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大里浩一(高校生)【5】

 しかし、さっき史織にも言われたことだが、何か自分から行動を起こさないといけないことは浩一もわかっていた。女子がお店を見てまわったあとで、ゲーセンかスタバあたりがやはり無難だろうか。だが二人で何か、というのは――

 悩みながら駅ビルの自動ドアを抜けて歩いていると、霧島さんと宇都さんの会話が耳にはいってきた。

「紗耶香はなに買うんだったっけ?」

「んー、いやー、特になにっていうのは……マンガくらいかなあ。あとは母の日のプレゼント選ぼっかなー」

 そういえばそうか。五月の第二日曜日は母の日か。そう思ったときには、自分でも思いがけず声が出ていた。

「あ、そうかー、もうすぐじゃん。宇都さんはなに買うの?」

 宇都さんは困ったように笑いながら、小首を傾げた。

「やー、まだなにも考えてないんだけどねー。去年はハンカチ買ったから、今年は別のにしよっかなー、くらいで」

「俺こういうの苦手でさ、いっしょに選んでよ」

 ここまで言うつもりはなかった。しかしもう言葉は口を滑り出てしまっていた。どうにか――何か――二人で一緒にしてみたいという気持ちばかりが先走ってしまっていた。なんて不器用な。あまりの唐突さと見え透いた下心と救いようのないダサさに、ほら見ろ、宇都さんもどうしていいかわからずに、「そんな、わかんないよー」とあさっての方向を見つめている。そりゃそうだ、人の母親のプレゼント選ぶなんて。だがもう事態は元に戻しようがなかった。浩一としては、会話を続けるよりほかなかった。

「俺、去年はすっかり忘れちゃっててさ。当日にあわててカーネーション買ったんだよ」

「そ、そうなんだー、カーネーションもいいよね。てっぱん」

「でもハンカチとかもいいね。どういうとこで選べばいいのかなあ」

「い、いろいろだからねー」

「山形屋とかかなあ」

 アミュプラザに来てなにを言ってるんだ俺は!

「あ、でもさ、紗耶香ここで買ったんじゃなかったっけ去年」

 隣のカフェ兼雑貨屋を指差した霧島さんが、ほとんど救いの女神だった。浩一は「あ、そうなんだ? どんなの? まだあるかな」と意識して明るい声に努めながら店の入口に向かう。史織が苦笑いしているのが目の端に入るが、極力気にしないようにした。

 入口までの短い距離を歩きながら、浩一は深呼吸をひとつした。気を取り直さなければならない。仕切り直さなければならない。自分でも思いがけないこの展開を、いいように繋げなければならない。もうひとつ深呼吸。すこし落ち着いてはきたけれど、こうなってはやけくそのような感覚もこみあげてきた。浩一はうしろを振り返ると、まだその場に立ったままの宇都さんに笑顔で手招きしてみた。彼女がこちらに駆け寄ってくるのを見てから、店内に入る。

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