する。
「じゃここらへんで」
「えっ」
「なにその『えっ』、て」
「最後までやってくれるんじゃないの?」
「馬鹿が!!やるわけねぇだろ!!」
さすがに最後までやってくれると勘違いする奴らも出て来て、それに注意しながらも自分の作業を始めようとする。
自身の機体ぐらい自分でメンテンナンスしろってんだい。
「疲れていますのね」
「なら頼まないでくれ」
「嫌ですね」
全く、この女は……。
今、自分の目の前にいるのは女子生徒は草加 夏目。いいとこのお嬢様で成績優秀、運動もできるという文武両道の絵にかいたような人だが機体のメンテナンスを押し付ける奴らの一人だ。
特殊選考で入学したらしく入学当初は割と話題となっていたりした。
「よくやろうとしますね」
「お前さんができるところまではやるさ」
「私は一応、全部できますよ」
「ならやれよ」
命都はそう愚痴を呟きながらも空中投影型のキーボードをと叩き続ける。
そんな姿を見て夏目は笑顔で見てくる。「うふふ」なんて何か考えているに決まっている。
「なんでしょうかね」
「いや、何も」
何考えているのかねぇ、この人。
「おーい、命都。手伝ってくれ!!」
「ういー、んじゃ」
「ありがとうございます」
映していたキーボードを消すとすぐに別の人のメンテナンスの手伝いにしに行った。
「うふふ」
そんな背中を熱く鋭い視線が見ていたような。
「やっと、終わった……」
皆のメンテナンスの手伝いが終わった命都は安堵の生きを吐きながら自分の機体を呼び出す。
「やっぱ旧式の機体か?」
「薫子先生」
中指につけていた指輪から自分の機体を呼び出すとそこには自分よりも一回り大きな鎧のようなものがありその姿を見ていた薫子が命都に言ってきた。
「そうですね。一番使いやすいし」
「そうか」
「んで、何か?」
「いや、単に気になっただけだ」
「はぁ」
そう言って薫子は去っていき、命都はメンテナンス作業を進めた。
本当に何がしたかったんだろう。あの人。
キーンコーンカーンコーン
「しゃあ!ギリ終わり!」
終わりのチャイムがなるのと同時に命都はメンテナンスが終わりガッツポーズをとる。途中でちょっかいを出されたりなどの邪魔が入ったが終わったから良しとしよう。
「良し、終わった」
機体を前に指輪を掲げると機体は粒子となって消えた。命都はそれを見ると満足げに中指についている指輪を眺める。
「戻ろ」
「ねぇ、君」
「うん?」
何でしょうかね。こんな辺鄙な人に話しかける人なんているなんて話しかけた人も相当変な人でしょう。
「? 君は」
「あぁ、僕かい? ここの見学者みたいなものさ」
絶対、禄な人じゃない。察してしまう、面倒ごとを押し付けるタイプだ。
命都は早めに終わらせようと一歩、後ろに下がって一応、話を聞きます。
「何でしょうか」
「さっきの授業見させてもらいました」
見られてたー、見られていたよ。コン畜生!!恥ずかしい一面を見られていましたよ!?
内心、強烈の恥辱が襲い始めましたが命都の顔には変化はなく彼(?)はそのまま話を続ける。
「職員室ってどこでしょうか?」
命都の中で何かが崩れました。命都はそのまま唖然としていると客人はどうしたのかと首を傾げていて、肩などを叩いてくる。
すると一瞬、命都の意識が取り戻され目が覚める。
「えっと?」
「あの~、職員室は?」
「あ~、すみません。今すぐとまではいかないですけど、案内しますんで待ってくれませんかね。制服に着替えるんで」
「分かりました。ありがとうございます」
命都はそのまま更衣室に行くとすぐに着替え、待たせていた客人のところに行く。
「お待たせしました」
「いいえ、こちらこそ案内なんて頼まなければよかったのですから」
いいえ、ありがとうございます。さっさとあそこから出たかったんで。
命都はそのまま、客人を職員室まで案内する。
「にしても広いですね」
「どうしたんですか?」
「いやね、急にそう思っちゃって」
「はぁ、そういわれると広いかもしれませんね」
命都は客人に言われるままあたりを見渡す。辺りには大きな別棟があり、寮もあった。林並木も下では涼しそうに生徒が休んでいる。
「こんな学校にいられるなんて生徒さんはいいですね」
