大里浩一(高校生)【7】
外が騒がしい。それも普段の駅前の賑やかさではない。驚きの叫びと誰かの悲鳴が混じった、どよどよとした混乱の音だ。覆いかぶさるように響く救急車のサイレンが、次第に大きくなってくる。浩一の位置からは光が反射して外の様子はよく見えないが、走っている人もいるようだ。彼はさっきの郵便局前での光景を思い出した。
なんだろ、と宇都さんと顔を見合わせる。その横を霧島さんが、「えーなになに」と小走りで通り過ぎていく。窓から様子を見ようというのだろう。浩一は周囲を見まわした。店内の客はみな一様に不思議そうな顔で外の様子をうかがっている。霧島さんと同じように窓に歩み寄る人もいた。史織と崎山も店の入口あたりで、やはり不審そうに眉をひそめている。
「なんだろう、事故かな……」
つぶやきながら、霧島さんのあとを追うように、カフェスペースのほうに足を向ける。数歩進んだところで、宇都さんのほうに振り返った。蒼ざめた彼女の顔を見て、様子見てくるから、と言おうと思った。ちょっと待ってて、と。けれど浩一が口を開きかけた瞬間。
「浩一!!」
史織の悲鳴のような大声と、窓がぶち破られる爆発のような音とはほとんど同時だった。
何が起こったのかまったくわからなかった。ガラスが砕け木が裂け金属がひしゃげ肉が弾ける音がめちゃくちゃに混ざり合った轟音が浩一の後頭部を襲う。即座にやってきた物理的な衝撃は、彼に振り向く暇も与えなかった。かろうじて首筋に何かがぶつかったことだけが脳裏に弾ける。だが同時に眼球の奥で灼熱が閃き、彼の意識は抗いようもなく吹き飛ばされた。




