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エア・クラフト・スチール  作者: 山鳥のハラミ
蒼と鷹の目と狙撃銃
17/22

ep04-1 『Hawk eye〈鷹の目〉』

 薫子先生に呼ばれ、自分を含めたクラスの皆がそこにいた。

 綺麗に整列されたクラスの目の前で薫子先生は口を開く。

「よし、全員集まったな。では、休憩を十分挟み次第、訓練弾を使用した戦闘訓練に入る。この学校に入った以上、『いいえ』『NO』などの言葉は聞き入れられないと思えどちらにせよ社会に出てこの業界に入ったら『はい』か『YES』以外、無い。『いいえ』『NO』が言えるのはエース、権力者、ASに関していない者だけだ。わかったか? 分かったなら返事をしろ!」

「「「はい!」」」

「では休憩!」

 薫子先生のその大きな一言で、皆、その場から解散する。

「ふぅー」

 まぁ、体は休めるかな……?頭は知らんけど、少し糖分が欲しい所だ。

「疲れていそう、だな」

 すると隣から聞きなれた声が聞こえる。

 振り向くとそこには、いつもの顔、篠原 優華がいた。

「あん、なんだ優華」

「はい、これ」

 優華のその手には、自分の水筒と小さな包装に包まれていたものがニ、三個ほどあった。

「あ、ありがと………ありがと?」

「うん」

「……いいの?」

「うん」

「そう………おっ、チョコ」

 小さな包装を剥がすと、そこには綺麗な色に艶があるチョコがでてきた。

「まぁ、予想していたけど、この時期にチョコ?」

「うん、糖分摂取にはいい」

「それと一緒に脂肪もたまるけどね」

「まぁ、気にしたら負け。どっちにしろ、次の時間でその脂肪も消える」

「あっそ、ならいいのね。いただきますっと」

「どうぞ」

 そうして口の中に貰ったチョコを放り込む。

「ん!」

 すると、チョコは口の中でゆっくりと溶けていく。溶けてきたチョコの甘みが口の中に広がり、あっという間に口の中が甘さパーリナイになる。

「あまっ」

「飲み物と一緒に食べろ」

「うん」

 優華にそう言われて、水筒の蓋を開き飲み口を口に付ける。

「ふぅー、うまいな」

「でしょ」

「これどこの?」

「さぁね、貰い物だから」

「そう、残念だ。是非、知りたいな」

「……そう」

「うん?」

 なんで、優華が顔を赤くしているんだ?………熱……なわけないか。というとなると、このチョコ、もしかして好きな人のチョコ!?……ってそれもないか(笑)。

 じゃぁ、なんで?…………うん、考えても分かりそうにない。

「…………………」

「…………………」

 だが気になる。

「ねぇ」

「! な、なに」

「熱でもあるの?顔、紅いけど。熱あるんなら保健室いきなさいよ」

「………」

 なんで、そのような唖然とした顔で見るのだろうか?

「はぁ、淡い期待」

「はぁ!?何がだよ!?」

「……そう言う所」

「?」

「はぁ」

 ため息をつく優華に自分は不思議そうな顔で見る。

 本当になんなんだ。

「食べろ」

「うん、けどありがとう」

「………どういたしまして」

 感謝の言葉を言うと、優華は再び顔を赤くして返事をする。

「……………………」

「……………………」

 沈黙が流れる。というかなぜか気まずい雰囲気になる。

 チョコを頬張りながら、隣で座っている優華を見る。

「……何?」

「何でも」

「そう」

 会話がすぐに終わる。誰かこいつとうまく繋げる会話の内容とか言ってくれないかなぁ?

「なぁ、優華」

「何?」

 ……話を振ってみたけどなんも思いつかない。どんな、話にしましょうかねぇ?

 あ、一つだけあるかもしれない。

「お前って、大会出るの?」

「えっ、今?」

「うん、今」

 会話の話題が見つからないから。

「……なんだか、関係なさそうだけどいい。大会、大会かぁ。まぁ、でるだろうね」

「雪辱果たす?」

「………お前、それ、あまりいうなよ?」

「まぁまぁ、分かっているって。それが約束だしね。で、どうなのよ?勝ち目とかある?」

「……勝ち目、か。なぁ、命都」

「うん、何?」

 おや、優華から質問なんて珍しい(?)

 何でありましょうかね?