「そうですか? よく言うじゃないですか羊頭狗肉って、入ったら嫌のところまで見えてしまう。それは学校だけではなく社会というものもそうですよ」
「そういうものなのですか」
「そういうものです」
哲学的な話をしていると目的地となっている本校が目の前までにあった。
「すみません、客人の方でしたらこちらからお願いします。自分は生徒の方から行きますんで」
「はい」
客人は首をかしげながら明るい笑顔で返事をして昇降口に入っていった。
「あの人、天使か何かか?」
命都はそんなことを呟きながらすぐに生徒の昇降口に向かった。
「お待たせしました」
「いいえ、そんなことはありませんよ」
(女性なのか? いや、男性なのかな? 服装的に‥‥ま、いっか)
「どうしましたか?」
「いえ、何も」
命都がまた動かなくなったので客人はまた不思議そうに顔を傾ける。
「じゃ、行きましょうか」
「はい」
命都は自分の頭をがりがりと掻きながら足を進める。客人はそれについてきながら周りをキョロキョロとみている。
「あの~」
「! はい!」
「着きましたよ」
客人の目の前には『職員室』の書かれていた室名札が垂れ下がっていた。
「ありがとうございます」
「いいえ」
一歩下がったままだったのは変わりませんでしたし。案内の時は一歩前でしたし。
「では、これで」
「あの……」
「はい?」
また何か用かな?もう、戻りたいんですか。
「また……会えますか?」
「はぁ、多分」
客人はちょっとだけ頬を赤くすると自分はさっさと逃げるように去っていった。
その時の、命都の内心は……。
(あれ? どう意味だったんだろう。全然聞こえなかったや)
全然、聞こえていませんでした。
午前の授業も終わり昼休み、命都は教室に戻っていた。そこにはさっきまでの授業で命都に手伝わせていたクラスのみんなの姿があった。
「お帰り~、どしたの? 疲れたっていう顔しているけど」
「疲れたんだよ、おまんらのせいでな」
「「「えー」」」
「えー、じゃないわ阿呆!!」
「でさ、それ以外にも疲れたって顔してんじゃん」
優華は命都の顔を見るだけで何に疲れているのかわかりました。さすが、中学から一緒の幼馴染です。
「客人が来てたんだわ」
「お客さんって言わないのか」
「こっちの方が言いやすいやん」
「はいはい、で? お客さんって?」
「うん? あぁ、さっきも言った通りなんか客人が来てたんだわ」
話は一度おかしな方向に行きかけましたが、変な方向に行かせた優華は丁寧な方向転換で元に戻し話を続ける。
「どんなの?」
「知らん」
命都は思ったことをそのまま率直に言うと、優華は「は?」みたいな顔で見てきますが命都は嘘偽りなくそのまま話続ける。
「いやさー、スーツ姿の人としかわかんなかったや」
「へー」
優華は興味なさそうな返事で命都の話を聞く。けれど、その時優華の奥底では何だかチクッと針で刺されたような違和感を感じた。
(何? これ?)
「どうしたん?」
「! いや、何もないよ」
「ほーん、そういや、放課後どうする?」
「言った通り」
「了解」
優華は胸の違和感に疑問に思いながら、命都と話を続ける。
キーンコーンカーンコーン
「おーい、午後の授業始めるぞー」
「はーい」
午後のチャイムが鳴り、クラスのみんなが徐々に席についてゆく。そして何もなく午後の授業が始まり命都達は静かに授業に受けた。
そんなことがあり、時間は過ぎ、すぐに放課後となり教室には命都たちの姿はなかった。
「そっちどう?」
「もう少しで完了」
「了解」
命都達は薄暗い大きな倉庫みたいな部屋にいた。
辺りはガラクタの様にレンチなどの道具が散らばっており、ぎりぎり人が一人通れる幅があり、部屋にいた生徒たちはそこを歩きあっちとこっちと東方西走状態であった。
「おし!こっち終わったよ!」
「なら、あっち手伝って!」
「先にこっちを頼む!!」
十二月でもないのに生徒たちはせっせとあちこち走り回っていた。
「命都、どう?」
「ここのデータを変換すればなんとか」
「じゃあそうして」
「了解」
命都はこの部屋のトップ 暮内 千鶴の指示を聞いていた。
「部活があるものは行ってもいいぞ、あとは整備班の奴らがやる」
「「「はい! ありがとうございます!」」」
