僕は目がいい(短編)
さーてとりあえず一人で書いてみたらこうなりました。
僕は目がいい。
それに気づいたのは小学生の頃。
他の人に見えないものが見えていた僕は、それを何度も回りの人にそのつど言っていた。
回りの反応に中学に上がる頃には言わない方が自分の為だと気づいた。
その後は自分を隠し高校、大学と卒業し、就職もした。
就職して二年職場の先輩と反りが合わず退社した。
そして地元に帰りとあるこじんまりとした旅館に就職した。
調理補助としてはいった職場。
直接の同僚は五人。
とりあえずそこで働いた。
そして気づくこの同僚達のおかしさに。
遅く来て速く帰るチンピラのようなスキンヘッドの板長。
四十手前のポニーテールの女性の副板。
デップりと太った切り板。
出身国不詳の寡黙な煮方。
僕と同じ調理補助の怪しい中国人。
この怪しさ満天の職場で働いた。
ある日太った切り板の阿笠さんと、出身国不明のアルさんと、怪しい中国人の劉さんと飲みに行った帰りに、奴等が現れた。
久方ぶりに見た異形。
かつてよく見ていたもの。
今は意識をしなければ見えなくなったそれ。
「あっ?なんだこいつら?」
阿笠さんがポツリと呟く。
「やっと見つけた!!やっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっと見つけた!!!!!!!心眼の御子!!どれだけ我らが探したか!!その目もらうぞ!!」
そう喚き散ら目を血走らせながら走りよってくるそれ。
はじめて自分に害をなそうとする異形に数歩下がる事しかできなかった。
「あーなんだこいつらぶっ飛ばせばいいのか?綾?」
そんなことを言う先輩に僕はちゃんと返事ができなかった。
「えっは?」
気づいたときには阿笠さんは突っ込んで行った。
「アヤチャン。アンマリミナイ、イイヨ。ニイサンアバレダシタラキケンヨ。」
そんなことを言いながら劉さんが、腰から何かを抜いた。
「アル!アンマリデスギルダメヨ!!ニイサンサポートスルイイヨ!!」
劉さんの言葉にアルさんを見ると異形のなかで暴れる阿笠さんとアルさんがいた。
その体型から想像できない俊敏な足技で暴れる阿笠さん。
対照的に貫手で相手を倒してく手技のアルさん。
「ニイサンアンマリコッチニコサセナイデヨ!ワタシニイサンタチトチガッテセッキンセンニガテヨ!!ッハ!!」
そういいながら棒のようなもので戦う劉さん。
猿のような異形が次々と倒れていく。
「あ~血が滾るな!!おい!!アル!一人も逃がすんじゃねぇぞ!!」
その言葉にアルさんが頷く。
一時間もした時、異形は一人残らず倒れ付していた。
僕はそれに絶句していた。
二桁はいた猿の異形はたった三人たらずの人間に倒されていた。
「お~楽しかった。おい劉、こいつらの処分任せていいか?」
劉さんはスマホをだしながら。
「ニイサンヒトヅカイアライヨ……マァヤルケド…」
何処かに連絡をしている劉さんをおいて僕たちは帰っていった。
劉さんの声は風に流れて消えた。
「アア、ココハワカルネ?サルヒキトッテヨ?アア…アア…ワカタヨ。ヨロシクヨ。
僕のまわりでこれから起こる何かを感じながら。