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スキから始まる君と僕の物語  作者: 豊本 高弘
第2章 その時、本当は…
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第2章 side Hitomi-1

 後ろの窓から見えるであろう祐二くんと綾さんがいた喫茶店がどんどん遠くなっていく、私は見ることもしないまま俯くしか出来なかった。


「トミー、are you ok?」


 車が赤信号で止まった時、後部座席に座る私に対して車内に取り付けられたミラー越しに流暢な英語で声をかけてきた。

 背中まで伸びる長い金髪とキラキラ光る碧い眼、黒のスーツと黒のタイトスカートを着飾った女の人。

 この人が私たちAYSのマネージャー、榎本(えのもと)ティナさん。

 日本とどこかの国のクォーターだというティナさんは愛着を込めて私へ“トミー”と呼ぶ、今のは私に大丈夫なのかを聞いてきたからとりあえず答える。


「大丈夫、だよ」


 それを聞いたティナさんは「OK」と一言だけ言って、信号の色が変わったのを見計らってじっくりアクセルを踏み込む。

 ふと窓の外を眺める、時間的に夕方から夜になろうという頃合いだ。

 それを見て私は今までの出来事を思い返す。私は小さい頃からアイドルになりたくて、夢を追い続けた。

 おもちゃのマイクを握りながらテレビに映るアイドルや歌手の見よう見まねばかりだったのが、中学になってクラスの子たちとカラオケへ行ってはいつも上手いと褒められた。

 そんな日々が続いていた中二の夏、いつも見ていたテレビ番組で今所属している事務所が主催するオーディションの告知を見てすぐさま応募した。

 いろんな審査があったな……歌唱やダンスだけじゃなくて、まさか演技も審査するなんて思わなくて始まる前は焦ったっけ。

 でも私は諦めなかった、このオーディションに合格したら夢だったアイドルになれるんだって強い思いがあったから。

 その甲斐もあって私は合格、だけど当初はソロの予定だったオーディションは結果発表時にプロデューサーの意向で私を含めた三人ユニットでのデビューが決まった。

 そんなことになるなんて思わなかったから、デビューする前はなんだかギクシャクしてたっけ。

 ここで補足すると合格した後、各自親元を離れて事務所が用意した寮で私たち三人一緒に暮らしている。

 その寮で三人は喧嘩とまで言わなくとも、仲が良いとは言えなかった。

 だって三人とも同い年なのに、お互い“さん”付けの敬語交じりだったし。

 そんな毎日が続いたクリスマスイブの夜、プロデューサーからデビューが来年の一月と決まり数日経っていた。

 寮に大人一人分の高さくらいのツリーが飾られているのを見て私はふと思いつく。


「パーティーしようよ!」


 私がこうした提案したのには理由がある。

 小学四年生の頃に私は、両親の仕事の関係でロンドンに住んでいたことがある。

 そこでクリスマスになると現地の友達とパーティーを開いて、ワイワイ楽しんだことを思い出したから。

 これを聞いて他のメンバー二人は呆然としてたけど、私はちらつく雪の中で寮の近所にあるハンバーガー屋へ走る。

 この時三人が持っているお金を出しあって買ったハンバーガーセット、サイズは小さかったけど楽しいパーティーには良いプラスだったなぁ。

 寮に戻ったところでハンバーガーを頬張りながらツリーを眺め、私たち三人は胸に誓う。


“――私たち、アイドルユニットとして一緒にがんばろうねっ!”


 この誓いの後、三人揃って強く唸った時に私がもう一つ提案した。

 いい加減私たち同い年なんだから、敬語や“さん”付けするのやめようって。

 いきなりだったからか他の二人は始め躊躇ってたけど、私が試しに名前にちゃん付けで呼ぶと少しずつ打ち解けていき、あだ名や呼び捨てで呼び始めた。

 これが今でも続いている。

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