「後できちんと確認に来いよ」
「「「はい!」」」
千鶴が部活所属の生徒たちに解散の指示を出すと所属の生徒たちは大きな返事をしながらぞろぞろと去っていく。
「聞いたか整備班!手を動かせ」
「「「はい!」」」
千鶴の一言で多くの生徒たちは素早くなめらかに動いていた。
そんなこともあってか整備班のみんなが一騒動を終え休憩かつ片づけを行っていた。
「命都、お前はどうだ」
「こっちもデータの変換と移行きちんとできました」
「なんでいつもこの時期になると忙しくなるんだが」
「知りませんよ。訓練機のマニュアル設定なんて元より国がやるんじゃないんですか?」
「それがなぁ、お国の奴らやんなかったんだよ」
「それに今回は専用機持ちのメンテンナンスに被りますしね」
「まったく国も学校も何考えているのだが」
そう千鶴は頭をかいていると部屋の扉が開き始めた。
「ここがメンテナンスルームか」
「そうすっね、姉さん」
「あん? 誰だ」
扉を開けて入ってきたのは自分らと同じ制服だったがピアスを開けていたりなんだが嫌な感じを出している生徒だった。
「うん? 俺は、ニ年C組の川上 詩音様だ」
自分で様付けって、ちょっとないわ。
「お前、変なこと考えたろ」
「いいえ」
「それより要件は?」
「ここを貸し切りしたい」
「却下」
「は?」
千鶴の即答にさすがに思考が追いつけなかったのか詩音は間抜けな返事をする。
「いやだって、どうせ貸し出したら占拠するでしょ。そして、もう一回となるという悪循環が始まるからね」
「俺らを疑ってんのか」
「うん」
千鶴さんこれ以上はやめてくだせぇ、何だか彼女の視線が異様にこっちに来るんですが。
「ならこうしようぜ」
「決闘? 決闘罪に引っかかるよ」
千鶴さんあんた何者なのよ。そんなこと普通の人は知らないわ。
「それはこっちのセリフ」
まさかの読まれていた!?
「勝負ならいいだろ」
すると千鶴の目は一瞬、鋭くなり詩音を見つめる。
「へぇ、やるの?」
「私がやるのはそこのお前だけどな」
すると詩音の指先には命都の姿があり、当の本人は混乱していた。
「えっ? どういうこと?」
「よし! 乗った!」
「やりましょうか。準備は任せてください」
「?」
当の本人を除き千鶴の整備班のみんなやいつのまにかメンテナンス室に戻っていた優華もそれに賛同していた。
「えっ、えっ、えっ?」
「じゃあ、蜜! 準備を手伝いな!」
「はい! 姉さん!」
「許可下ろしてきますね。何にします?」
「演習にしとけ」
「了解」
「ん~?」
当の本人の了承もなく勝手に進む勝負の話、そして、命都は悟った。
こりゃ駄目だ、と。
勝手に話が進んで本人の了承がなかった今回の勝負。命都の頭はもはや諦めて、自分の機体のセッティングをし始めた。
「負けたらどうします?」
「こっちが負けたら、明け渡す。あっちが負けたらさっさと引いてもらうってことにしといたよ」
「知らないところで勝手に話が進んでいる」
命都は頬に浸りと嫌な汗を流しながら言う。
「機体には乗った?」
「はい」
「ならすぐに試合始まるから」
「はぁ」
「頑張ってね」
なんて無責任な人なんだ。
そう思いながらもきちんと準備は整える。
するとカウントダウンのランプが光り始めて、最後にビー!、と耳障りな音が鳴る。
「葛葉 命都。『ベガス』でます」
命都がそういうと同時にカタパルトが火花と電流を流しながら滑る。
視界は暗い場所からまぶしく明るく広い場所に出る。
「アリーナに到着。敵影は確認できず」
「周囲の警戒されたし」
「了解」
命都は優華のナビゲートを受けながらアリーナの中を徘徊する。
するとビー!ビー!と五月蠅い警鐘がなる。
「上!」
「!!」
命都はその注意に気づくと上からピンク色のビームが走る。
命都はそれを避けると、持っていたアサルトライフルを空に向ける。空は昼時のような曇りではなく青い空が広がっていた晴れた天気をしていた。
「どこに?」
「ここだよ」
「!!」
詩音は命都の背後におり、AS用のナイフで切り付けてきた。
「くっ」
命都はそれも見事にかわすと詩音の機体がそこにはあった。
「専用機? いや、改良機か」
「うん? よくわかったな。これは量産型の『甲鎧』の改良型だよ」
