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大里浩一(高校生)【6】

 店の名前はオクタホテルというらしい。手前が雑貨屋、奥の窓側がカフェになっており、どちらも女性客ばかりのようだ。雑貨屋スペースで取り扱っているのは、色とりどりのカップやお皿、帽子や服に小物など。女性向けのお店なのでこれまで入ったことはなかったが、さいわい、気後れするようなことはなかった――昔から姉の買いものに付き合わされることが多くて、こういう店には慣れていた。遅れて入ってきた宇都さんにハンカチの場所を訊ねながら、店内を物色してゆく。

「えっとねー、そこのバッグのまえのー、ちっちゃな台の上だよ」

 宇都さんが示す方向に、ハンカチやタオルなどがきれいに並べられた陳列台があった。

「あ、ここか。たくさんあるねえ」

「そだねえ」

 隣りに並んで台を覗き込む宇都さんを意識しながら、ハンカチをひとつ取りあげてみる。

 彼女と話をするのに母の日を口実にはしたけれど、実際、何を贈ろうかと悩んでいないわけでもない。去年は当日まで記念日のことを忘れていた。あわてて、学校帰り、伊集院町の自宅近くにある花屋でカーネーションを買ったのだが、小学六年生の妹が用意したものと重なってしまったのだった。その日の夜、妹からはぶうぶう言われたものだ。

 妹はまだ市外――自宅のある日置市外――へ遊びに出ることを許されておらず、お小遣いも少ないため、プレゼントの選択肢が少ない。品がかぶらないように譲歩すべきは浩一のほうだった。妹は今年も花を贈るつもりらしく、自分はどうしようかと、ぼんやり思ってはいたのである。

 何気なく手にしたハンカチは、白地に薄桃色の花が刺繍がしてある。ためつすがめつ、どんなもんかと値札をつまみあげてみた。

「これなんか俺、わりと好きかも――あっうわ、でも三千円? すごいね、こんなするんだ。ブランド物?」

 驚いて宇都さんのほうを向く。だがすぐに、変なこと言ったかな、と照れくさくなって、笑いながら付け足した。

「これじゃ俺の小遣いなくなっちゃうわ」

「あはは、それは確かに高すぎだよ」

 宇都さんも笑いながら、でもでも、と陳列台に目を落とす。

「あたしが買ったのはね、そんなすごいやつじゃなくて――」

 不意に言葉を切り、彼女は窓の外に目をやった。彼女の横顔に目を奪われていた浩一も、一瞬遅れてそれに気づく。

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