幼馴染み×幼馴染み
俺には好きな人がいる。
生まれた時からの付き合いで、学校も同じ、家も隣同士という絵に書いたような幼馴染。
いつから好きだったかなんて思い出せないけど、幼馴染という居心地のいい関係が壊れるのが怖くて、踏み出せなかった。
でも、幼馴染みが、告白されているのを見た時初めて、いつまでも一緒にいれるわけじゃないと分かって慌てた。
いつも一緒だった俺たちも、いつかは、いや、そう遠くない内に分かれることになる。
そうなる前に、自分の気持ちを伝えたい、幼馴染みを自分のものにしたい、そんな焦燥が俺を突き動かしていた。
メール一本で呼び出したのは放課後の校舎裏。呼び出すには古典的な場所だが、通学路なんかよりは百倍ましだと思う。
「好きなんだ」
「え?」
突然、俺が告げた言葉に、幼馴染みは間の抜けた声を漏らした。
「お前のこと、ずっと好きだったんだ」
「はあ!? ちょ、ちょっと、あんた、本気で言ってるわけ!?」
気のせいかわずかに頬に朱が差しているように見えるけれど、だいたい、予想通りの反応だ。
「ああ、俺は本気だ!」
「え、で、でも、ほら、幼馴染でしょ?」
確かに、幼馴染だ。お互いの良いところも悪いところも周囲に隠している黒歴史も知っている。そういう仲だ。
だだ、だからと言って恋愛が成立しないかといえばそうではない、と俺は思っている。
というか、そういう関係だからこそ成立する恋愛もあるのではないだろうか。
「それでも好きになったんだから仕方ないだろうが」
「そ、そうかもしれないけどさ……でも、ずっと一緒だったんだし、今更気まずくならない?」
「そういうのは問題じゃないだろ? 問題はお互いが通じ合ってるかどうかだ。だろ?何とか言ってくれよ!」
威勢のいいことばかり言っているけれど、内心では冷や汗が止まらない。
正直、行くところまで行くしかないと分かってはいるのだが、緊張と理解は無縁ということだろうか。
「いやいや、待ちなさいよ!」
なぜそんなに慌てているのかはわからないが、もちろん俺は止まらない、というか止まれない。
「待つわけあるか。で、どうなんだよ?」
俺が催促すると、俯いていた顔を上げ、頬を染めて上目遣いに見つめてくる。どうやら気のせいではなかったらしい。
「……ぼ、僕でいいなら、喜んで」
恥ずかしそうに目を逸らし、頬を赤く染めながらそう答えてくれる。
優しく微笑んだ俺と、幼馴染みの目が合う。
至近で見つめ合う二人。
というところで、わなわなと震えていた幼馴染みが叫ぶ。
「いやだから! そもそも男同士でしょうが! なに? あんたたちそっち系だったの!?」
「え、いや、それは……」
なんとも言えなくなった俺が気まずげに目を逸らす。やらかしたという自覚はあるのだ。というか、正気ではなかった。
「ああ、もう知らない! こんな場面にわたしを呼ぶな! 一生知りたくなかった幼馴染の秘密知っちゃったでしょうが!」
八つ当たり気味に地面を蹴りながら歩き去る幼馴染を俺は見送るしかできない。
「……ばか」
泣きそうな声で小さく聞こえた罵倒と、すれ違いざまに、一瞬だけ見えた涙と悲しそうな表情が俺の胸を締め付ける。
そんな俺を見て、もう一人の幼馴染は呆れたようにため息をつく。
「はあ……お互い素直じゃないね。ほら、追いかけなよ」
「え? いや……」
歯切れの悪い態度を取る俺を、幼馴染は突き飛ばして笑う。
「ほら、ね?」
「悪い。ついでにさっきのは忘れてくれると助かる」
「うーんそうだねー。考えとくよ」
その言葉を聞いて幼馴染を軽く小突いた俺は走り出す。幸い遠くには行ってなかったようですぐに彼女は見つかった。
おそらくだが、追いかけてくれることを期待していたのだろう。素直じゃない。
だけど、俺はそんな天邪鬼なところを含めて、彼女が好きなんだ。
俺は足を止めて息を整えてからゆっくりと近付き、彼女を後ろから抱きしめる。抵抗はない。
それが、受け入れてくれる証だと思った俺は、ずっと伝えようと思っていた言葉を、彼女の耳元に囁く。
「好きだよ」
腕の中で彼女の華奢な身体が震えた。
「……ばか」
そう小さく返した彼女の耳は真っ赤に染まっていてーー
本当はもう少し長い短編になる予定だったんですが、1000字企画を目指したもので、字数が減少。
結果、微妙な字数になりました。笑
まあ、一人称がド下手なのは気にしないでください。
以下に裏設定を所持。
・主人公
普通の男子高校生。
幼馴染の女の子に結構前から惚れてる。
いざ告白と呼び出してはみたものの、いつものノリでもう一人の幼馴染と一緒に行動してしまい、緊張と動揺の末、もう一人の幼馴染(男)に告白劇をかます。
最後はあすなろ抱きからの囁きという高度な技を無意識にやった。
実は散々フラグ建ててたのに、全く意識されてないと思ってた鈍感さん。
幼馴染がイケメンなら、こいつは性格イケメン。よって、フラグを立てていたのは立てていたが、鈍感は対幼馴染みにのみ発揮されるらしく、予防線を張ったり、告白されても普通に断ってた。
・幼馴染(女)
主人公の右隣在住。
幼馴染だが、ギャルゲにありがちな欠陥設計の家に住んだりはしていない。
結構前から主人公に惚れてる。つまり両片思い。告白されてるのを見て慌ててるのも一緒。
主人公の無意識動作にあわあわしていたが、主人公は平然としていたため、意識されてないと思ってたやっぱり鈍感さん。
ツンデレっぽい性格で素直になれない人。鈍感さん以上にこっちが原因か?
なんだかんだ言って、似た者同士。
珍しくメールで呼び出されて若干期待してたら、ホモ告白劇を見せられて怒りとか失望とかその他もろもろで泣いて逃げた。
そのくせ追ってきてくれることを期待して足を止めてた。素直じゃない。
告白すら無意識行動で決める主人公に結局は落ちた。しかし、一度抱いたホモ疑惑は消えないんじゃないだろうか……
・幼馴染(男)
主人公家の左隣在住。
幼馴染だが、ギャルゲ(ry
主人公と幼馴染その1との恋愛模様を楽しんでる人。ぶっちゃけ、着いて行ったのもわざと。
書いてないが、中性的な容姿で主人公の数倍はイケメンでかわいい。
主人公の告白劇をやらかした故の犯行と分かっていながら乗った愉快犯。一応フォローはした。
実は両性愛者なので、主人公が本気ならOKだった。幸い本人は知らないが。笑