いい出来だ、と整備班のみんなも息を呑んだが、それ以上に驚いていたのは命都の操作テクニックであった。
勘がいいなんてもんじゃない。先に体が動いていた。
「さっきの攻撃は接合ビットか」
接合ビット…ビットとは違くて、サイドアームにくっついているビットの事を指す。ビットは脳内信号で命令を受けるが接合ビットはサイドアームと同じ使い方で直で操作ハンドルで操作する方法である。
「サイドアームでは不意の攻撃は限界があると見た、となると有線式も投入しているのか」
「ご名答。私の機体は専用機達にも遅れを取らないさ」
もはやそこまで改造してあるんなら専用機と言えるのではないのかと、思ってしますがそれは心の奥底に置いとく。
「そうかー、ならこっちも手加減できないや」
「は? なんで手加減しようとしたんだ?」
「いやだって、ぺっぴんさんを傷物にはできんでしょう」
「はぁ!? 何言ってんだ!?」
そういうと詩音は顔を耳まで真っ赤に染め反論する。
「初心さんだねぇ」
そんなことをメンテナンスルームの中継画面から見ている千鶴はそうぽつりとつぶやく。
「そんなことは良い!やる気あんのかてめぇ!」
「あるよ。無いけど」
「どっちなんだよ!?」
命都はそう言うと詩音の怒りは増す。
「嫌どっちも」
「意味わかんねぇよ、お前」
「そう?」
詩音が命都から目を離した瞬間、命都は手に持っていたアサルトライフルを発砲する。
「!! てめぇ!」
接合ビットを一つ破壊できたがもう一つ破壊する前に詩音に避けられる。
詩音はそれに怒ったのかAS用のナイフを持ちながら腕部に隠された銃口を向けそれを放つ。
「ふっ」
どんぐらい、その機体には秘密があるんだよ。
命都はその短い息遣いで一気に3mちょいまで離れる。
「くそっ!!」
詩音はそのまま下がった命都を逃さず腰につけていたライフルを命都に向け、放つ。
「落ちやがれっ!」
「断る!」
放たれたライフルの弾は命都の肩についていた盾でふさがれる。
命都はそのままアサルトライフルを腰についていたナイフに突っ込むと、ナイフはそのままアサルトライフルについていて、命都は詩音に斬り付ける。
「くっ!」
さすがに避けたとしても刃渡りのリーチの差で詩音の甲鎧に傷がつく。
「くっそ」
「まだまだ!」
さらに追い打ちをかけるようにアサルトライフルを振る。
するとその攻撃は詩音の腹に、直に当たる。
「ぐっ!」
強くかみしめられる歯は体の痛みをぶつけるかのように強くかみしめる。
痛みが引き立ち上がると命都に大きく叫ぶ。
「私はあの人に追いつくためにお前なんかに負けられないんだ!!」
一年前のとあるAS試合会場の観客席、センコーに連れられやってきた会場。
あぁ、こんなことをするよりさっさと帰ってゲーセンに行きたい。
こんなつまらない物よりショッピングモールにいって服買いたいんですけど、あーあ、駅の近くで遊んでいたのが悪かったな。
先生、なんか今日の試合はうちの学校の人も出てるって言っていたよな。ならさっさと負けてくんねーかな?遊びに行きたいんですけど。
はぁー、適当に見ときますか。
?、なんだあれ?すごいやつがいるんだな。へぇー、なんか変な奴だな。………ひっ、やべぇところだったな、アイツ。おもしろくなってきやがったな。…………そう来るか すげー!
それから自分はそのおもしろい奴を目で追いかけていた。目を子供のように蘭々と輝かせていた。かっこいいと思ってしまったのである。こんなにASが面白いものなんて思わなかった。
試合はあっけなく終わった。
「おう、どうした川上。そんなに楽しそうに、なんかいいことあったのか」
「げっ、薫子先生……」
「げっ、とはなんだ。まったく、それでどうした?」
「いやぁ、無理やり連れてこられてつまらないものだと思ったやつがこんなに面白そうなんて思わなくて」
「そうか」
なんだかこの先生も話してみるとこんなに面白いんだな。
「今度からきちんと授業受けろよ」
「えー」
「えー、じゃないわ。でなければ貴様が言ったあんなに面白かったものができないぞ」
「!!」
それだけは嫌だ。あんなに面白そうにやっているところを見たらそこらのゲーセンじゃ味わえない!!
