象徴詩『回転式昇天』
フランシス製自白時計の前面
瞋恚を携え立つと
白く濡れた全時間が浮いてくる
指差し 秒針に流されれば軽く
逆らうなら重く絡む
掻き混ぜた悪事と善行のマーブルが浮く
それがシロアムだと吹き込まれれば
目にアクリルの厚膜を掛ける
横の世界と縦の自己
中間にある重複十字路の身体に
理想化されたエデンが投射され
深く澄んだ遠景が
時化た死海を映像により統括する
少なくとも楽譜を読むことが
音楽ではないと歌う
自動制御された人形
伸び切った螺子を巻くのは
他者である自動制御された人形
地核に飲まれ恍惚と沈んで行く
金銭の価となり
家が崩れ真新しく移り変わる
突かれて勢いよく走り出す
すぐに橋を越える
驚嘆石で造られた広い橋
瓦斯灯の消えた黒い橋
越えると潰れた牛乳屋は消えている
サクラに沿った川は乾上がっている
マイナスが二人
出会い頭で影二つが走り逃げる
狂っているのは一人で残っている方だと
常に決定されている
同一性の概念と輪郭を貪るため
襲い掛かってくる
他者の概念を食わなければ消えるもの
大きな岩によじ登り
立ち上がると側に道が通じている
道はまだ暗いが暁を感じていた
行き止まりには波が打ち上げていた
叡智の延長である
この似姿が
病んだ腐肉だとしても
刻印は穿たれ続ける
選択と排除を促す嫌悪と悲哀は
絶え間無く注がれている
詩編の一句も思い出せず
思い出す気息すら絶え絶え
涸れて 水を待つ
聖霊による洗礼が
間に合わない焦燥に
懐疑が冷たく喉を潤す
傷付け抉る
鋭利で息苦しい言葉で
我を圧する天を折り曲げ
手の届く此処へと引き摺り下ろす
目が合えば
それに会えば
フランシス製自白時計が
七つ打ち鳴り
理性を捩り潰すほど
重く
絡み付く