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【詩集】Shangri-La

オルゴール

作者: 野鶴善明


 夜の待合室

 誰もいない駅

 裸電球がわびしく灯る

 君はオルゴールを膝に抱えて

 僕は切符を握りしめて


 翼の折れた天使が歌う

 哀しい調べ 別れのメロディー

 愛になるようでならなかった恋

 大切なものを見ようとしなかったね

 オルゴールはささやきかける


 ガラス窓の外

 白けた闇の底

 貨物列車が駆け抜ける

 レールが軋む

 風が軋む

 心が軋む

 窓の木枠がことこと鳴り

 すきま風がスカートを揺らした

 君はオルゴールを巻き直す



 迷い込んだ仔犬が

 黙りこくった僕たちを見上げ

 物欲しそうに尻尾を振った

 あげられるものは

 なんにもないんだよ


 翼の折れた天使が口ずさむ

 物憂い調べ さよならのメロディー

 愛を裏切り続けてしまった恋

 君と見た夢を嘘だと思いたくないけど

 嘘だと決めつけたくはないけれど


 月の浮かぶ闇の果て

 閉ざされた世界の淵

 夜汽車の汽笛が鳴り響く

 光が砕ける

 時が砕ける

 思い出が砕ける

 ボストンバックを握りしめ

 立ち上がった僕に

 「このほうがいいのよ」

 うつむいたままつぶやき

 君はオルゴールを巻き直す



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― 新着の感想 ―
[良い点] オルゴール、かわいい音色ですよね。
2019/10/14 05:41 退会済み
管理
[良い点] オルゴールの奏でる音楽は、どこか哀しくて。 いろいろなメロディを奏でてまわる。 オルゴールを持った女性はここに留まるのか。 オルゴールをただ巻き直しながら。 そしてすれ違う、ボストンバッグ…
2015/10/19 21:19 退会済み
管理
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