「そう。そんな感じでいいんだ」
薫子先生は不気味な笑顔でこちらを見てくる。そういえば……。
「薫子先生」
「? なんだ」
「この人の名前ってなんていうんですか?」
そういうと手に持っていたスマホの画面を見せる。
「お前、写真は撮るなって言われていなかったんじゃないのか?」
「え~、そんなこと言われていないですけど」
自分は明後日の方向に視線を送る。
「はぁ、今回は目を瞑っておいといてやる」
「あざーす」
「んで、こいつか?」
「はい」
スマホの画面をピンチアウトを行い良く見せる。
「こいつか?正直言うと私も知らん」
「はぁ、先生は先生でしょ」
「あぁ、そうだが」
「じゃあ、何でそんなことがわからないの?」
「お前は一つだけ間違っている。私は教師だが仙人でも、神様でもないんだぞ」
薫子先生たまには正論、言ってくんだよなぁ。
「えー」
「だが一つだけ知れる方法があるぞ」
ん?なんだろ?もしかして普通の方法じゃない!?
「お前が強くなれば出会えるかもしれないぞ」
「えー、やっぱり努力じゃん。もっとパっ、と行けるかと思ったのに」
「そんなわけあるか、馬鹿者」
「えー」
「それに努力した方が何かといいぞ」
えっ、どういう意味?
「努力して強くなったらお前が思うそのかっこいい奴に出会ったら、お前自身も嬉しくなるだろう」
そうだ、何もない状態で出会ってもうれしいが頑張って出会った方が自由感があるし満足感がある。
この人はそれが言いたいのだろうか?
「結局、最大の近道は『頑張ること』だ。ましてや『努力』と言ってしまったらなんだか苦労していると感じてしまうだろう?」
薫子先生はそう言って主席簿をひらひらと振る。それを見た詩音は自分が持っていたスマホの画面を見る。
そこに映っていたのはヘッドギアを付けているASの姿があった。
あぁ、この人に出会えたらどんなに嬉しいのだろう。
「やってみます」
「そうか」
薫子先生はそう言って、どっかに行ってしまう。けれど、自分の中のどこかで静かに闘志が燃え上がった感じがした。
「明日からがんばろ」
そこから自分は帰り道本を買ってASについて勉強したし、テレビやネットでASのニュースをたくさん見た。
仲間たちからも白い目で見られた時があったり、先生やクラスの奴らからも疑いの目が向けられた時だってあった。
けれど、それも自分があの人に会うための犠牲だったとしても自分は努力した結果だ、それでも蜜はついてきてくれて、それに賛同する人も増えてきた。
あの人に追いつきたくて、色んな苦労もしたけど蜜たちに支えられた。
だから……。
だからこそ……。
「だから、負けられないんだ!」
詩音の言葉には信念があって勇気があって夢がこもっていた。
「ならば本気を出せ。俺を殺す気で来い」
命都は、それに焚きつけられるかのように、声音が強くなり詩音に威圧をかけるようにまっすぐ見つめる。
「おらよっ!」
「来いっ!」
二人は手に持っているナイフとアサルトライフルをぶつけあえ火花を散らす。
「それが本気か?」
「何だと!」
命都に挑発された詩音はもう一つの接合ビット命都に向けてビームを放つ。
「甘い!」
命都に放たれたビームはベガスの肩部にふさがれる。
「なら!」
「!!」
詩音は一気に距離をとったと思った瞬間、瞬間加速をかけて急接近しベガスの右肩部をナイフで切り裂く。
ベガスの右肩部はまるで溶接機で切られたように溶けており斬られた場所がほんのり赤い。
「あちゃー、それすっごい切れ味あるね」
「何言ってんだよ。お前が言ったんだろ『殺す気で来い』ってな!」
「あぁ~、過去の自分を殴って来たいわ」
たった数秒前だろ、という千鶴の言葉を流し命都は持っていたアサルトライフルを構え直し詩音の攻撃の回避を始める。
「おらおら!どうしたんだよ!」
詩音の容赦ない怒涛の攻撃は命都に余地を与えないほどの攻撃量だった。
それに対し命都は、やっとスイッチが入ったか、とにやりと小さな微笑を見せ、盛大に戦いに楽しんでいた。
一気に距離をとりながら命都はアサルトライフルの引き金を引く。
詩音はそれを確かめると回避行動をとるが詩音の切り札でもあった接合ビットが破壊される。接合ビットがなくなったことになり一瞬、体のバランスを崩しよろけるところを命都は距離をとるのを途中でやめ瞬間加速を使用し一気に近づく。
詩音も瞬間加速を使用してナイフを振ろうとするがバランスをとれないためあらぬ方向にナイフの刃が飛んでしまう。
「fire」
命都はそう言うとアサルトライフルの引き金を引きながらそのまま甲鎧に突っ込む。
アサルトライフルの先端についているナイフがそのまま甲鎧の装甲を突き刺す。
「くっ」
甲鎧の急所に当てたため甲鎧のエネルギーが一気に減る。
そしてそのままベガスと甲鎧はアリーナの壁に激突し爆発と煙が辺りにまく。
「ううっ、くそ」
甲鎧のエネルギーはもう残っておらず、詩音は立ち上がることもできなかった。
視界は徐々に晴れていき詩音の視界には一つの影が見える。
命都だ。
「お前の敗因はただ一つ、その機体に慣れたフリをしていたところだ。お前がそれに慣れてしまってほかの問題点も解消しない限り、あの人に到底、追いつけんな」
まるで、命都分かったかのように言葉を並べ、アサルトライフルの銃口を向ける。
「ははっ、そうかよ」
それが詩音が試合で最後に見た光景だった。
びー!