「私の専属整備士になってくれない?」

「「!!」」

「んー、なんで?」

 どこかのお二人さんが驚いたことは黙っておこう。

 まぁ、そんなことより。何で求めたんだろう?それほどすごくは無いよ?………多分。

「まぁ、何点かあるけどバッサリまとめてしまうと三点程。一番は私のことをよく知っているから。次はお前の整備技術が良いから。そして最後は……安心できるから」

「……」

 まさか、そこまで言われるとは、……思わなかった。

 優華の真剣な顔、ということはそれぐらい本気ということなのだろう。そんな彼女に対して自分は答えなければいけないのだろうか?いや、答えなければならない。恋バナとかででてくるそっち側の真剣な話じゃないからね。

「うーん」

 悩む。優華の真剣さにもだ。それに自分の方にも支障が出るのなら、この話はやめにしないといけない。だが…………よし、決めた。

「受けよう」

「! ほんと?」

「あぁ、だが条件がある」

「……何?」

「’俺’も出るから、多分、出来るときと出来ないときあるから」

「………は?」

 優華から呆気ない声が出てくる。

「あれ?聞こえなかった? 俺、大会でr」

「いや、聞こえた。聞こえた。…………お前、出るの?」

「うん」

「大会に?」

「うん」

 優華は頭を抱え始める。

 そんなにやばい発言だったかな?そんな気はしなかったが。

「……本当に出るんだな」

「まぁね。去年は出られなかったし。今年は面白そうという気分半分で参加するよ」

「……舐めているの?そんな気持ちじゃダメ」

「知っているよ。何事も本気を出すさ。小さい大会とはいえ、いるのは本気の人たちだ。手加減なんてしない」

「そうか」

 よし、納得してくれた。これで、自分も自由に行動できる。

 ……にしても、簡単に了承してくれたのが少し怖いかな。うん。何、企んでいるんだろうとか思っちゃつて。

「じゃあ、対戦相手になったら、どうする?」

「優華のヴァルプルギスにも本気で整備するし、自分の奴にも本気出して整備する」

「自由だね」

「自由じゃなきゃ意味がないしね」

「そう」

 優華は満足そうな顔をしているが、どこか遠い、不安そうな目をしている。

 何故だろうか、その目が気になる。うん、気になる。もう、既にチョコも食い終わっちゃったし、聞こ。

「どうした?」

「……えっ、私に言っている?」

「お前以外誰がいるんだよ」

 周りに居ねぇだろ誰も。てか近づいてもいねぇだろ。

「そう、そうか、………私、どうしたんだろうな」

「あ?本当にどうした?呆けた口から魂でも出そうになっているぞ」

「なんだ、その表現」

「だってそんな顔していたじゃねぇか。ふわ~、ってそんな顔をしてぞ」

「………ふふっ」

「なんだよ」

 優華はなぜか黙り込むと勝手に笑いだした。

 笑える要素、無かったじゃん。なんで、笑った?怒るよ?激おこするよ?

「いや、なんでも」

「はぁ?切れるゾ」

「何でもない。……本当に何でもないぞ」

「……あぁ、そうですか」

 なんだかしっくりしない間に解決しちゃったし、いつもの優華になったし、本当になんだったんだ。

 まぁ、いいの、かな?うん、いいかな。気になるけどいいよね。

「で、どうするの?契約する?yes?no?」

「あぁ、答えは一つ。Yesだ」

「OK、ならあんたの専属整備士、やってやる」

「あぁ、頼む。私の専属整備士になってくれ」

「なら、放課後見てやるからメンテナンスルームに来いよ?」

「分かっている」

 そう言いながら立ち上がる優華は先ほどまでの虚無だった目がなくなっていた。

 それだけじゃない。どこか、元気になったと感じられた。

「……はぁ、ならいいけど。じゃあ、行きますか」

「うん、はい」

「はい?」

 なぜか、先に立っていたはずの優華が自分の目の前に立ち、手を差し出している。

 なんだろうか、その手は?

「立つんでしょ?」

 抑揚のない声、無表情に近い顔を向けながら、ただ手を向けてくる。

「あ、うん。そう、ですよ?」

 戸惑いながらも、優華の手を取ると勢い良く引っ張られ、立ち上がる。

 今、自分の腕の関節がなんか鳴ったけど、黙っていようかな。

「行こう」

 するとそのまま引っ張ったまま薫子先生の方へと連れて行こうとする。

 あ、ちょっと待って、やっぱり腕の方も確認していい?それにまだ、チャイム鳴ってないから!?鳴ってないからぁ!?

「早く、行こう」

 そう強く握る優華に対して自分は、ただ引っ張られていた。

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