試合終了のアラームが鳴り響く。
「ふ―、疲れた」
「お疲れー、大変だったでしょ」
あぁ、全くそうだ。あんたのせいでな。
命都の目は冷たいではなくもはや氷河期に行けるほどの視線を送りながら機体を粒子に戻して地上に足を付ける。それに対し千鶴は明後日の方向に目を向けている。
「で? なんか?」
「あの子にもメンテナンスルームの貸し出ししそうと考えたんだけど」
「さっき言っていたことと矛盾しているじゃないですか。まったく……で? どういう意見ですか」
「ほう、一応理由聞くのか」
私はあまりそういう馬鹿ではないよ。
命都はそのまま静かに千鶴の話をきく。
「あの子ね、なんか凄いのになりそうで」
「あっはい」
真面目そうな顔だが適当な答えに命都のキャパを軽く超えていき思考が止まる。
もう、どこから突っ込めばいいんだ?
「でさ入れてもいいんじゃない? と思ったわけよ」
どこからそうなった。
話が吹き飛びすぎて思考が追いつかない命都は眉間にしわを寄せながら目頭をつまむ。
「あ、えっーと。簡単に言うと才能あるから貸すと?」
「そう」
「なら最初から言ってくだせぇ。回りくどいっすわ。千鶴さん」
「そうか?」
命都はええ、っと頭を縦に振る。
千鶴はそうかな、とつぶやきながら頭をかく。
「で? どうなんだ?」
「いいですわ。あ、ОKの方ですかね」
「分かった」
千鶴は小さな微笑をするとアリーナから去っていった。
「まぁ、それも面白そうだよね」
「何が」
「!? 居たんかい!?」
「うん」
命都がしみじみと千鶴を見ていると背後に優華がいた。
その手には、ふかふかなタオルと『お茶』と書いてあるラベルが貼ってあるキンキンに冷えたペットボトルを持っていた。
「はい」
「ありがとさん」
命都は正直に礼を言うと、優華の頬がほんのり赤くなりながらにっこりと笑う。
「今回の試合どうだった?」
「まぁまぁ?」
「どういうこと?」
「よくわからん」
「は?」
命都の答えに理解が追いつけなかった優華は頭の上にはてなマークを立てながら首をかしげる。
「いやだって『スイッチ』が入ると頭の中に記憶がほとんど残らないんだよね」
「そう」
命都はそう淡々に言いながら渡されていたタオルに顔をうずめる。
そのまま命都は顔をごしごしと擦るように汗をぬぐう。
「今日はこれで落ちるわ」
「わかった。千鶴さんには私から言っとくね」
「ありがと」
そのまま命都は手に渡されたタオルとペットボトルを持ってアリーナから出る。
アリーナの更衣室で矢倭は着替えていた。
「直すのにまた時間がかかるかな?」
そのまま手に付けていた指輪を見る。指輪は蛍光灯の反射できらりと輝く。
「そうか」
その輝きに命都はわかったかのように話す。
「まだ、がんばんないとな」
誰もいない更衣室の中で命都は小さく呟いた。
何かに見られているのを気づきながら‥‥。
注意!ここからは大事な内容です!
この作品はため込んでいたものを修正なしで素体のままで出しています。
故に何が間違っていたり、おかしかったりしても作者自身気づいていません。
だって、数年前だし書いたの…(*´з`)